蛮族嫁婚姻譚その1:魔術師領主と押し付けられた嫁

ぎんげつ

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熱に冒される

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「やめ……っ、パルヴィ、やめるんだ」
「いや」

 少し力を入れて擦り続ければ、赤らんだ顔のイェルハルドが息を荒げる。
 脚だけを絡みつかせたまま、パルヴィはもう片手を夜着の合わせから中に滑り込ませた。肌の上を滑らせて、見つけた突起を指先で転がすように擽る。

「っ、く……パルヴィ」

 イェルハルドの眉が寄る。
 震える手がパルヴィの身体を押し退けようとするが、その指を咥えて舌を絡めると、すぐに引っ込められた。

「君は、まだ……」
「私はもう、子供も産める大人なんだ」

 パルヴィの身体の疼きも増している。
 けれど、まだ足りない。もっとイェルハルドが我を忘れてくれないと、形勢をひっくり返されてしまう。

 母と姉に教えられた閨での技を思い出しながら、パルヴィは必死にイェルハルドの身体に舌を這わせた。
 部屋の中では、ときおり漏れる押し殺した声と、浅く荒くなった息と、肌を舐めるぴちゃりという音が聞こえるだけだ。

 パルヴィの片手は、ぴくぴくと脈打つイェルハルドの雄根を擦り続ける。
 はあ、はあ、とイェルハルドが息を吐く。

「パルヴィ……やめろ」

 パルヴィはふるふると首を振るだけだ。
 肩に掛けたイェルハルドの手は、パルヴィを退けようとしているのか引き寄せようとしているのか曖昧なままだった。いかに媚薬を盛られているといっても、パルヴィの体格なら押し退けることは難しくないはずなのに、それができない。
 子供を相手に、何をしているのか。

 そう、自問しても、熱に冒された身体はうまく動かない。
 パルヴィの手に力が籠る。勃ち上がりカチカチに膨れ上がったそこへの刺激はどんどん耐え難いほどになっていく。
 このままではまずい。

「パ、パルヴィ……“離れろ”!」

 いきなり、パルヴィの身体が跳ねるように後退った。
 パルヴィはいっぱいに目を見開いて、呆然とする。離れるつもりなんてかけらも無かったのに、イェルハルドの言葉に抗えなかった。
 いや、身体が勝手に動いて、イェルハルドから離れたのだ。

「い、今の……」

 肩で大きく息を吐きながら、イェルハルドが起き上がる。

「“命令”の魔術だ」
「めい、れい?」
「人を無理やり従わせるような魔術は使いたくないんだ。だけどしかたない」
「まじゅ……」

 今のが魔術と言われて、パルヴィの身体が震えだす。他人の身体を勝手に動かしてしまうなんて、やっぱり魔術は恐ろしい。
 氏族の男に比べればずっと華奢な体格のいったいどこに力があるのかと、そう考えずにいられないほど頼りなく見えていたのに、これが魔術師なのか。

「パルヴィ」
「――ひっ」

 すっと伸ばされた手に竦み、パルヴィは目を瞑ってしまう。伸ばした手をすぐに引っ込めて、イェルハルドは苦笑を浮かべた。

「パルヴィ、もうしないよ。だから、君もぼくに無体を働くのはやめてくれ」

 はっと顔を上げる。
 そうだ、魔術に怯えている場合ではない。

「でも……でも」
「パルヴィ、頼むから」
「でも!」

 パルヴィはとっさに身を乗り出して、テーブルの上の酒瓶を取った。抱えた瓶からポン、と音を立てて栓を抜く。
 たちまち零れ出した甘い香りを吸い込んで、イェルハルドへと対峙する。
 止めようと伸ばしたイェルハルドの手を避けて、しっかりと瓶を掲げる。

「パルヴィ?」
「わ、私は、イェルハルドの妻にならなきゃいけないの」
「だから、それは今すぐではなく、もう少し後にと……」
「だめだよ! 今じゃなきゃだめなんだから!」

 パルヴィは瓶の口を咥えて、いっきに逆さにあおった。まだ半分以上残っていた蜜酒が、どくどくと口の中に注ぎ込まれる。

「パルヴィ、何を――」
「呪い師の蜜酒を飲み過ぎると、抱かれることしか考えられなくなると、母に言われてるの。鎮めるには、抱かれて子種を受ける必要があるとも」
「パルヴィ!?」
「嫌なら、私を妻にできないなら、このまま放り出せばいい。でも、そうしたらきっと、“谷”の者はひとり残らず死ぬまで戦うことになる」
「何を……」
「疑うなら、試せばいい。少し放っておけば、すぐにわかる」

 いきなり、灼けつくような熱が身体を支配する。
 パルヴィの顔がカッと赤く染まる。はあはあと息を切らしながら、じっとイェルハルドを見つめる。

「……あ」

 ずくんと疼いて、声が漏れた。
 疼きはどんどん増して、頭の中が赤く染まっていくようで、パルヴィは抱えたままの酒瓶を握り締める。

「イェルハルド、私は、あなたの妻になったんじゃないの? なら、抱いて」

 ふらふらと倒れ込むように、イェルハルドへとにじり寄る。

「イェルハルド、熱くて、むずむずするの」
「パルヴィ……けど、君は……」
「私はもう大人なの。子供も産める、大人だから」

 呆然とパルヴィを凝視するだけのイェルハルドに、のし掛かるようにしがみつく。手を離れた酒瓶が、床に転がり落ちる。

「身体が灼けてしまいそうなの。
 ――ねえ、イェルハルド、旦那様、助けて……私、このままじゃ狂っちゃう」

 ぐっと顔を引き寄せて、イェルハルドの唇を塞いだ。舌を捻り込んで少し乱暴に中を掻き回し、身体を擦り寄せる。
 腰を確かめれば、まだ、そこは熱を持ったままで……。

「旦那様、お願い。私、おかしくなっちゃう。助けて」

 呼吸が大きく荒くなり、ごくり、とイェルハルドの喉が動く。
 イェルハルドの腕が、いつの間にかパルヴィを抱き締めていた。
 身体に触れられて、パルヴィの背をぞくぞくと何かが駆け上がる。イェルハルドの屹立に腰を押し当てて、とろりと目を潤ませる。
 くちゅりと小さく水音が立つ。

 少し乱暴に夜着の合わせが解かれ、パルヴィの口角がわずかに上がった。

 剣だことは無縁な、けれど骨ばった手のひらがパルヴィの身体を這い回り、ほんのりと膨らんだ胸をやんわりと擦る。
 どこに触れられてもぞくぞくとする快感に頭の芯まで侵されて、あ、あ、と短く喘ぐことしかできない。身体の奥で燃え盛る熱はいっこうに収まる気配を見せず、パルヴィはただただ翻弄されるばかりだ。
 唇が離れて、ぷは、と息を吐く。
 旦那様、旦那様、と悶えるパルヴィの身体の上を、イェルハルドの舌が辿っていく。舌と手に擽られ、びくりびくりと身体が何度も跳ね上がる。

「ん、あっ……旦那、さまっ……!」

 ――快感も、過ぎれば苦痛になるのかもしれないと、頭のどこかで考える。

「あ、はぁっ」

 指先でほんの少し触れられただけで、身体が大きく引き攣った。
 瞼が裏返ったような、頭の中で何かが爆発したような、そんな強い感覚に一瞬意識が飛ばされて、呆然としてしまう。
 けれど、その余韻を感じる余裕もなく、ぬるりと入り込んだ指に擽られて、またびくびくと身体が震える。
 小さかった水音は、いつのまにかはっきりと大きくなっていた。
 ぐちゅぐちゅと、ぬかるんだ泥のような音を立てて、イェルハルドの指がパルヴィの襞をかき混ぜる。
 ピリッとした痛みを感じないでもない。けれど蜜酒のおかげか、その痛みも一瞬で消えて、すぐに快楽に取って代わられてしまう。

「あ、あ、旦那様ぁ……っ」

 口では大人だと言っていても、身体は完全に成長しきったとはいえず、パルヴィのそこもまだまだ狭く固い。
 なのに、もっともっとと貪欲にねだるようにひくついて、イェルハルドの指をしっかり咥えたまま離そうとしない。イェルハルドの指が届く場所より、もっとずっと奥深くが足りないと訴えている。

「旦那、様……もっと……早く。熱くて、苦しいの、鎮めて」
「あ……パルヴィ」

 どこか熱に浮かされた表情で、イェルハルドはパルヴィの膝を割る。乱暴に自分の夜着を脱ぎ捨てて、いきり勃つ自身をあてがい、ゆっくりと沈めていく。

 本音を言えば、胎内を押し広げられる異物感はとても苦しかった。けれど、それでも満たされた充足感と与えられる快楽のほうが大きかった。
 ぴりと粘膜が裂ける感覚はあるのに、痛みはまったく感じない。気持ちよさのほうがずっと優っている。
 ああ、だから母は蜜酒を飲めと言ったのか。

 どうでもいいことを考えて、それから、これでようやく目的を達成したのだと、パルヴィは満足げに微笑んだ。

 これで、イェルハルドの妻は自分だ。
 なら、氏族の未来も安泰だ。
 子供を産めばもっと安泰だ。

 頭のすぐ横で、イェルハルドの荒い吐息と漏れる声が聞こえる。激しく出入りするぐちゅぐちゅという水音と、パンパンと肉の当たる音、それから自分の喉から上がり続ける高い声も、部屋を満たしている。
 抱き締められた苦しさと、イェルハルドでいっぱいになった場所と、息のかかる耳元と、そのすべてが気持ちいい。
 汗で滑る熱い身体にしがみついて、パルヴィは高く啼きながら爪を立てる。

 ぐちゅぐちゅ、ぐちゅぐちゅ。
 掻き混ぜられて抉られて、後から後から途切れない快楽が送られてくる。首に歯を立てたり、張り詰めた胸の尖りを強く擦られたり……いつもなら何とも思わない場所からも、どんどん快楽が昇ってくる。
 気持ちよすぎて、うまく息ができない。

 目を上げると、イェルハルドが自分を覗き込んでいた。夏の、凪いだ穏やかな海の色だった目が、 嵐の雲の色のように見えた。
 突き出したパルヴィの舌を、イェルハルドの舌が絡め取る。胎内を掻き混ぜるように口内を掻き回されて、パルヴィの顎を涎が伝い落ちる。

「う、あっ、旦那様、旦那様……ああっ」
「く、っ」

 どん、と叩きつけるように穿たれて、パルヴィの喉が反る。はくはくと喘いで、びくんと痙攣する。頭の中が真っ白に染まって、爪先がピンと伸びてしまう。
 奥に迸る熱とイェルハルドを感じて身体を引き寄せると、倒れ込むように突っ伏したイェルハルドの重みが増した。

「あ、あ……」

 ぼんやりと霞む目に、イェルハルドの肩が映る。口付けて舌でなぞると、しおからい汗の味がした。
 どくどくと強く速い鼓動を感じて、パルヴィは目を閉じる。

 身体を冒す熱はまだ完全に鎮まってはいなかったけれど、これでちゃんと夫婦になったという満足感でいっぱいだった。

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