【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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第四章 文化祭

2.

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「あんたが言うこと聞かないからでしょ。今朝だって、早く洗濯物を出しとけって言ったのに出さないから……」

 不毛な姉弟ゲンカをわって、僕はケーキの箱を差し出した。

「はいどうぞ」

 その効果はてきめんで、争っていた二人の視線がケーキの箱に注がれる。
 僕はにこやかに言葉を続けた。

「とりあえず今、これを食べよう。おばさん達の分は別に買って来たから」

 二人を黙らせるにはこれに限る。
 三人でケーキを食べた後、午後からサッカーの練習に出かける勇人の姿を見送って、僕達は部屋に引き上げたのだ。

「生徒会でも、もう文化祭の準備が始まってるんでしょ?」

 笑いをふくんだ笑香の問いに、僕は思わず渋面を作った。

「書類作りに苦労してるよ。それぞれの場所の配置図と、イベントごとのタイムスケジュールを確認してるところなんだ。申請して来た団体を一つ一つふりわけないと……。例年通りの場所が多いから、そのへんは楽なんだけど」
「うちのクラスは、出店で焼きそばとフランクフルトを出すんだけど」

 笑香が言った言葉の内容に、僕は部屋の天井を仰いだ。

「焼きそば、これで五軒目だぞ。違うものに変更できないか?」
「えっほんと? それなら先生に相談しなくちゃ」

 あわてた笑香に僕は笑った。

「変更の締め切りは木曜日だから、それまでにクラスで考えて結論を出してくれ。……それより来週中間だろ? 試験の範囲は大丈夫なのか?」

 底意地の悪い僕の質問に、笑香が胸を張って答えた。

「悪いけど、今回そんなに教えてもらう科目はないわよ。むしろリーダーと現文は史郎君にも勝てるかも」
「それは楽しみだな」

 僕はにっこりと微笑んだ。
 笑香がふっと眉をひそめた。

「史郎君、何か考えてるでしょう」
「何かって?」
「そういう顔をする時は、たいてい何か悪いことを思いついた時なのよ。前はわからなかったけど最近ちょっとわかって来た」

 僕は口元に今までと違う笑みを浮かべた。

「賭けをしないか?」

 笑香が黒い目を丸くする。

「賭け? 何の?」
「今言った、リーダーと現文のテストの点。もしどちらかでも君が勝ったら、何でも君の言うことを聞くよ。その代わり……」
「その代わり?」

 僕はもう一度、にっこりと笑って見せた。

「両方負けたら、僕の部屋に来ないか」

 笑香は両目をしばたたかせた。

「なんで? そんなこと。だって──」

 そこまで言って、はっと僕の真意に気づく。みるみるうちに真っ赤になると上目遣いに僕を見た。

「……そういうのって、良くないと思う」
「そうか。じゃあこの件はなしだ」

 あっさり僕は引き下がった。だが笑香はスカートをぎゅっとにぎりしめ、しばらくうつむくと口を開いた。

「何でもって、何でも私の言うことを聞いてくれるの?」
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