【R-18】私を乱す彼の指~お隣のイケメンマッサージ師くんに溺愛されています~【完結】

衣草 薫

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第十一章 マタニティライフ(朋美side)

62.入院

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 先生に診てもらうと、切迫早産だから念のため入院しましょうと言われた。
 入院と聞いて、私は内心ホッとした。蓮くんと暮らすあの自宅に帰らなくていいのだ。これで蓮くんとみわさんのことをしばらく考えずにいられる。

 一人で自宅にいるとどうしても気持ちがふさぎ込んで、蓮くんの浮気の証拠を探しばかりしてしまうし、また手紙と写真が届くんじゃないかとか、蓮くんがいない時にいきなりみわさんが家へ押しかけて来るんじゃないかとか、悪い想像ばかりしてしまっていた。包丁でも持って襲いかかってこられたら、お腹が大きくて素早く動くことができない私は逃げることすらきっとできないから。

「はぁ……」
 大きな安堵のため息が出て、私はあの手紙の件でどれほどストレスを抱えていたか自覚した。

「お仕事お疲れ様。急だけど、少し入院することになったの」
 仕事から帰宅して自宅に私がいないことで心配させないように、蓮くんにメッセージを送ると、すぐに既読になった。仕事中だから返事は来なくて当然だろう。

 ふと不安がよぎった。彼が今頃、職場でみわさんに、
「なんか、うちの奥さん入院することになったみたい」
「じゃあ今夜のデートは社長の家に行きたいわ。泊ってもいいかしら……」
「ふふ、もちろんだよ」
 なんてやり取りをしていたらどうしよう……。胸がツキンと痛んだ。

 ……ああ、だめだめ、こんな悪いこと考えちゃ。
 切迫早産の症状は軽度なものだから、なるべく安静を心掛けながらも、病院内は自由に動いても大丈夫と言われたので、私は妊婦向け雑誌を借りてきてベッドで読むことにした。
 この白くて手狭な個室の中には、私と私のお腹の中で早く外へ出せと手足をばたつかせる蓮くんの子だけしかいない。
 もうあれこれ考えるのはやめて、入院中だけでものんびりしようと思った。

 雑誌には赤ちゃんを迎えるための準備が記されていた。
 新生児用のベッドや哺乳瓶のセット、衣類……。赤ちゃんのためのものは、だいぶ前から蓮くんと色々調べて準備している。私の実家や義母が送ってくれる約束をしているものもある。

「女の子じゃ、なるべく可愛いやつを選んであげましょうよ。見てください、これとかどうですか」
 オンラインショップの画面を見せながら、嬉しそうに笑う蓮くんの顔を思い出して私はツンと鼻の奥が痛んだ。

 蓮くんは赤ちゃんが生まれてくることを私以上に楽しみにしているように思っていたんだけど、それは私の勘違いでずっとみわさんと浮気を……? 一体いつから……?

 あ、だめだ、またそんなこと考えて……。
 個室のドアが開いた。
「朋美さんっ!」
 蓮くんが看護師さんと共に病室へやってきたことに私は驚いた。
 メッセージを送ってから、まだ一時間もしていないというのに。

「え、うそ。蓮くん、……仕事でしょう?」
「そんなことより、入院って!? そんなに具合が悪かったなんて、僕気づかなくて……。朋美さん大丈夫なんですか!?」
 彼はひどく取り乱していた。メッセージを見て仕事場から大慌てでやって来たのだろう。泣き出しそうな顔で私を見ている。

 ベッドの上で身を起こしていた私は震えている彼の両手を取り、
「……大丈夫よ、安心して。切迫早産なんだけど、先生が軽度なものだから、念のため数日入院しましょうって」
 と微笑んで見せたけど、蓮くんの顔色は晴れなかった。

 こんなに余裕なくおどおどする彼を私は初めて見た。
 彼が今夜みわさんとデートするんじゃないかなんて考えていたのは完全に私の被害妄想だ。

 彼だって私が妊娠してから色々と気を使ってくれて疲れているのだから、久しぶりにゆっくりと眠ってほしいと私は思った。けれど、なんと彼は私の病室に泊まりたいと病院のスタッフに頼み込んだ。

「蓮くん、私は平気よ。念のための入院だし、何かあればすぐに知らせるから、蓮くんも今日ぐらい家でゆっくり眠った方がいいわ」
「いえ、何かあってからじゃ遅いんで。……僕、朋美さんのそばにいたいんです」
 そう言って彼は引かなかった。夜になると毛布を借りてきて、病室内の長椅子の上で横になった。
 やっぱり疲れているのだろう、私が眠るより早く彼はすうすうと寝息を立て始めた。

 この蓮くんが誰かと浮気なんてしているようには思えない。あるとすれば、みわさんが一方的に蓮くんに恋心を抱いていて、私から彼を奪い取ろうとしているだけなのかもしれない……。

「優しいご主人ね、心配で付き添ってくれるなんて」
 翌朝、蓮くんが自宅に必要なものを取りに行ってくれているタイミングでやって来た看護師さんが言った。
「ええ、そうなんです」
 本当にその通り。蓮くんはいつだって優しくて誠実だ。
 お腹の赤ちゃんのためにも一旦、あの手紙のことは忘れよう、と私は決心した。
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