【完結】優等生の幼なじみは私をねらう異常者でした。

小波0073

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番外編1 柳沢笑香の完璧な恋人

61.懐古八景 21

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 笑香が史郎と協力しながら天ぷらの山を崩していると、ほどなく注文したそばが二人の前に運ばれた。小ぶりの桶に入ったそばの二山を見つめて絶句する。

「これって普通盛よね? サービスってことじゃ……」

 笑香がこそっと史郎に聞くと、史郎は肩をすくめて言った。

「違うな。周りを見てみろよ」

 笑香は周囲を見回した。二人の前にあるものと同じサイズに盛られたそばが、それぞれのテーブル上に見える。
 二人は同時に嘆息した。桜田に忠告されてはいたが、まさかこれほどとは思わなかった。たかがそばだと、確かに甘く見ていた気がする。
 追加のくるみだれが届き、笑香は小さなすり鉢に入った薄茶色のたれをのぞき込んだ。とろりとしたたれをつゆに落として、軽くかき混ぜてからそばを入れる。

「あ、おいしい……」

 鼻をくすぐるそばつゆの香りと、口いっぱいに広がった濃厚なくるみだれの風味に、笑香は思わず声を上げた。後味のくるみがまた香ばしく、甘い。
 だが重量級の天ぷらにこの甘いつけだれはきつかった。笑香からくるみだれの入った猪口を借り、一口つゆの味見をした史郎は露骨に眉をしかめて言った。

「この天ぷらに、このつゆは重いな。まったく桜田のやつ、余計なことを言いやがって」

 最後に友人をののしると、史郎はやけを起こしたように乱暴にそばをすすり上げた。
 何とかそばは平らげたものの、桜田にも注意されていた盛り合わせの中の特大のかき揚げに、二人はついにとどめを刺された。さすがの笑香もかき揚げには手が出ず、史郎が男の面目をかけて最後の残りを片付ける。

「今度ここに来る時は桜田も一緒に連れて来よう。僕達と同じ目にあわせてやる」

 知人二人の好意のおかげで自身が窮地に立った史郎が、固く決心したようにつぶやいた。
 最後に出された熱い蕎麦湯で何とか胃の中を落ち着かせ、やっとの思いで席を立つ。すると、レジにいた先ほどの女性が笑って史郎に首を振った。

「いいのいいの。支倉さんからお代はいらないって言われてるから」

 史郎は口元をへの字に曲げた。

「彼女の前で僕に恥をかかせないでください」

 彼が憮然として言った言葉に、女性がこらえきれなくなったように吹き出す。そして笑いながらも改めて会計してくれる。だがその会計には、二人を苦しめた天ぷらの値段は入っていないようだった。
 二人が藍色ののれんをくぐると、まるで待ちかねていたように、支倉が板張りの出入り口から丸い顔を突き出した。

「待って、史郎君。これ──」

 支倉が手に持っていたのは、小さな手提げ型の紙袋と可愛いピンクの封筒だった。
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