30 / 81
第二章 バレた後
3.
しおりを挟む
みのりはぐっと息を止め、そろそろと後ずさりした。
「なんでこんな所に」とか、「いつからこんな恥ずかしいことを」とか、色々疑問はつきないが、とにかく見つかったらヤバい。不審者のおかしな行動だけでなく、今の状況が全部ヤバい。昨日のお姉さま方の数とは比較にならないギャラリーの前で、校門の前で堂々と待っていた男子に声をかけられるなんて、もう「県立共栄女子高等学校」の生徒としては終わってる。
冷汗をだらだらかきながら、回れ右をして背を向ける。裏の小さな通行門から逃げおおせようと思ったみのりは、そっとロータリーへ足をもどした。
その時。
「あれ、みのり? まだ帰らなかったんだ」
帰り支度をすませたらしい、小春達空手部の面々がそこに並んで立っていた。いつもと違う人の多さに不思議そうな顔をしている。
「なんか顔が赤いけど……お腹、大丈夫なの?」
みのりがあわあわしている間に集団に前を邪魔されて、軽く逃げ道をふさがれる。小春がのんきな表情でみのりに近づいて来た。
「早く帰らなきゃダメじゃない。ほら、途中まで一緒にいこ?」
手首をつかまれ、再び門へと押し出されそうになる。みのりはあわてて小春を押しもどした。
「まっ、まって、ちょっと──」
小声でとがめたみのりの背後から、だいぶ聞きなれた声が響いた。
「一ノ瀬」
びくん、と肩を震わせて、恐る恐る声の主を見る。
塀から移動して来た雄基が真顔でそこに立っていた。制服姿の長身が、異様な迫力をかもし出している。
蛇ににらまれたカエルのようになったみのりを見下ろすと、雄基は改めて口を開いた。
「一ノ瀬、ちょっと──」
「人違いです」
みのりはぶんぶんかぶりを振って小春の腕を振り切った。突如現れた他校の男子に、小春がぽかんと口を開く。
「みのり、知り合い?」
「人違いだって‼」
みのりの叫びに耳も貸さず、指をさされた当人ががしっとみのりの腕をつかんだ。その力強さに頬が引きつる。
捕まえたみのりを凝視して、雄基は真剣な声で続けた。
「とにかく話を聞いてくれ。俺は……」
「ふッ、不審者ですううう‼」
魂の底から絶叫する。ひるんだ雄基の手を払いのけ、みのりはその場から逃げ出した。
「なんでこんな所に」とか、「いつからこんな恥ずかしいことを」とか、色々疑問はつきないが、とにかく見つかったらヤバい。不審者のおかしな行動だけでなく、今の状況が全部ヤバい。昨日のお姉さま方の数とは比較にならないギャラリーの前で、校門の前で堂々と待っていた男子に声をかけられるなんて、もう「県立共栄女子高等学校」の生徒としては終わってる。
冷汗をだらだらかきながら、回れ右をして背を向ける。裏の小さな通行門から逃げおおせようと思ったみのりは、そっとロータリーへ足をもどした。
その時。
「あれ、みのり? まだ帰らなかったんだ」
帰り支度をすませたらしい、小春達空手部の面々がそこに並んで立っていた。いつもと違う人の多さに不思議そうな顔をしている。
「なんか顔が赤いけど……お腹、大丈夫なの?」
みのりがあわあわしている間に集団に前を邪魔されて、軽く逃げ道をふさがれる。小春がのんきな表情でみのりに近づいて来た。
「早く帰らなきゃダメじゃない。ほら、途中まで一緒にいこ?」
手首をつかまれ、再び門へと押し出されそうになる。みのりはあわてて小春を押しもどした。
「まっ、まって、ちょっと──」
小声でとがめたみのりの背後から、だいぶ聞きなれた声が響いた。
「一ノ瀬」
びくん、と肩を震わせて、恐る恐る声の主を見る。
塀から移動して来た雄基が真顔でそこに立っていた。制服姿の長身が、異様な迫力をかもし出している。
蛇ににらまれたカエルのようになったみのりを見下ろすと、雄基は改めて口を開いた。
「一ノ瀬、ちょっと──」
「人違いです」
みのりはぶんぶんかぶりを振って小春の腕を振り切った。突如現れた他校の男子に、小春がぽかんと口を開く。
「みのり、知り合い?」
「人違いだって‼」
みのりの叫びに耳も貸さず、指をさされた当人ががしっとみのりの腕をつかんだ。その力強さに頬が引きつる。
捕まえたみのりを凝視して、雄基は真剣な声で続けた。
「とにかく話を聞いてくれ。俺は……」
「ふッ、不審者ですううう‼」
魂の底から絶叫する。ひるんだ雄基の手を払いのけ、みのりはその場から逃げ出した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
47
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる