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49.俺はお前のことが好きだった……
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そんなこと聞くまでもない。我が過去にエルフ族を追放したことを怒っているのだろう。
だが、この時こやつは我が想像していなかったことを口にした。
「俺はずっとお前のことが好きだったんだ……」
「はっ!? なんだとっ!? 貴様が我を?」
どういうことだと、我は驚いて狼狽えた。
「人間が攻め込んでくる前、魔族とエルフ族が平和に暮らしていた頃の話だ。俺はエルフ族の王太子、お前は魔王の王太子として共に同じ立場だから気になってずっと見ているうちに気がついたら好きになった」
小さい頃から王位継承者第一位として育てられた苦労は同じ経験をしたものにしかわからない。けれどこやつが我に対して好意を抱いていただなんて、気が付かなかった。
「子供の頃、俺は自分が将来エルフ王にならなきゃならない、生まれながらに背負わされたそんな運命に納得出来ないでいた。けど魔王の跡取りだって言うのにわがままで自由にありのまま生きるお前となら、うまくやっていけるんじゃないかって思って運命を受け入れることが出来るようになった。でもその矢先、人間が領土に攻め込んできてお前は俺たちエルフ族を裏切ったんだ」
ウォズはひどく苦しそうな顔で叫ぶように言った。
「エルフ族を裏切った復讐なんて今となってはどうでもいい、それよりも俺は俺の恋心を裏切られた復讐がしたいんだっ! だから死ぬほどの勉強と魔法の特訓をした。そしてプライドの高いお前を最も傷つける方法を考えた。それがアルファのお前がオメガ化してしまう運命の番を異世界から召喚することだったんだ」
「……それで、お前は満足か?」
尋ねるとウォズはフン、と鼻で笑って首を傾げた。
「いや、祭りのステージでオメガのお前がアルファのリヒトとイチャイチャしているのを見て余計に腹が立った。ははっ、嫉妬だな。俺以外の男がお前の運命の相手だなんて受け入れられなかった。だからあの時リヒトを元の世界に帰すために送還魔法を行うことにすんなりと応じたんだ。邪魔なリヒトを消して、今度は俺がお前をオメガにしようと思った。でも、あれだけお前の中に俺の精を注いでもどうにもお前をオメガ化出来そうな手ごたえはないなと感じた。それにお前はリヒトを想ってばかりいたしな」
「じゃあもう諦めればよかろうっ! それがどうして性奴隷になれって話になるのだっ! 貴様は我の運命の相手ではないのだというのに」
「うるさい、黙れっ! とにかく俺はオメガのお前を抱きたいんだ。そうすればきっと俺の心は満たされるっ!」
やっぱりこやつは狂ってる。我は黙り込んだ。
「だから俺はリヒトごとお前を囲ってしまおうと思ったんだ。そうすれば俺もオメガのお前とセックス出来る」
こやつに玩具のように抱かれるのはごめんだ。俺は別にこやつのことなど好きではない。でも、戦争を止めるには一刻の猶予もない状況だ。
「ほら、どうする? お前次第だぞ」
「くっ……」
その時、ウォズは閉ざされていた扉の方に手を向けた。
ゆっくりと開いた扉の隙間から何とも言えないいい匂いが漂ってきた。体が甘く痺れて、頭がくらくらする。
この世界でリヒトが放つアルファの強烈なフェロモンだ。
「ルシファーっ」
リヒトが部屋に入って来た。
もうリヒトのこの匂いを嗅ぐと我の理性は吹き飛んでしまった。
だが、この時こやつは我が想像していなかったことを口にした。
「俺はずっとお前のことが好きだったんだ……」
「はっ!? なんだとっ!? 貴様が我を?」
どういうことだと、我は驚いて狼狽えた。
「人間が攻め込んでくる前、魔族とエルフ族が平和に暮らしていた頃の話だ。俺はエルフ族の王太子、お前は魔王の王太子として共に同じ立場だから気になってずっと見ているうちに気がついたら好きになった」
小さい頃から王位継承者第一位として育てられた苦労は同じ経験をしたものにしかわからない。けれどこやつが我に対して好意を抱いていただなんて、気が付かなかった。
「子供の頃、俺は自分が将来エルフ王にならなきゃならない、生まれながらに背負わされたそんな運命に納得出来ないでいた。けど魔王の跡取りだって言うのにわがままで自由にありのまま生きるお前となら、うまくやっていけるんじゃないかって思って運命を受け入れることが出来るようになった。でもその矢先、人間が領土に攻め込んできてお前は俺たちエルフ族を裏切ったんだ」
ウォズはひどく苦しそうな顔で叫ぶように言った。
「エルフ族を裏切った復讐なんて今となってはどうでもいい、それよりも俺は俺の恋心を裏切られた復讐がしたいんだっ! だから死ぬほどの勉強と魔法の特訓をした。そしてプライドの高いお前を最も傷つける方法を考えた。それがアルファのお前がオメガ化してしまう運命の番を異世界から召喚することだったんだ」
「……それで、お前は満足か?」
尋ねるとウォズはフン、と鼻で笑って首を傾げた。
「いや、祭りのステージでオメガのお前がアルファのリヒトとイチャイチャしているのを見て余計に腹が立った。ははっ、嫉妬だな。俺以外の男がお前の運命の相手だなんて受け入れられなかった。だからあの時リヒトを元の世界に帰すために送還魔法を行うことにすんなりと応じたんだ。邪魔なリヒトを消して、今度は俺がお前をオメガにしようと思った。でも、あれだけお前の中に俺の精を注いでもどうにもお前をオメガ化出来そうな手ごたえはないなと感じた。それにお前はリヒトを想ってばかりいたしな」
「じゃあもう諦めればよかろうっ! それがどうして性奴隷になれって話になるのだっ! 貴様は我の運命の相手ではないのだというのに」
「うるさい、黙れっ! とにかく俺はオメガのお前を抱きたいんだ。そうすればきっと俺の心は満たされるっ!」
やっぱりこやつは狂ってる。我は黙り込んだ。
「だから俺はリヒトごとお前を囲ってしまおうと思ったんだ。そうすれば俺もオメガのお前とセックス出来る」
こやつに玩具のように抱かれるのはごめんだ。俺は別にこやつのことなど好きではない。でも、戦争を止めるには一刻の猶予もない状況だ。
「ほら、どうする? お前次第だぞ」
「くっ……」
その時、ウォズは閉ざされていた扉の方に手を向けた。
ゆっくりと開いた扉の隙間から何とも言えないいい匂いが漂ってきた。体が甘く痺れて、頭がくらくらする。
この世界でリヒトが放つアルファの強烈なフェロモンだ。
「ルシファーっ」
リヒトが部屋に入って来た。
もうリヒトのこの匂いを嗅ぐと我の理性は吹き飛んでしまった。
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