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少女の日常
女神様の住まう池
しおりを挟む「おや?今日は随分と大荷物だねぇ」
池の女神「游泉」
正確にはこの池で200年生きる亀だという。
のんびりとした性格でいつも眠たそう。
表情がなく何を考えているのか分からないが、そこが人間とは違う神秘的で独特の雰囲気を感じさせる。
翡翠色の短い髪を揺らしながら同じ色の瞳でこちらを見ている。
游泉曰く、池の石の上で遊んでいて足を滑らせて溺れかけたことがあったらしい。
その時に石がズレて游泉は隙間から抜け出し、私は自由になった游泉に助けられた。
今でも底まで透き通る綺麗な池と水辺の生き物のお世話係としてまたのんびり暮らしている。
敷地の中心部の大きな池の、そのまた中心の石の上でひらひらと手を振りながらこちらを見ている。
張り切って収穫しすぎてしまい、キャベツやふきのとう、菜の花などの春の野菜が溢れんばかり。
「游泉さんは甲羅干しですか?」
「日向ぼっこと言っておくれ。陽凪もこっちにおいで、あったかいよ」
「是非。あ、でもお野菜届けてからまた来ます」
「そうかい。囲炉裏の坊も一緒においで?待ってるから」
「こ、断る!!」
先程から私の後ろに隠れている暖吉がまたしても早く早くと急かしている。
なんでも体温調整のできない游泉は冬の間暖吉を抱えて離さなかったのだとか。
私もやったことがあるが、真っ赤になって怒っていた。
游泉は大人だから余計になのだろう。
「おやおや、即答とはね。………寂しいよ」
そう言って目を細め空を眺める游泉。
200年も暗い水底に捕われた孤独を味わった彼女の「寂しい」という一言には重みがある。
「………暖吉も、梳も、他のみんなも連れてきます。全員はその石に乗れないから、池に舟を浮かべて、そんでみんなでお花見しましょう!」
私にはきっと游泉の孤独を理解することはできない。
それでも私はいつか、游泉の心からの笑顔が見たい。
そのために出来ることは隣にいて、精一杯に笑うことだけだ。
「っ…ふふっ、楽しみにているよ」
游泉は、少しだけ笑ってくれた。
花がほころぶような、朗らかな笑顔で。
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