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1.おいしい餌とオカン吸血鬼
4.ひねもすのたり、のたりかな?
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ミカの朝は早い。
律子が起きる少し前にそっと起き出して、朝食と弁当を用意するためだ。
ぐっすりと熟睡したままの律子をちらりと確認した後、ミカは音を立てないように身支度を整えて台所に立つ。下拵えは昨夜のうちに済ませてあるから、さほど時間がかかるわけでもない。手慣れたようすで次々と弁当のおかずを詰めていく。
弁当が終われば、次は朝食の用意だ。
夜が遅いためか、朝は胃もたれしてしまうという律子のために、朝食は軽く手早く食べられるものだけにしている。その代わり、弁当の内容はしっかりだ。
「ペトラさんおはようございます」
ちらりと姿を表したペトラ嬢に朝の挨拶をすると、彼女は挨拶代わりに前脚をあげて返し、すぐに棚の裏へと引っ込んでしまった。
ペトラ嬢は意外に気配りのクモでもある。むやみに律子が怯えないようにと、あまり姿を現さないことに決めているらしい。
「律子さんおはようございます」
「んー、おはようー」
もぞもぞと目を半分閉じたまま起き出してきた律子に、ミカが声をかけた。
まだ寝ぼけているのか、扉の端や棚の角に身体をぶつけては「いてて」とさすり、のそのそと洗面台に向かい……そのうちざばざばとひとしきり水音がして、「あー、さっぱりした! 目が覚めた!」と身支度を整えた姿の律子が戻る。
その一連の習慣に、ミカはいつもついつい笑ってしまううのだ。
「今日も賑やかですね」
「テンション上げなきゃ会社行きたくなくなっちゃうからねー」
笑うミカに、律子はことさらに気合を入れて、拳を握る。
「そういうものなんですか?」
「そそ。仕事したくないでござるって気持ちを捩じ伏せて、自分を振るいたたせて仕事に行くんだよ。そうでもなきゃ朝ラッシュとか超えられないしね」
鼻息荒く述べる律子は、けれど、「宝くじ当たったらいいのになあ」ともこぼす。
「そしたら私、光の速さで会社辞めてふらふらするんだ。世界一周とか。まあ、宝くじ買ってないんだけどさ」
「買わないんですか?」
「だって当たらないし、だったら宝くじ一枚買うよりコーヒー飲んだほうがいいなーって思っちゃって」
「律子さんは現実的ですね」
「ふふーん。地に足をつけて生活しろって、爺ちゃんがうるさく言ってたしね」
他愛ない話をしながら、今日も律子は朝食をあっという間に平らげた。
食べる速度は、たぶん一般の女子に比べたら早いほうだろう。それもこれも、忙しすぎる仕事のせいなのだ。
「それじゃ、いってきまーす! ミカちゃんあとよろしくねー」
いつものように玄関で弁当を受け取ると、ぶんぶん手を振りながら、律子は足音高く駅へと向かっていった。
「……どうしていつもあんなに元気なんでしょうね」
やれやれと律子を見送って、ミカは扉を閉める。
午前中のうちにやらねばならないことは多い。
洗濯機を回しながら朝の食器を片付け、布団を干し、掃除機を掛けて洗濯物を干して……これであっという間に午前は終わり、昼となる。
律子が提供してくれる“栄養”のおかげで、今なら早々に倒れることはない。
しかしそれでも万が一ということはあるので、昼間の日よけ対策はバッチリだ。布団と乾いた洗濯物を中に入れるのも、最短時間で手早く終わらせてしまう。
もう少し遅い時間でとも考えたが、このタイミングを逃すとせっかく乾いた布団に湿気が戻り、干した手間が無駄になる。
家事とは奥深いものなのだ。
そこまで終えて、ようやく昼寝タイムへと突入する。
もちろん起きていることはできるが、昼間は休んだほうが消耗も少ない。
「……ここ何世紀かで、いちばんのんびりできているかもしれませんね」
折り畳んだ座布団を枕にごろりと横になるのは、最近気に入っている昼寝スタイルだった。こうして横になると、裸足で家に上がる畳という文化はなかなかいいものじゃないかと、ミカは思う。
うとうととしているところにピンポーンと玄関チャイムが鳴った。
この時間帯はほぼほぼ訪問販売と新聞屋と宅配便だが、たまに回覧板が回ってくることもあるため、放置するわけにはいかない。
もっとも、前者ふたつに関しては、自分が日本語以外の言語で話し出すとすぐにいなくなるので問題はないのだが。
ともかく、何か相手がひとこと名乗ってから出るのでも構うまいとようすを伺っていると、今日の訪問者はそのどれとも違っていた。
「ミカ? ここに居るって聞いたんだけどー」
のんびりと間延びした声に呼ばれて、ミカはがばっと起き上がった。
荒々しい足音を立てて玄関へ向かい、扉を思い切り開ける。
「ちょ、危ないなあ。ドアで鼻打つとこだったじゃん」
「なぜ、あなたがここにいるんですか」
「臭いがしたから?」
長身のミカよりもさらに体格のいい、黒っぽい髪に琥珀色の目の、やはりどう見ても日本人ではない男が頭を掻きながら立っていた。
「相変わらず鼻は利くんですね。それで何の用ですか」
「お金貸して?」
律子ならここで「テヘペロ」まで擬音をつけるだろうと思われるような笑顔で首を傾げる男など、本気で可愛くない。
ペトラのほうが遥かに可愛いし有益だ。
「また? 返したことがないのに貸してくれとは、いかがかなものでしょう」
「いやあ、返す気はあるんだけど、飯代がかかるんだよねえ。肉って高くてさあ」
眉間にくっきり三本線を作ったミカに、男はあははと笑った。ミカのようすなど、まったく気にしていないようだった。
「単に食べ過ぎなだけですよ。ダイエットでもしたらいかがですか」
「ええ? この贅肉ひとつない身体見てよ。筋肉維持するのにタンパク質って重要なんだよ。俺でも知ってるよ」
慌てて腹を見せようとする男を、ミカは嫌そうに睨めつける。
「犬コロの腹筋などわざわざ見せなくて結構です。その自慢の身体を活かして、今すぐ日雇い労働にでも行きなさい。得た収入で解凍もの鶏胸肉特売品でも買って食べればいいんですよ。業務用スーパーなら安く手に入りますよ」
「同郷のよしみなのに冷たい。それに解凍肉ってなんか臭うんだよ」
「贅沢を言える身分ですか。そういうことは借金を返してから言いなさい」
冷たい視線でじっとり見つめるミカに、男はじわりと冷や汗を垂らす。心なしか、かすかに腹の鳴る音も聞こえた気がする。
「ミカは貴族だろ? ノブレスオブリージュとかあるじゃねえか。下々の民への施しはどうしたよ。俺、下々の民じゃねえ?」
「あなたは私の領民ではないし、そもそも身分制度などとうの昔に終了しています。
それとも私と血の盟約を結び、誠心誠意死ぬまで私に仕えますか? そこまでするのでしたらしかたありません、あなたの生活の面倒くらいは見てあげましょう」
にたあと笑うミカに、男は慌てて「いやそれは無しで!」と首を振る。
「では、用はお済みですね?」
「え。いやでも、俺腹減っててさ」
「こちらとしては、キャンキャンうるさい駄犬に用はありません」
ミカはいい笑顔を浮かべ、おもむろにぐいっと男の襟首を掴みあげた。
そのまま外の道路へ向かってぽいと投げ捨てると、男の抗議の声を無視してぴしゃりと扉を閉めてしまう。
それから流れるようにしっかりと戸締りを済ませたミカは、再び昼寝の続きに戻ったのだった。
* * *
「たっだいまー!」
「おかえりなさい。今日は早かったんで……その、後ろのものは」
がちゃがちゃと鍵を開ける音がして扉が開いて律子が一歩中に入る。ミカがにこやかに出迎えて、しかしすぐに眉を顰めた。
「そこでミカちゃんのお友達ってひとに会ったから、連れて来ちゃった。お腹が空いてるっていうから、何か食べさせてあげられないかなあ。
カレヴィさんどうぞー」
「お邪魔します」
律子の後に続いて上がりこんだのは、昼間の男だった。
にやにやと笑いながら、ミカに向かって、よっ、と片手を上げる。
「……律子さん、このアパートはペット禁止のはずですが」
「え?」
ミカがひんやりと冷たい声で呟き、律子がぽかんと顔を上げた。
なぜ、ここでいきなりペット禁止が出てくるのか。
「野良犬を、飼えないことがわかっているのにほいほい拾ってくるのは感心できません。もとの場所に返していらっしゃい」
「え? 犬?」
引き攣った顔で眉間に三本線を刻むミカに玄関を指差され、律子は混乱する。
「え、え、ミカちゃん、どこに犬がいるの?」
「律子さん。自分が飼っているわけでもない動物にむやみやたらと餌を与えてはいけないと、習いませんでしたか?」
律子は混乱したままだ。だが、もしかして、動物とか犬とかはカレヴィのことを指して言っているのか。
「ミカ、ミカ、俺の扱いひどくねえか?」
「ああ、犬が何か吠えてますね。近所迷惑になってしまいますし、しかたがありません。私が自ら捨ててくることにしましょう」
ずんずんとカレヴィに近づくミカに、慌てて律子が取り縋る。
「待って、待ってミカちゃん。この人犬じゃないし、ほら、なんて言うか、お腹空いてるの放り出してのたれ死んじゃったりしたら後味が悪いっていうか、一食くらいなら、奢ってもいいかなって、ミカちゃん待ってー!」
「律子さん、この体力バカが一日や二日食事を抜いたところで、滅びるようなことなどありませんし、捨てても問題ありません。
それとも万全を期して保健所へ連れて行くべきでしょうか」
「とりあえずミカちゃん顔怖いよ落ち着いて!」
結局、律子の必死の取りなしによって、カレヴィはどうにか食事にありつくことはできた。食べ終わった途端、「野犬に屋根など不要です」と、やはり玄関からぽいっと捨てられたのだが。
律子はといえば、「私の友人だというものが現れても、ほいほい釣られてはいけません。もっと警戒心を持ってください」と、正座でお説教コースとなったのだった。
ちなみにペトラ嬢は、その後しばらく律子の愚痴聞き役となっていたようである。
律子が起きる少し前にそっと起き出して、朝食と弁当を用意するためだ。
ぐっすりと熟睡したままの律子をちらりと確認した後、ミカは音を立てないように身支度を整えて台所に立つ。下拵えは昨夜のうちに済ませてあるから、さほど時間がかかるわけでもない。手慣れたようすで次々と弁当のおかずを詰めていく。
弁当が終われば、次は朝食の用意だ。
夜が遅いためか、朝は胃もたれしてしまうという律子のために、朝食は軽く手早く食べられるものだけにしている。その代わり、弁当の内容はしっかりだ。
「ペトラさんおはようございます」
ちらりと姿を表したペトラ嬢に朝の挨拶をすると、彼女は挨拶代わりに前脚をあげて返し、すぐに棚の裏へと引っ込んでしまった。
ペトラ嬢は意外に気配りのクモでもある。むやみに律子が怯えないようにと、あまり姿を現さないことに決めているらしい。
「律子さんおはようございます」
「んー、おはようー」
もぞもぞと目を半分閉じたまま起き出してきた律子に、ミカが声をかけた。
まだ寝ぼけているのか、扉の端や棚の角に身体をぶつけては「いてて」とさすり、のそのそと洗面台に向かい……そのうちざばざばとひとしきり水音がして、「あー、さっぱりした! 目が覚めた!」と身支度を整えた姿の律子が戻る。
その一連の習慣に、ミカはいつもついつい笑ってしまううのだ。
「今日も賑やかですね」
「テンション上げなきゃ会社行きたくなくなっちゃうからねー」
笑うミカに、律子はことさらに気合を入れて、拳を握る。
「そういうものなんですか?」
「そそ。仕事したくないでござるって気持ちを捩じ伏せて、自分を振るいたたせて仕事に行くんだよ。そうでもなきゃ朝ラッシュとか超えられないしね」
鼻息荒く述べる律子は、けれど、「宝くじ当たったらいいのになあ」ともこぼす。
「そしたら私、光の速さで会社辞めてふらふらするんだ。世界一周とか。まあ、宝くじ買ってないんだけどさ」
「買わないんですか?」
「だって当たらないし、だったら宝くじ一枚買うよりコーヒー飲んだほうがいいなーって思っちゃって」
「律子さんは現実的ですね」
「ふふーん。地に足をつけて生活しろって、爺ちゃんがうるさく言ってたしね」
他愛ない話をしながら、今日も律子は朝食をあっという間に平らげた。
食べる速度は、たぶん一般の女子に比べたら早いほうだろう。それもこれも、忙しすぎる仕事のせいなのだ。
「それじゃ、いってきまーす! ミカちゃんあとよろしくねー」
いつものように玄関で弁当を受け取ると、ぶんぶん手を振りながら、律子は足音高く駅へと向かっていった。
「……どうしていつもあんなに元気なんでしょうね」
やれやれと律子を見送って、ミカは扉を閉める。
午前中のうちにやらねばならないことは多い。
洗濯機を回しながら朝の食器を片付け、布団を干し、掃除機を掛けて洗濯物を干して……これであっという間に午前は終わり、昼となる。
律子が提供してくれる“栄養”のおかげで、今なら早々に倒れることはない。
しかしそれでも万が一ということはあるので、昼間の日よけ対策はバッチリだ。布団と乾いた洗濯物を中に入れるのも、最短時間で手早く終わらせてしまう。
もう少し遅い時間でとも考えたが、このタイミングを逃すとせっかく乾いた布団に湿気が戻り、干した手間が無駄になる。
家事とは奥深いものなのだ。
そこまで終えて、ようやく昼寝タイムへと突入する。
もちろん起きていることはできるが、昼間は休んだほうが消耗も少ない。
「……ここ何世紀かで、いちばんのんびりできているかもしれませんね」
折り畳んだ座布団を枕にごろりと横になるのは、最近気に入っている昼寝スタイルだった。こうして横になると、裸足で家に上がる畳という文化はなかなかいいものじゃないかと、ミカは思う。
うとうととしているところにピンポーンと玄関チャイムが鳴った。
この時間帯はほぼほぼ訪問販売と新聞屋と宅配便だが、たまに回覧板が回ってくることもあるため、放置するわけにはいかない。
もっとも、前者ふたつに関しては、自分が日本語以外の言語で話し出すとすぐにいなくなるので問題はないのだが。
ともかく、何か相手がひとこと名乗ってから出るのでも構うまいとようすを伺っていると、今日の訪問者はそのどれとも違っていた。
「ミカ? ここに居るって聞いたんだけどー」
のんびりと間延びした声に呼ばれて、ミカはがばっと起き上がった。
荒々しい足音を立てて玄関へ向かい、扉を思い切り開ける。
「ちょ、危ないなあ。ドアで鼻打つとこだったじゃん」
「なぜ、あなたがここにいるんですか」
「臭いがしたから?」
長身のミカよりもさらに体格のいい、黒っぽい髪に琥珀色の目の、やはりどう見ても日本人ではない男が頭を掻きながら立っていた。
「相変わらず鼻は利くんですね。それで何の用ですか」
「お金貸して?」
律子ならここで「テヘペロ」まで擬音をつけるだろうと思われるような笑顔で首を傾げる男など、本気で可愛くない。
ペトラのほうが遥かに可愛いし有益だ。
「また? 返したことがないのに貸してくれとは、いかがかなものでしょう」
「いやあ、返す気はあるんだけど、飯代がかかるんだよねえ。肉って高くてさあ」
眉間にくっきり三本線を作ったミカに、男はあははと笑った。ミカのようすなど、まったく気にしていないようだった。
「単に食べ過ぎなだけですよ。ダイエットでもしたらいかがですか」
「ええ? この贅肉ひとつない身体見てよ。筋肉維持するのにタンパク質って重要なんだよ。俺でも知ってるよ」
慌てて腹を見せようとする男を、ミカは嫌そうに睨めつける。
「犬コロの腹筋などわざわざ見せなくて結構です。その自慢の身体を活かして、今すぐ日雇い労働にでも行きなさい。得た収入で解凍もの鶏胸肉特売品でも買って食べればいいんですよ。業務用スーパーなら安く手に入りますよ」
「同郷のよしみなのに冷たい。それに解凍肉ってなんか臭うんだよ」
「贅沢を言える身分ですか。そういうことは借金を返してから言いなさい」
冷たい視線でじっとり見つめるミカに、男はじわりと冷や汗を垂らす。心なしか、かすかに腹の鳴る音も聞こえた気がする。
「ミカは貴族だろ? ノブレスオブリージュとかあるじゃねえか。下々の民への施しはどうしたよ。俺、下々の民じゃねえ?」
「あなたは私の領民ではないし、そもそも身分制度などとうの昔に終了しています。
それとも私と血の盟約を結び、誠心誠意死ぬまで私に仕えますか? そこまでするのでしたらしかたありません、あなたの生活の面倒くらいは見てあげましょう」
にたあと笑うミカに、男は慌てて「いやそれは無しで!」と首を振る。
「では、用はお済みですね?」
「え。いやでも、俺腹減っててさ」
「こちらとしては、キャンキャンうるさい駄犬に用はありません」
ミカはいい笑顔を浮かべ、おもむろにぐいっと男の襟首を掴みあげた。
そのまま外の道路へ向かってぽいと投げ捨てると、男の抗議の声を無視してぴしゃりと扉を閉めてしまう。
それから流れるようにしっかりと戸締りを済ませたミカは、再び昼寝の続きに戻ったのだった。
* * *
「たっだいまー!」
「おかえりなさい。今日は早かったんで……その、後ろのものは」
がちゃがちゃと鍵を開ける音がして扉が開いて律子が一歩中に入る。ミカがにこやかに出迎えて、しかしすぐに眉を顰めた。
「そこでミカちゃんのお友達ってひとに会ったから、連れて来ちゃった。お腹が空いてるっていうから、何か食べさせてあげられないかなあ。
カレヴィさんどうぞー」
「お邪魔します」
律子の後に続いて上がりこんだのは、昼間の男だった。
にやにやと笑いながら、ミカに向かって、よっ、と片手を上げる。
「……律子さん、このアパートはペット禁止のはずですが」
「え?」
ミカがひんやりと冷たい声で呟き、律子がぽかんと顔を上げた。
なぜ、ここでいきなりペット禁止が出てくるのか。
「野良犬を、飼えないことがわかっているのにほいほい拾ってくるのは感心できません。もとの場所に返していらっしゃい」
「え? 犬?」
引き攣った顔で眉間に三本線を刻むミカに玄関を指差され、律子は混乱する。
「え、え、ミカちゃん、どこに犬がいるの?」
「律子さん。自分が飼っているわけでもない動物にむやみやたらと餌を与えてはいけないと、習いませんでしたか?」
律子は混乱したままだ。だが、もしかして、動物とか犬とかはカレヴィのことを指して言っているのか。
「ミカ、ミカ、俺の扱いひどくねえか?」
「ああ、犬が何か吠えてますね。近所迷惑になってしまいますし、しかたがありません。私が自ら捨ててくることにしましょう」
ずんずんとカレヴィに近づくミカに、慌てて律子が取り縋る。
「待って、待ってミカちゃん。この人犬じゃないし、ほら、なんて言うか、お腹空いてるの放り出してのたれ死んじゃったりしたら後味が悪いっていうか、一食くらいなら、奢ってもいいかなって、ミカちゃん待ってー!」
「律子さん、この体力バカが一日や二日食事を抜いたところで、滅びるようなことなどありませんし、捨てても問題ありません。
それとも万全を期して保健所へ連れて行くべきでしょうか」
「とりあえずミカちゃん顔怖いよ落ち着いて!」
結局、律子の必死の取りなしによって、カレヴィはどうにか食事にありつくことはできた。食べ終わった途端、「野犬に屋根など不要です」と、やはり玄関からぽいっと捨てられたのだが。
律子はといえば、「私の友人だというものが現れても、ほいほい釣られてはいけません。もっと警戒心を持ってください」と、正座でお説教コースとなったのだった。
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