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第十二章 本音の薬
105.怪しい薬※
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「やっぱり俺はカトリーナと結婚しなければならないんだよな?」
自分の口から出た言葉にハッとした。
国のためにカトリーナと結婚することは自分の使命であるはずなのに。
結婚の話ばかりじゃない。王太子として生まれた俺は、これまで自分の希望を口にできる機会なんてなかった。親や周囲の人間が決めたことに従ってそれを運命だと思って受け入れて生きてきたのだ。そしてそれが当然だと思っていた。だって俺はこの国唯一の王太子なのだから。
「おや、お嫌なのですか?」
ライアはにやりと笑った。
「……っ」
今まで誰かに胸の内を明かしたことなんてない俺は慌てて口をつぐんだ。
ライアは勘づいているのだろう。俺が今、性器が女性器のままであることに本気で焦りを感じていないのは、心の底ではこのままの状態がずっと続いてくれたらいいと思っているからだ。カトリーナとの結婚をもっともらしい理由をつけて先延ばしにし、現状のままルークと一緒にいたいのだ。
カトリーナだって俺との結婚など望んでいないはずだ。彼女は俺ではなくて幼馴染みの軍人にニコラスに恋しているのだから。
本当はカトリーナとの結婚なんて望んでいない……。正直にそう言えたらどんなにいいだろう。
下唇を噛んだまま黙っている俺の顔をライアはニヤニヤと笑いながら見ている。
「苦しそうですね、はは、高貴なお方は大変だなぁ。この薬をあげましょう。飲めばきっと楽になります」
ライアはガラスの小瓶に入った薬を差し出した。
「なんの薬だ?」
「はは、飲めばわかりますよ」
何の薬かわからずに飲めるかと思いながらも、俺は小瓶を受け取った。
部屋に戻った俺はカトリーナに手紙の返事を書こうとペンを手にした。
しかし何と書けばいいものか。具合がよくなって安心したと書き始めたものの、改めて婚前旅行に行こうと誘う気にはなれない。そもそもカトリーナはどうして俺を婚前旅行に誘ったのか。俺のことなど好きでもなんでもないというのに。
俺とカトリーナはお互いに好きでもない相手と自国のために結婚するのだ……。
「苦しそうですね」「飲めばきっと楽になります」
ライアの言葉が頭の中で蘇った。
先ほど渡された薬の小瓶を手に取る。一体、何の薬だろうか……。
普段だったらこんな怪しいものを口にすることなんてないけれど、心に満ち溢れた虚しさをかき消したくて、俺は瓶のふたを開けた。薬草の香りがツンと鼻を刺激する。間髪入れずに液体を一気に飲み干した。
「うっ……、ケホッ、ゲホッ……! なんだこれっ!!」
苦い。薬なのだから多少の苦みは覚悟の上で口にしたが、想像の数百倍の苦さにゲホゲホと咽てしまった。
「シュライフェ様っ」
俺の咳を聞いてすぐにルークが駆けつけた。
「どうされました?」
「何でもない……少し咽ただけだ」
俺は薬の瓶を机の引き出しへそっと隠した。
「それと今朝から無性にムラムラしていて……♡」
俺、なんてことを言って……!?
口から勝手に言葉が飛び出して、俺は慌てて両手で口を覆った。
自分の口から出た言葉にハッとした。
国のためにカトリーナと結婚することは自分の使命であるはずなのに。
結婚の話ばかりじゃない。王太子として生まれた俺は、これまで自分の希望を口にできる機会なんてなかった。親や周囲の人間が決めたことに従ってそれを運命だと思って受け入れて生きてきたのだ。そしてそれが当然だと思っていた。だって俺はこの国唯一の王太子なのだから。
「おや、お嫌なのですか?」
ライアはにやりと笑った。
「……っ」
今まで誰かに胸の内を明かしたことなんてない俺は慌てて口をつぐんだ。
ライアは勘づいているのだろう。俺が今、性器が女性器のままであることに本気で焦りを感じていないのは、心の底ではこのままの状態がずっと続いてくれたらいいと思っているからだ。カトリーナとの結婚をもっともらしい理由をつけて先延ばしにし、現状のままルークと一緒にいたいのだ。
カトリーナだって俺との結婚など望んでいないはずだ。彼女は俺ではなくて幼馴染みの軍人にニコラスに恋しているのだから。
本当はカトリーナとの結婚なんて望んでいない……。正直にそう言えたらどんなにいいだろう。
下唇を噛んだまま黙っている俺の顔をライアはニヤニヤと笑いながら見ている。
「苦しそうですね、はは、高貴なお方は大変だなぁ。この薬をあげましょう。飲めばきっと楽になります」
ライアはガラスの小瓶に入った薬を差し出した。
「なんの薬だ?」
「はは、飲めばわかりますよ」
何の薬かわからずに飲めるかと思いながらも、俺は小瓶を受け取った。
部屋に戻った俺はカトリーナに手紙の返事を書こうとペンを手にした。
しかし何と書けばいいものか。具合がよくなって安心したと書き始めたものの、改めて婚前旅行に行こうと誘う気にはなれない。そもそもカトリーナはどうして俺を婚前旅行に誘ったのか。俺のことなど好きでもなんでもないというのに。
俺とカトリーナはお互いに好きでもない相手と自国のために結婚するのだ……。
「苦しそうですね」「飲めばきっと楽になります」
ライアの言葉が頭の中で蘇った。
先ほど渡された薬の小瓶を手に取る。一体、何の薬だろうか……。
普段だったらこんな怪しいものを口にすることなんてないけれど、心に満ち溢れた虚しさをかき消したくて、俺は瓶のふたを開けた。薬草の香りがツンと鼻を刺激する。間髪入れずに液体を一気に飲み干した。
「うっ……、ケホッ、ゲホッ……! なんだこれっ!!」
苦い。薬なのだから多少の苦みは覚悟の上で口にしたが、想像の数百倍の苦さにゲホゲホと咽てしまった。
「シュライフェ様っ」
俺の咳を聞いてすぐにルークが駆けつけた。
「どうされました?」
「何でもない……少し咽ただけだ」
俺は薬の瓶を机の引き出しへそっと隠した。
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口から勝手に言葉が飛び出して、俺は慌てて両手で口を覆った。
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