【完結】インキュバスな彼

小波0073

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第二章 バレた後

5.

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 たしか先月、学校の周囲を金髪男がうろついていた時は、先生に速攻で通報されてパトロールまでされていた。それより大胆なふるまいなのにこれも緑陽の制服マジックか。だが、見かけだけは優等生でも中身は不審者兼強姦魔だ。そんな人物の家に行くなんて、これほどリスクの高い話が一体どこにあるだろう? 
 警戒心が丸出しの野良猫のようなみのりの様子に、雄基が苦い笑いをもらした。

「まあそうだよな。今さら信用しろって言っても、やっぱり無理な話だな。言い訳したって同じことだ」

 そこまで言って、吹っ切れたようにみのりの顔から目をそらす。

「ごめん。とにかく悪かった。それだけ言えれば十分だ。もうつきまとわない、安心してくれ。──忘れろって言ったって多分無理なんだろうけど──」

 再びみのりと視線を合わせ、苦しげな顔をして笑う。

「俺は忘れない。……忘れられない。悪いけどそれだけは許してくれ」

 くるりとみのりに背を向ける。立ち去ろうとした大きな背中にみのりは瞳を丸くした。

「ちょ、ちょっと待って! 勝手に一人で納得しないで、ほんとに訳わかんないから‼ いいから話を聞かせてよ。私がわかるようにくわしく!」

 今度はみのりがさわぎたてると、雄基が振り返ってまばたきした。

「一ノ瀬、お前……本当に」

 一瞬何かを我慢するようにその口元を引きしめる。だが、こらえきれずに吹き出した。

「本当にシリアスが似合わないな」
「そんなこと、どうでもいいから! とにかく話!」

 いつも通りのタフなみのりに、雄基が再びくすりと笑った。

「わかった。それじゃ、一緒に来てくれ」

 それだけ告げて、みのりが持っていたリュックへとその手を伸ばす。自然なしぐさで取り上げると、自分の荷物と一緒に抱えた。
 みのりはあわてて取りすがった。

「いいよ、そんな……重いし」

──くさいし。

「いいから。これくらいさせてくれ。──行こう」

 どこか軽くなったような足取りで、雄基がみのりの前に出る。その後に続こうとしてみのりはふっと首をひねった。

──あれ? もしかして、親切ごかしてリュックを人質の代わりに取られた?

 いやいやいや、まさか雄基に限って──とまた考えかけている自分に気づく。みのりは心底自身にあきれた。いい加減もう人が良すぎる。
 私ってば、やっぱりチョロい。
 つくづくそう考えながら、みのりは不審者兼強姦魔兼雄基の後について行った。
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