【R-18】聖女は王子の呪いを解くため、大好きな勇者の前で寝取られる

衣草 薫

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10.王子の噂

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 翌朝、私は町の中心部にある小さな教会へ行った。
 高い位置にある丸いステンドグラスから朝日の射し込み、静かで凛とした空気の中お祈りを捧げ、神父様や礼拝に来ていた町の人々とお話をして過ごした。

 そこで私は思いがけず、町の人々からダニエル王子に関する話を聞くことができた。

 午後になってお城を訪れた。
 王子は相変わらず部屋で絵筆を握っていたけれど、私の顔を見ると少し驚いて、

「また来たの? もう二度と来ないと思っていたのに」

 と意地悪く言った。

「悪魔の呪いを解くまで私は何度でも来ますわ」

 毅然とした声で答え、私は背後に隠していたミニバラとカスミ草の花束を彼に見せた。
 昨日美しいバラを私が台無しにしてしまったのは事実だから、さっき教会を訪れた後、近くの市場へ行ったのだ。

「あいにくこの部屋にあったようなゴージャスな大輪のバラは手に入らなかったのですが」

 苦笑いする私に王子は呆れたような顔を向けた。

「あれだけひどい目にあわされたというのに、君は……。俺に腹を立てていないのかい?」

 私はふふ、と微笑んでみせた。
 悪魔の呪いに苦しんで生きてきた彼の苦労に比べたら、あれぐらいのこと何でもないのだ。

 空になったまま置いてあった昨日の花瓶に、私は花を生けた。
 そして彼の描いていた絵を覗いた。

「きれいな人ね……」

 そこに描かれていたのは褐色の肌の美しい女性だった。

「おい、勝手に見るなよ」

 彼は白い目元をぽっと赤くした。
 どうやら教会で聞いた話の通りらしいと私は思った。

「ダニエル王子は幼馴染みの隣国ザハーのエレーナ姫という許嫁がいるはずなのにどうして婚姻の儀を行わないのだろう。それどころか最近は公の場に姿も見せないし、何か病気にでもかかっているのか。聖女様、王子様をお助けください」

 その話を聞いたとき、私の中にあった疑問の答えが見つかった。
 王子は部屋で絵ばかり描いているはずなのに、城の中には彼が描いたとみられる絵は一枚も飾られていなかったのだ。昨日、玄関の間へ飾るよう彼が指示したバラの絵が、ここへ来るとき玄関の大階段の踊り場の額へ飾られていただけだ。
 だからもしかして、彼はずっとエレーナ姫のことを想い、部屋にこもって彼女の絵を描いているんじゃないかと思ったのだ。

 呪いなど解いてほしくない、結婚したい相手などいない、と言いながらも、心の底では呪いを解かれエレーナ姫と結ばれることを望んでいるのではないかと。

「王子様、本当は呪いを解いてほしいのではないでしょうか」

「……なぜそう思う?」

「だって王子様はずっとエレーナ姫のことを……」

 王子はどうしてそのことを知っているんだと、目を丸くした。

「呪いを解くには私とセックスして私の体内で呪われた性器を清める方法しかないのですが、嫌じゃなければ……」

 私は顔を熱くしながら言った。

「おいおい、俺は悪魔の呪いにかかっているんだ。セックスなんてしたら君はサキュバスになってしまうんだぞ」

「私は聖女ですから大丈夫です。信じてください」

 ポカンと開けた口を閉じて、彼は肩をすくめた。

「どうやら俺は君を誤解していたようだ。今まで俺の呪いを解きに来た者で危険を冒してまで呪いを解こうと試みたものは一人もいなかった。君はなんて慈悲深いんだ。本物の聖女だったんだな」

 彼はふっと微笑んだ。なんて美しい人なんだろう、と私はドキッとした。
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