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そのご
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厨房の、今日の分の仕込みを手伝い終えて、ようやく自由な時間になった。
ここに来てそろそろふた月だ。ここでの暮らしにもすっかり慣れて、わたしにもだいぶ余裕ができていた。
この神殿の司祭たちの朝は遅いし、朝食をまともに食べようという者も少ない。理由は言わずもがなだ。
朝食はごくごく軽く、せいぜいパンとチーズと果物を用意しておけば事足りてしまう。夜も、部屋に持ち込んで食べる者が多いから、サンドイッチのような軽く摘めるものを用意すれば十分だ。わざわざ述べるまでもない理由で。
その代わりに昼はしっかりと食べる者が多い。
そんな生活サイクルのおかげで、厨房の下働きも、昼食までの仕込みと昼食後の片付けが終わってしまえば割合に暇となる。
暇になった時間は、エセキエルや司祭にこの町のことや女神の話を聞いたり、わたしの故郷のことを話したり、読み書きを教わったりしながら過ごしていた。
「ストー」
呼ばれて振り返ると、マチェイ司祭だった。少し浅黒い肌の、たぶん三十そこそこ……もしかしたらもっと若い男性だ。
「いつもの話のことだけど、どう?」
「いつもの……」
少し前から、夜を共にしないかと誘われることが増えていた。
けれど、相変わらず、わたしが夜を過ごす相手といえばエセキエルだけで……そのうちにと、とても日本人らしく答えていたことを思い出す。彼が、軽い好意を持っているから、わたしに声を掛けたのだと言っていたことも。
マチェイ司祭は人好きのする笑顔を浮かべてわたしの返答を待っていた。
どうしようかと考えて、ふと、手を伸ばした。彼の頬に触れてみても、嫌な感じはまったくない。
「今夜、部屋に行ってもいいですか?」
軽く首を傾げていたマチェイ司祭は、「待っているよ」と破顔した。
「マチェイ司祭と今夜約束をしたそうだね」
ぼんやりと中庭を眺めていたら、いつの間にかエセキエルが横にいた。わたしはちらりと視線を動かして彼の姿を確認し、こくりと頷く。
「ひとりしか知らないのって勿体無いんじゃないかと思ったの」
「勿体無い?」
もう一度頷いて、横に腰を下ろしたエセキエルに、視線だけを向ける。
「この神殿、たくさんイケメンがいるのにエセキエルしか知らないなって思ったら、なんか勿体無いなって」
「そういう理由で申し出を受けるなんて、君らしいね」
「そう? わたしって意外にビッチだったのかなって考えてたんだけど」
「“ビッチ”? それもトウキョの言葉かな?」
「うん……ええと、売女だったかな? 誘われれば相手が誰でも構わずにセックスをする女ってことだけど」
エセキエルが困ったような顔で笑う。
「ストーは相手が誰でもいいというわけでもないだろう。そうやって自分を蔑むのはあまり感心できないな。君は、単にマチェイ司祭の何かを良いと感じたから、誘いを受けたのではないか?」
「ん……」
少し考えてみる。確かに、触っても嫌な感じはしなかったから……彼の笑う顔に好感を持ったから、寝てみようという気になったのだ。
「たぶん、そう、かな?」
「なら、マチェイ司祭をよく知ってくるといい」
「うん」
そうか、女神の言う“愛を交わす”は、相手を知る手段ということかと考えれば、いろいろと納得がいった。
* * *
夜、ランプひとつを手に、暗い廊下を歩く。マチェイ司祭の部屋はあらかじめ確認してあったから、迷うことはない。
程なく見つけた部屋は、扉の取っ手に目印代わりの紐が結びつけてあった。
うっかり部屋を間違えないよう、神殿でよく使われている目印なんだと、昼間に聞いていたものだ。
コツコツとノックをすると、すぐに扉が開いた。わたしを確認したマチェイ司祭に、「どうぞ」と招き入れられる。
「まずは、お茶でもどうかな?」
勧められた椅子に座って、わたしは頷く。すぐにベッドへ行くのかと思いきや、意外に気を遣われていたようだ。
マチェイ司祭はそんなわたしの心中を察してか、「さすがに、はじめての相手では緊張するものでしょう?」と笑った。
カップを並べてお茶を注ぎ、マチェイ司祭はわたしの隣に腰を下ろした。ほんのりとさわやかな花の香りのお茶を口に含み、ゆっくりと飲み込む。
「少し、話をしましょうか」
「はい……でも、何を話したらいいか」
「何でもいいんですよ」
何でもいいというのが一番困る。
そう、顔に出てしまったのか、マチェイ司祭はぷっと小さく噴き出した。
「そう言われても、なかなか出てこないものだという顔ですね」
「ええ、まあ……」
「では……そうですね、何か私に訊きたいことはありますか?」
「訊きたいことですか?」
「お互いを知れば、自然と緊張も解けるものですよ」
マチェイ司祭が伺うようにじっとわたしを見る。
もうひと口、ふた口とお茶を飲み込みながら、訊きたいことをぐるぐる考えて、結局、ひとつしか浮かばなかった。
ほ、と息を吐いて、カップを置く。
「あの……どうしてわたしを誘ったんですか?」
「気になっていましたか?」
訊き返されて、わたしは頷く。
「そうですね……どう言ったらいいのか……」
マチェイ司祭の手が頬に触れた。
するり、するりと軽く撫でて、笑むように目を細める。
「どことなくアンバランスに見えて、興味を引かれたといいますか」
「アンバランス?」
いったい何のことかさっぱりわからず、わたしは首を捻る。
「少年めいた中性さを持ち、成人と言っていい歳なのにまだまだ子供のようで、けれど、やはり成熟した女性の美しさもあって……」
「そう、ですか?」
褒められているのかどうなのか、よくわからない。けれど、笑みをたたえたマチェイ司祭の目は、蕩け始めている。
「ええ」
不意に、ちゅ、と音を立てて鼻の頭を啄ばまれた。
ちゅ、ちゅ、と立て続けに何度も顔にキスされて、わたしは吐息を漏らす。そっと回された腕で身体が引き寄せられ、唇が塞がれる。
その、どれもが嫌じゃないことに安心して、身体の力を抜く。
マチェイ司祭が小さく笑った。わたしが身を委ねたことを察して、マチェイ司祭のキスがどんどん深くなっていく。
「ん……」
舌を絡め口内を探りながら、マチェイ司祭はわたしを抱き上げた。
エセキエルに比べれば小柄だし細身だけど、それでもわたしひとり運べるくらいには鍛えているということか。
横抱きでキスを続けながら、マチェイ司祭はわたしをベッドに運ぶ。
「ストー」
「ん……っふ、う、んっ」
横たえられてもまだキスは続く。甘く柔らかく中を探りつつ擽られる舌の感触は、エセキエルとは全然違う。
腰帯を解かれて前を開かれ、掌が滑っていった。剣だことは無縁な柔らかい掌の感触はどこか心地よくて、ぴくり、ぴくりと小さく身体が跳ねてしまう。
「今日は、感じることだけに集中してください」
囁かれて瞬きをするわたしに、マチェイ司祭の、南の海のように深く明るい青い目が、にこりと細くなった。
あくまでも優しくふわふわと探る指先は、どこかもどかしい。もっとという焦燥ばかりが募って、どんどん欲しくて堪らなくなってしまう。
「ああ、ずいぶんとあふれていますね」
いつのまにか降りていた顔が、わたしの脚の間にあった。吐息がひやりと吹き掛かり、わたしの腰をぴくりと揺らす。
「パクパクと動いて、まるで口のようだ」
見られてる羞恥に顔が熱くなる。なのに、お腹の奥がますます疼いて、早く欲しいとわたしを急かす。
「あ……、マチェイ、司祭」
「マチェイと、呼んでください」
「え、んっ……」
「マチェイですよ」
「マ、マチェイ……あっ」
マチェイと呼んだ途端、秘裂をべろりと舐められた。けれど、やっぱりそれだけじゃ足りなくて、わたしは身を捩らせる。
舌先で肉芽を擽られて、びくびくと腰を震わせながら刺激を追いかけた。なのに、もっと強い快感は得られなくて、荒く息を吐く。
「あっ……や、やあっ、もう、焦らさないでえ!」
「あなたはとても敏感なようですね」
くすくす笑いながら、マチェイは服を脱ぎ捨てる。
身体を起こして改めて彼が伸し掛かる。わたしは腕を伸ばしてしがみつき、思い切り身体を押し付けた。
わたしの下腹に熱くいきり勃ったものが当たって、ぞくぞくと肌が粟立つ。
「あ、あ……マチェイ、ねえ……っ」
けれど、キスはくれるのに、肝心なものはなかなかくれない。ねだるように腰をくねらせ、下腹を押し付け「早く」と急かすわたしに、マチェイはもう一度キスをして、脚を抱え上げた。
「よく見えるように、入れてあげますから」
まるで半端にでんぐり返しをしているような姿勢に腰を持ち上げられ、マチェイの肉槍がわたしを突き刺していく様を見せられる。恥ずかしいのにどうしても目を逸らせなくて、ひたすらに見つめてしまう。
奥まで沈み、それからゆっくり抜き挿しされる太い幹は、粘液に塗れててらてらと光っていた。
心臓が早鐘のように激しく鼓動を打っている。
ゆっくりゆっくり、時折感じる場所を擦りながらゆっくりと抜き挿しされるようすを見ているうちに、物足りなさが湧き上がり、募っていく。
もっと激しく奥を突いて欲しいし、もっと強く感じる場所をこすって欲しい。胸も肉芽もいじって欲しい。
なのに、マチェイは中途半端な刺激しかくれず……。
「我慢できない、という顔をしていますね」
ぽたりとマチェイの汗が滴った。
彼ももっとと感じているはずなのに、どうしてもっとをくれないんだろう。
そんなことばかり考えてしまう。
「うねるように私を食い締めています。もっと奥へと誘い込もうとするように、食い締めて蠢いてます」
「だ、だって……んぁ、止めちゃ、いやあ……ああっ!」
いきなり強く叩き付けられて、喉を反らせてしまう。びくんびくんと痙攣するように締め付けて、ああ、と大きな声を上げてしまう。半端なところで堰き止められていた快感がいっきに噴き出して、わたしを頂点に押し上げる。
「あ、ああ、マチェイ、ああっ!」
さっきとは打って変わり、激しく荒々しく突き上げられて、わたしは喘ぐことしかできない。脚を絡めて必死に押し付けて奥をねだりながら、彼は優しく穏やかなだけではないんだな、なんて考える。
女神の司るという愛と情熱……その両方か、と。
「っ、ストー……っ」
「だめ、あっ、も、だめ……あああっ!」
「く……っ」
強く抉られて、頭の中が白く染まる。
ひときわ高く喘ぎながらひくひくと痙攣するわたしにキスをして、マチェイは素早く腰を引いた。
呼吸が落ち着くまで何度もキスをしながら、わたしを優しく抱き締める。
少し落ち着いたところで簡単に身体を清め、改めて一緒にシーツに潜り込んだ。甘えるように身体を寄せながら、抱かれてる最中も抱かれた後も、まったく嫌だと感じなかったことに少しホッとする。
そんなことを悶々と考えていることもお見通しなのか、マチェイは笑いながらわたしの顔をあげさせてキスをした。
「私はストーのお眼鏡に叶ったようですね」
「え、わたし、別に品定めなんて……」
「でも、気に入ってもらえたことは確かでしょう?」
たしかに、マチェイは嫌じゃない。それに、エセキエル以外に抱かれても、罪悪感みたいなものはかけらも感じなかった。
「――わたしの愛って、縛られたくない愛だったのかな」
ぽつりとこぼした言葉に答えるように、マチェイがキスをする。
「愛の形になんて、こだわる必要はありませんよ。愛はその時々によって形を変えるものです。ひとが便宜的に与えた形に囚われ過ぎてしまっても、あなたの愛を歪めることになってしまうのですから」
「そうなんですか?」
「はい」
マチェイの低い声が心地いい。
とろとろと頭の奥が蕩けるような睡魔に襲われて、わたしは目を閉じる。自分より少し高いマチェイの体温にもたれ掛かり、どこか野生的な印象の香りに包まれて、わたしの意識は沈んでいく。
翌朝、明けの薄明るい光に目を覚ますと、わたしはひとりだった。
ここに来てそろそろふた月だ。ここでの暮らしにもすっかり慣れて、わたしにもだいぶ余裕ができていた。
この神殿の司祭たちの朝は遅いし、朝食をまともに食べようという者も少ない。理由は言わずもがなだ。
朝食はごくごく軽く、せいぜいパンとチーズと果物を用意しておけば事足りてしまう。夜も、部屋に持ち込んで食べる者が多いから、サンドイッチのような軽く摘めるものを用意すれば十分だ。わざわざ述べるまでもない理由で。
その代わりに昼はしっかりと食べる者が多い。
そんな生活サイクルのおかげで、厨房の下働きも、昼食までの仕込みと昼食後の片付けが終わってしまえば割合に暇となる。
暇になった時間は、エセキエルや司祭にこの町のことや女神の話を聞いたり、わたしの故郷のことを話したり、読み書きを教わったりしながら過ごしていた。
「ストー」
呼ばれて振り返ると、マチェイ司祭だった。少し浅黒い肌の、たぶん三十そこそこ……もしかしたらもっと若い男性だ。
「いつもの話のことだけど、どう?」
「いつもの……」
少し前から、夜を共にしないかと誘われることが増えていた。
けれど、相変わらず、わたしが夜を過ごす相手といえばエセキエルだけで……そのうちにと、とても日本人らしく答えていたことを思い出す。彼が、軽い好意を持っているから、わたしに声を掛けたのだと言っていたことも。
マチェイ司祭は人好きのする笑顔を浮かべてわたしの返答を待っていた。
どうしようかと考えて、ふと、手を伸ばした。彼の頬に触れてみても、嫌な感じはまったくない。
「今夜、部屋に行ってもいいですか?」
軽く首を傾げていたマチェイ司祭は、「待っているよ」と破顔した。
「マチェイ司祭と今夜約束をしたそうだね」
ぼんやりと中庭を眺めていたら、いつの間にかエセキエルが横にいた。わたしはちらりと視線を動かして彼の姿を確認し、こくりと頷く。
「ひとりしか知らないのって勿体無いんじゃないかと思ったの」
「勿体無い?」
もう一度頷いて、横に腰を下ろしたエセキエルに、視線だけを向ける。
「この神殿、たくさんイケメンがいるのにエセキエルしか知らないなって思ったら、なんか勿体無いなって」
「そういう理由で申し出を受けるなんて、君らしいね」
「そう? わたしって意外にビッチだったのかなって考えてたんだけど」
「“ビッチ”? それもトウキョの言葉かな?」
「うん……ええと、売女だったかな? 誘われれば相手が誰でも構わずにセックスをする女ってことだけど」
エセキエルが困ったような顔で笑う。
「ストーは相手が誰でもいいというわけでもないだろう。そうやって自分を蔑むのはあまり感心できないな。君は、単にマチェイ司祭の何かを良いと感じたから、誘いを受けたのではないか?」
「ん……」
少し考えてみる。確かに、触っても嫌な感じはしなかったから……彼の笑う顔に好感を持ったから、寝てみようという気になったのだ。
「たぶん、そう、かな?」
「なら、マチェイ司祭をよく知ってくるといい」
「うん」
そうか、女神の言う“愛を交わす”は、相手を知る手段ということかと考えれば、いろいろと納得がいった。
* * *
夜、ランプひとつを手に、暗い廊下を歩く。マチェイ司祭の部屋はあらかじめ確認してあったから、迷うことはない。
程なく見つけた部屋は、扉の取っ手に目印代わりの紐が結びつけてあった。
うっかり部屋を間違えないよう、神殿でよく使われている目印なんだと、昼間に聞いていたものだ。
コツコツとノックをすると、すぐに扉が開いた。わたしを確認したマチェイ司祭に、「どうぞ」と招き入れられる。
「まずは、お茶でもどうかな?」
勧められた椅子に座って、わたしは頷く。すぐにベッドへ行くのかと思いきや、意外に気を遣われていたようだ。
マチェイ司祭はそんなわたしの心中を察してか、「さすがに、はじめての相手では緊張するものでしょう?」と笑った。
カップを並べてお茶を注ぎ、マチェイ司祭はわたしの隣に腰を下ろした。ほんのりとさわやかな花の香りのお茶を口に含み、ゆっくりと飲み込む。
「少し、話をしましょうか」
「はい……でも、何を話したらいいか」
「何でもいいんですよ」
何でもいいというのが一番困る。
そう、顔に出てしまったのか、マチェイ司祭はぷっと小さく噴き出した。
「そう言われても、なかなか出てこないものだという顔ですね」
「ええ、まあ……」
「では……そうですね、何か私に訊きたいことはありますか?」
「訊きたいことですか?」
「お互いを知れば、自然と緊張も解けるものですよ」
マチェイ司祭が伺うようにじっとわたしを見る。
もうひと口、ふた口とお茶を飲み込みながら、訊きたいことをぐるぐる考えて、結局、ひとつしか浮かばなかった。
ほ、と息を吐いて、カップを置く。
「あの……どうしてわたしを誘ったんですか?」
「気になっていましたか?」
訊き返されて、わたしは頷く。
「そうですね……どう言ったらいいのか……」
マチェイ司祭の手が頬に触れた。
するり、するりと軽く撫でて、笑むように目を細める。
「どことなくアンバランスに見えて、興味を引かれたといいますか」
「アンバランス?」
いったい何のことかさっぱりわからず、わたしは首を捻る。
「少年めいた中性さを持ち、成人と言っていい歳なのにまだまだ子供のようで、けれど、やはり成熟した女性の美しさもあって……」
「そう、ですか?」
褒められているのかどうなのか、よくわからない。けれど、笑みをたたえたマチェイ司祭の目は、蕩け始めている。
「ええ」
不意に、ちゅ、と音を立てて鼻の頭を啄ばまれた。
ちゅ、ちゅ、と立て続けに何度も顔にキスされて、わたしは吐息を漏らす。そっと回された腕で身体が引き寄せられ、唇が塞がれる。
その、どれもが嫌じゃないことに安心して、身体の力を抜く。
マチェイ司祭が小さく笑った。わたしが身を委ねたことを察して、マチェイ司祭のキスがどんどん深くなっていく。
「ん……」
舌を絡め口内を探りながら、マチェイ司祭はわたしを抱き上げた。
エセキエルに比べれば小柄だし細身だけど、それでもわたしひとり運べるくらいには鍛えているということか。
横抱きでキスを続けながら、マチェイ司祭はわたしをベッドに運ぶ。
「ストー」
「ん……っふ、う、んっ」
横たえられてもまだキスは続く。甘く柔らかく中を探りつつ擽られる舌の感触は、エセキエルとは全然違う。
腰帯を解かれて前を開かれ、掌が滑っていった。剣だことは無縁な柔らかい掌の感触はどこか心地よくて、ぴくり、ぴくりと小さく身体が跳ねてしまう。
「今日は、感じることだけに集中してください」
囁かれて瞬きをするわたしに、マチェイ司祭の、南の海のように深く明るい青い目が、にこりと細くなった。
あくまでも優しくふわふわと探る指先は、どこかもどかしい。もっとという焦燥ばかりが募って、どんどん欲しくて堪らなくなってしまう。
「ああ、ずいぶんとあふれていますね」
いつのまにか降りていた顔が、わたしの脚の間にあった。吐息がひやりと吹き掛かり、わたしの腰をぴくりと揺らす。
「パクパクと動いて、まるで口のようだ」
見られてる羞恥に顔が熱くなる。なのに、お腹の奥がますます疼いて、早く欲しいとわたしを急かす。
「あ……、マチェイ、司祭」
「マチェイと、呼んでください」
「え、んっ……」
「マチェイですよ」
「マ、マチェイ……あっ」
マチェイと呼んだ途端、秘裂をべろりと舐められた。けれど、やっぱりそれだけじゃ足りなくて、わたしは身を捩らせる。
舌先で肉芽を擽られて、びくびくと腰を震わせながら刺激を追いかけた。なのに、もっと強い快感は得られなくて、荒く息を吐く。
「あっ……や、やあっ、もう、焦らさないでえ!」
「あなたはとても敏感なようですね」
くすくす笑いながら、マチェイは服を脱ぎ捨てる。
身体を起こして改めて彼が伸し掛かる。わたしは腕を伸ばしてしがみつき、思い切り身体を押し付けた。
わたしの下腹に熱くいきり勃ったものが当たって、ぞくぞくと肌が粟立つ。
「あ、あ……マチェイ、ねえ……っ」
けれど、キスはくれるのに、肝心なものはなかなかくれない。ねだるように腰をくねらせ、下腹を押し付け「早く」と急かすわたしに、マチェイはもう一度キスをして、脚を抱え上げた。
「よく見えるように、入れてあげますから」
まるで半端にでんぐり返しをしているような姿勢に腰を持ち上げられ、マチェイの肉槍がわたしを突き刺していく様を見せられる。恥ずかしいのにどうしても目を逸らせなくて、ひたすらに見つめてしまう。
奥まで沈み、それからゆっくり抜き挿しされる太い幹は、粘液に塗れててらてらと光っていた。
心臓が早鐘のように激しく鼓動を打っている。
ゆっくりゆっくり、時折感じる場所を擦りながらゆっくりと抜き挿しされるようすを見ているうちに、物足りなさが湧き上がり、募っていく。
もっと激しく奥を突いて欲しいし、もっと強く感じる場所をこすって欲しい。胸も肉芽もいじって欲しい。
なのに、マチェイは中途半端な刺激しかくれず……。
「我慢できない、という顔をしていますね」
ぽたりとマチェイの汗が滴った。
彼ももっとと感じているはずなのに、どうしてもっとをくれないんだろう。
そんなことばかり考えてしまう。
「うねるように私を食い締めています。もっと奥へと誘い込もうとするように、食い締めて蠢いてます」
「だ、だって……んぁ、止めちゃ、いやあ……ああっ!」
いきなり強く叩き付けられて、喉を反らせてしまう。びくんびくんと痙攣するように締め付けて、ああ、と大きな声を上げてしまう。半端なところで堰き止められていた快感がいっきに噴き出して、わたしを頂点に押し上げる。
「あ、ああ、マチェイ、ああっ!」
さっきとは打って変わり、激しく荒々しく突き上げられて、わたしは喘ぐことしかできない。脚を絡めて必死に押し付けて奥をねだりながら、彼は優しく穏やかなだけではないんだな、なんて考える。
女神の司るという愛と情熱……その両方か、と。
「っ、ストー……っ」
「だめ、あっ、も、だめ……あああっ!」
「く……っ」
強く抉られて、頭の中が白く染まる。
ひときわ高く喘ぎながらひくひくと痙攣するわたしにキスをして、マチェイは素早く腰を引いた。
呼吸が落ち着くまで何度もキスをしながら、わたしを優しく抱き締める。
少し落ち着いたところで簡単に身体を清め、改めて一緒にシーツに潜り込んだ。甘えるように身体を寄せながら、抱かれてる最中も抱かれた後も、まったく嫌だと感じなかったことに少しホッとする。
そんなことを悶々と考えていることもお見通しなのか、マチェイは笑いながらわたしの顔をあげさせてキスをした。
「私はストーのお眼鏡に叶ったようですね」
「え、わたし、別に品定めなんて……」
「でも、気に入ってもらえたことは確かでしょう?」
たしかに、マチェイは嫌じゃない。それに、エセキエル以外に抱かれても、罪悪感みたいなものはかけらも感じなかった。
「――わたしの愛って、縛られたくない愛だったのかな」
ぽつりとこぼした言葉に答えるように、マチェイがキスをする。
「愛の形になんて、こだわる必要はありませんよ。愛はその時々によって形を変えるものです。ひとが便宜的に与えた形に囚われ過ぎてしまっても、あなたの愛を歪めることになってしまうのですから」
「そうなんですか?」
「はい」
マチェイの低い声が心地いい。
とろとろと頭の奥が蕩けるような睡魔に襲われて、わたしは目を閉じる。自分より少し高いマチェイの体温にもたれ掛かり、どこか野生的な印象の香りに包まれて、わたしの意識は沈んでいく。
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