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19.異物の振動※

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「魔王様、どちらにいらしたんですか。もう式典が始まりますので席におつきください」

 到着が式典の始まるギリギリの時間になってしまったため、ラピスたちが心配していた。

 今日は我の父である先代の魔王の生誕記念式典だ。
 今でも父を尊敬する我にとっては年に一度の身の引き締まる大事な行事であり、魔王城の者だけではなく魔界からも数百の魔族を迎え、毎年盛大に執り行っている。

 司会進行役に促され、我はステージ上の席から壇上へ移動し挨拶のスピーチを始めた。会場にいる大勢の魔族が我に注目していた。

 その時突然、体内の異物がブブブッ……と振動を始めた。

「であり、我ら魔族は……、ぅんっ!」

 不意に体の奥に広がった甘い刺激に、鼻にかかった声が漏れてしまった。それは瞬時にマイクを通して周囲に響いた。

 シーンと静まり返った会場で、大勢の視線が我に突き刺さる。

「……げふげふっ」

 と咽たふりをしながら、舞台袖のリヒトを睨み見ると、ニヤニヤと顔を歪ませている。
 奴の仕業に違いなかった。体内の異物はリモコン式のローターだったのだろう。

 どうにか平静を装いながら我はスピーチを再開した。
 ただでさえ発情して敏感になっているのに、ローターなんかで刺激されては立っていることもままならない。

 この場で腰をヘコヘコ振りたい衝動をどうにかこらえる。
 それなのにローターの振動はさらに強さを増した。ブブブブブ……という音をマイクが拾ってしまわないか心配だった。

 我はこっそり内ももを擦り合わせながら、手短に挨拶を終えた。

 内側から激しくズボンを突き上げるペニスをそっとマントで隠しながら席に戻った。
 スピーチを終えてもステージ上の席に座ってずっと注目を浴びていなければならないので、こっそりトイレに逃げることも出来ない。

 体内で強く振動するローターの刺激に甘イキされそうになっても、下唇を噛んで耐えるしかなかった。

「……んっ」

 と声が漏れそうになるが、ひざの上のこぶしを握ってやり過ごした。


***


「貴様ぁっ!」

 我は舞台袖のリヒトに詰め寄った。未だに体内のローターは振動していて、気を抜くと口角からよだれが垂れてしまいそうになる。

 式典が終わると例年なら、参加してくれた魔族界の大御所に挨拶して回るところなのだがそれどころじゃない。

「ふふ、お疲れ様。さあ、こっち、こっち」

 奴はぎこちなく歩く我の手を引いて人気のない男子トイレへ向かった。そして三つある個室の一つへ我を連れて入った。

「貴様っ、大事な式典でなんてことをっ!」

 と狭いトイレの個室の中で我は奴の胸倉を掴んだが、男子トイレに誰かが入ってくる音がして、リヒトは指を立ててしーっとした。
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