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第九章 許嫁
57.婚約破棄
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階段の上が騒がしくて何事だろうと見ると、ドグマ様がマデューサ様の腕を振りほどいて階段を降りてくるところだった。
「どこへ行くのよ! ドグマッ、戻ってきて!!」
マデューサ様が悲痛ともいえる甲高い声で叫んでいる。
大事な許嫁を差し置いて一体どこへ行こうとしているのだろう。
「どうした、ローレンス! 何があった?」
階段を降りたドグマ様は床に倒れていた俺を抱き起こした。
たまたま俺が階段の下に倒れていたから邪魔だったのだろう。ドグマ様はどこかへ向かおうとしていたのに……。
「申し訳、ありません……」
体を離そうとしたけれど、力強く抱きしめられていて離れることができない。
ぼんやりとしか見えない目でドグマ様を見ると、じっと大事そうに俺を見つめていた。そんな目で見られたら涙が出て余計にぼやけてしまうじゃないか。
目を閉じたら、ドグマ様の手が俺の額へ優しく触れた。
「頭を打ったか? 少し腫れている……じっとしていろ」
そのままひょいと抱き上げられて、どうやら階段を上がっているらしかった。
「ちょっとドグマ! そんな使用人をどこへ運ぼうというのよ!?」
さっきから放っておかれているマデューサ様が怒っている。
「俺の部屋で介抱する。悪いがお前は帰ってくれ」
マデューサ様の前を素通りしてドグマ様は自分の部屋へ俺を運ぼうとした。
「な、なんなのよ!? これからディナーじゃないの!?」
マデューサ様はドグマ様の腕を掴んで引き留めようと必死だけど、ドグマ様は足を止めようとしない。
「そんなことは一言も言っていない。今日魔界までお前に会いに行ったのは婚約破棄を告げるためだ」
「……こ、婚約、破棄ですって……!?」
驚きのあまりマデューサ様はドグマ様の腕から手を退けて、鼻のように美しい紫の唇をポカンと開けたまま立ち尽くしていた。マデューサ様を廊下に残して部屋のドアはバタンと閉まった。
「じょ、冗談でしょう!!」
外からマデューサ様がドアノブを回してドアを開けようとしているけれど、ドアは開かない。ドグマ様が魔法でカギをかけたようだった。
「一方的な婚約破棄なんて認めないわ!! こんなに急に納得できる訳ないもの!! 理由をっ! せめて理由を説明しなさいっ!!」
ドアを蹴破ろうとする勢いでバンバン叩きながらマデューサ様が叫んでいる。
「他に大事なヒトができた。それだけだ」
ドアに向かってドグマ様が叫んだ。
「な、なによ、それっ! 大事なヒトって一体誰よ!! ……まさか、それって……!?」
ドグマ様はその質問には答えない。
「考えてみろ、俺とお前の関係は親の決めたことだ。俺は最初からお前のことなど愛していなかった」
そう言って、書斎の奥の寝室へ移動し、俺をベッドへ丁寧に下ろした。
「どこへ行くのよ! ドグマッ、戻ってきて!!」
マデューサ様が悲痛ともいえる甲高い声で叫んでいる。
大事な許嫁を差し置いて一体どこへ行こうとしているのだろう。
「どうした、ローレンス! 何があった?」
階段を降りたドグマ様は床に倒れていた俺を抱き起こした。
たまたま俺が階段の下に倒れていたから邪魔だったのだろう。ドグマ様はどこかへ向かおうとしていたのに……。
「申し訳、ありません……」
体を離そうとしたけれど、力強く抱きしめられていて離れることができない。
ぼんやりとしか見えない目でドグマ様を見ると、じっと大事そうに俺を見つめていた。そんな目で見られたら涙が出て余計にぼやけてしまうじゃないか。
目を閉じたら、ドグマ様の手が俺の額へ優しく触れた。
「頭を打ったか? 少し腫れている……じっとしていろ」
そのままひょいと抱き上げられて、どうやら階段を上がっているらしかった。
「ちょっとドグマ! そんな使用人をどこへ運ぼうというのよ!?」
さっきから放っておかれているマデューサ様が怒っている。
「俺の部屋で介抱する。悪いがお前は帰ってくれ」
マデューサ様の前を素通りしてドグマ様は自分の部屋へ俺を運ぼうとした。
「な、なんなのよ!? これからディナーじゃないの!?」
マデューサ様はドグマ様の腕を掴んで引き留めようと必死だけど、ドグマ様は足を止めようとしない。
「そんなことは一言も言っていない。今日魔界までお前に会いに行ったのは婚約破棄を告げるためだ」
「……こ、婚約、破棄ですって……!?」
驚きのあまりマデューサ様はドグマ様の腕から手を退けて、鼻のように美しい紫の唇をポカンと開けたまま立ち尽くしていた。マデューサ様を廊下に残して部屋のドアはバタンと閉まった。
「じょ、冗談でしょう!!」
外からマデューサ様がドアノブを回してドアを開けようとしているけれど、ドアは開かない。ドグマ様が魔法でカギをかけたようだった。
「一方的な婚約破棄なんて認めないわ!! こんなに急に納得できる訳ないもの!! 理由をっ! せめて理由を説明しなさいっ!!」
ドアを蹴破ろうとする勢いでバンバン叩きながらマデューサ様が叫んでいる。
「他に大事なヒトができた。それだけだ」
ドアに向かってドグマ様が叫んだ。
「な、なによ、それっ! 大事なヒトって一体誰よ!! ……まさか、それって……!?」
ドグマ様はその質問には答えない。
「考えてみろ、俺とお前の関係は親の決めたことだ。俺は最初からお前のことなど愛していなかった」
そう言って、書斎の奥の寝室へ移動し、俺をベッドへ丁寧に下ろした。
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