最初に好きになったのは…声

高宮碧稀

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第2章*放課後の図書室に

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次の日も、その次の日も、昼休みの図書室を訪れた。
変わったのは、マルが後ろから声をかけた時、ちょっと止まってから振り向くようになったこと。
俺を警戒してるってことだけど、少なくとも声は認識してもらえてる。
変わらないのは、マルの周りの男子生徒がムカついてしょうがないってこと。 
女としてのマルを、上から見下してるくせに、ちょっとの下心でマルに触れる。
髪や腕や、どうかしたら頬なんかも。
マルなんて意識してないといわんばかりのくせに、心なしかにやけてやがる。
そもそも、まるで意識していないならわざわざ触れる必要ないわけで…そう思うと気にくわない。

逆に、マルに心乱されてる俺なんて、触れるどころか目も合わせてもらえないのだ。
何日目かで、気安く触られるマルを、そしてそれを気にもとめてない彼女を、とうとう見てられなくなった。
それでも、1日マルに会わないなんて無理な話で…初めて放課後に足を運んだ。

放課後は、昼休みよりもずっと静かだった。
マルはパタパタと動き回る昼休みと違って、ゆったりとカウンターに座ってる。
息すら軽く詰めてしまうほどの静寂に、ページをめくる音やペンを走らせる音が重なっている。

ちょうど入った時に貸出の手続きをしていて俺に気づかないようだった。
それをいいことに、一番マルが見えて、でも、見つめてるってのが目立たない場所にそっと座った。
穏やかな表情で、意外と綺麗な姿勢を保って仕事を進めている。
そんなマルをじっと見てると、30分を過ぎた頃にやっと俺の視線に気がづいた。
いや、遅いだろ。……実は5分くらいだと思ってた俺も重傷だけど。

その瞬間のマルはちょっと見物だった。
まんまるに目を見開いて、一瞬後にばっと目をそらした。
思い通りの反応に、笑みが漏れちゃったじゃないか。 
不審に思われていないか、そっと周りを見渡した。
見える範囲には、本を読んでる2年生が1人。
あとは、2人で勉強している3年生と、本を棚に戻している1年の図書委員。
俺以外では生徒が4人。
そんな中、この熱い視線を30分もスルーしてたなんて…その程度だといわれてるみたいで、ますますこっちを向かせたくなる。
じれる気持ちを抑えて、待つ。
絶対、顔をあげるはずだ。

見つめた視線の先で、図書室のデブ猫は、おびえた目でそっとこちらをうかがった。

…上目づかいとかすんなっ!!
マルのくせにかわいいから!!

思わず心の中で叱責する。
ここ数日、毎日しつこいくらいの再確認してる。
俺って、今まで誰も好きじゃなかったんだなって。
人並みに…いや、それ以上にも、イロイロあったけど、こんなのいつもの俺じゃない。
いままで、誰にもこんな感情わき起こらなかった。

目が離せない。
触りたい。
会いたくてたまらない。
独り占めしたい。

その声で…龍っていわせたい。
再びあげられた瞳を、そらされるその前に捕まえないと…
視線が絡んだ瞬間をねらって、俺は人差し指でトントンと自分の唇をたたいた。
その合図に、瞬間でマルの顔が真っ赤になる。
目をそらすのも忘れ、困った顔をしたマルは途方にくれた捨て猫みたいだ。
落ちてたら、間違いなく拾うし。…とんでもなく溺愛してしまうけど。
丸々と太ったデブ猫を、さらに欲しがるまま餌を与えて、動けなくして…そう考えてたら笑ってしまった。
自分の独占欲の強さに。
俺ってこんなんだったんだ?と、楽しくさえある。
笑った俺に、たぶん自分のことだと思ったんだろう。
困った顔から、ちょっとむっとした表情に変わったマルに、今度こそ笑ってしまった。

自分でもわかる。
きっと、今俺は…したことないくらい優しい笑顔を浮かべてる。
だってほら、むっとしてたマルが、また顔を赤くして目をふせてしまった。
その顔も、俺の胸を騒がせる。
早くみんないなくなればいい。
そう思った時、1年の図書委員が仕事を終えたみたいだった。
図書委員の腕章をはずして、マルに声をかけている。
あわてて、顔をあげ、マルが返事をしてる。
やわらかな声で、「お疲れ様」「ありがとう」と声をかけて、最後に「助かっちゃった」といいながら…すっげぇかわいく笑った。
その笑顔は、俺にしてくれればいいのに…なんてうらやましく思う。

時計を確認すると、4時半を回っていた。
全員帰るには、もう少しかかりそうだな。
このままずっと見ていたいけど、マルにしたらそれは拷問だろう。
二人になってから、ちょっとでも話して…自分を少しでもマルに刻んでから帰ろう。
そう思って、荷物はそのままに立ち上がった。





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