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第二章 まだ明かせない僕の気持ち(蓮side)
5.僕の初恋
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僕の部屋から帰って行く朋美さんを見送ると、僕はすぐにテーブルの上のノートパソコンの電源を入れた。
画面には壁の向こうの朋美さんの部屋が映し出される。
この前彼女に渡したクマの形のフットライト、あれはお客さんからもらったなんて噓で、僕が彼女の部屋を監視したくて盗撮器と盗聴器を入れて自作したものだ。
彼女は歯を磨いてベッドへ入り、スマホを見ている。
昨夜、彼女が泥酔しながらネットサーフィンしているのを僕はこうしてずっと見ていた。
彼女の荷物がうちへ誤配されたなんていうのも嘘だ。
昨夜、酔っ払った彼女が、通販で何かを買いながら、
「即日発送かぁ。あ、時間指定できる。じゃあ明日の夕方18時~20時で、と……」
と言っていたので、僕はベランダから彼女の部屋の明かりを見て、ここ最近いつもそうであるように残業で帰宅が遅れているのを確認し、18時からマンションの朋美さんの部屋の前で待機していた。
社則なのかエレベーターを使わず、階段を上がってきた配達員が、ほうきとちりとりを手に部屋の前を掃除する僕に向かって、
「301号室、笹原さん宛てにお荷物です」
と言った。
「うちです。ご苦労さまです」
笑顔を浮かべると、何の疑いもなく僕に荷物を渡した。
ほら、最近の宅配って印鑑レスだから楽勝だ。
すぐに箱の中身を開けた。彼女が買った何かを壊して、お詫びと称して彼女に何かご馳走するとか、デートするとか、今よりもっとお近づきになるのが僕の考えたシナリオだった。
……どうしてそこまでして彼女に近づきたいかって?
だって僕にとって朋美さんはただの隣人なんかじゃないからだ。
***
僕は今年23歳なんだけど、小学校1年生だった頃に小学校6年生だった彼女に惚れて以来15年、ずっと彼女のことが忘れられずに生きてきた。
今でこそ長身で引き締まった体つきをしているけど、当時の僕は同居する祖父母に甘やかされてまるまると太っていた。
どんくさくて泣き虫で、もじもじと小さな声でしゃべることを、いつも同級生からからかわれていた。
ある日学校から帰ろうとしたら、靴箱に入れてあったはずの靴がなくなっていた。
誰かに隠されたんだ……。どうしよう、靴がなきゃ帰れない……。
絶望して泣いていると、偶然朋美さんが通りかかった。
「あら、レンくんじゃない。どうしたの?」
僕の家の近所に住んでいた朋美さんは、同じ登校班で毎朝一緒に学校へ通っていた。
事情を聞いた朋美さんはきれいなハンカチを取り出して、涙でぐしょぐしょの僕の顔を拭いて、
「私が一緒に靴を探すから、もう泣かないで」
と言ってくれた。
結局、僕の靴は靴箱の上へ置いてあった。
それはいじめでも何でもなくて、その日の朝、脱いだ靴を僕がうっかり靴箱へしまい忘れて出しっぱなしにしていたから、用務員さんが靴箱の上へ避けておいてくれたのだった。
僕は親切な彼女のことが好きで好きでたまらなくなった。
彼女と彼女のお母さんは休日にクッキーやマドレーヌを焼いて、近所の子供たちを家に招いていた。
僕も何度か呼ばれて彼女の作ったお菓子を食べ、楽しくおしゃべりした。幸せだった。
しかしその幸せは長くは続かなかった。
6年生だった彼女は当然だが翌春に小学校を卒業した。
おまけに中学校へ上がるそのタイミングで、彼女はお父さんの仕事の都合で県外へ引っ越してしまい、もう会うことができなくなってしまったのだ。
画面には壁の向こうの朋美さんの部屋が映し出される。
この前彼女に渡したクマの形のフットライト、あれはお客さんからもらったなんて噓で、僕が彼女の部屋を監視したくて盗撮器と盗聴器を入れて自作したものだ。
彼女は歯を磨いてベッドへ入り、スマホを見ている。
昨夜、彼女が泥酔しながらネットサーフィンしているのを僕はこうしてずっと見ていた。
彼女の荷物がうちへ誤配されたなんていうのも嘘だ。
昨夜、酔っ払った彼女が、通販で何かを買いながら、
「即日発送かぁ。あ、時間指定できる。じゃあ明日の夕方18時~20時で、と……」
と言っていたので、僕はベランダから彼女の部屋の明かりを見て、ここ最近いつもそうであるように残業で帰宅が遅れているのを確認し、18時からマンションの朋美さんの部屋の前で待機していた。
社則なのかエレベーターを使わず、階段を上がってきた配達員が、ほうきとちりとりを手に部屋の前を掃除する僕に向かって、
「301号室、笹原さん宛てにお荷物です」
と言った。
「うちです。ご苦労さまです」
笑顔を浮かべると、何の疑いもなく僕に荷物を渡した。
ほら、最近の宅配って印鑑レスだから楽勝だ。
すぐに箱の中身を開けた。彼女が買った何かを壊して、お詫びと称して彼女に何かご馳走するとか、デートするとか、今よりもっとお近づきになるのが僕の考えたシナリオだった。
……どうしてそこまでして彼女に近づきたいかって?
だって僕にとって朋美さんはただの隣人なんかじゃないからだ。
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僕は今年23歳なんだけど、小学校1年生だった頃に小学校6年生だった彼女に惚れて以来15年、ずっと彼女のことが忘れられずに生きてきた。
今でこそ長身で引き締まった体つきをしているけど、当時の僕は同居する祖父母に甘やかされてまるまると太っていた。
どんくさくて泣き虫で、もじもじと小さな声でしゃべることを、いつも同級生からからかわれていた。
ある日学校から帰ろうとしたら、靴箱に入れてあったはずの靴がなくなっていた。
誰かに隠されたんだ……。どうしよう、靴がなきゃ帰れない……。
絶望して泣いていると、偶然朋美さんが通りかかった。
「あら、レンくんじゃない。どうしたの?」
僕の家の近所に住んでいた朋美さんは、同じ登校班で毎朝一緒に学校へ通っていた。
事情を聞いた朋美さんはきれいなハンカチを取り出して、涙でぐしょぐしょの僕の顔を拭いて、
「私が一緒に靴を探すから、もう泣かないで」
と言ってくれた。
結局、僕の靴は靴箱の上へ置いてあった。
それはいじめでも何でもなくて、その日の朝、脱いだ靴を僕がうっかり靴箱へしまい忘れて出しっぱなしにしていたから、用務員さんが靴箱の上へ避けておいてくれたのだった。
僕は親切な彼女のことが好きで好きでたまらなくなった。
彼女と彼女のお母さんは休日にクッキーやマドレーヌを焼いて、近所の子供たちを家に招いていた。
僕も何度か呼ばれて彼女の作ったお菓子を食べ、楽しくおしゃべりした。幸せだった。
しかしその幸せは長くは続かなかった。
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