最初に好きになったのは…声

高宮碧稀

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第2章*放課後の図書室に

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「目、そらさないで」
束縛していた唇を解放して、静かにいった。
見開かれていた瞳は、さらに大きくなった。
「俺を…ちゃんとみてよ」
うまく吸えなかったのか、息が荒くて目に涙が浮かんでる。
俺も、改めてマルをみた。
大きな体は、小さくふるえてた。
自分が怖がらせたくせに、心が痛む。
そして、変な満足感があった。

俺に、おびえてる。
俺を、意識してる。
そう思うと、ちょっと余裕ができた。
腕は放してやらないけど、後頭部を押さえていた手を前に回して頬を手の甲でなでた。
びくっとふるえたけど、抵抗はしなかった。
「どうやったら、意識がもうろうとしてたとか、冗談とかじゃないって信じる?」
やわらかな肌を震わせる彼女に、ずっと年下の子に聞くみたいに、頭とか頬をなでながら尋ねる。

「…あの」
口を開くけど、言葉が出てこないのかはくはくと唇を開いたり閉じたりしていて、その様子がかわいい。
「ゆっくりでいい」
“だから”と願うように続けた。
「建前とか立場とか抜きにして、ちゃんと応えて欲しい」
今更、少し汗ばんでるのに気づいた。
鼓動が早いことにも、こんなに近くに…好きな人がいるってことにも。

好きって気づいてから、こんなに近くになったことなかった。
あ。っていうか好きって、まだ伝えてない。
本当なら、ゆっくり伝えたい。
自分でさえ持て余すこの想いを、俺自身が味わっていたい気もする。
でも、この年の差で、先生と生徒で、真面目なマルと軽薄な俺で…なんとなく伝わればいいなっていうのは虫のいい話かもしれない。

「あの…だって」
「うん」
遠くから運動部の声が聞こえる。それくらい静かだった。
マルは、うつむいてしまった。顔を見ていたかったのに。
「篠原くんは、なんで…私に」
うん。いってなかった。
だから、マルが“なんでキスするの?”聞いてきたら、すぐにでもいおう。“好きだ”って。
だから、ちゃんと考えて欲しいって。
「なんで…私に」
マルが意を決したように、顔を急にあげた。
柔らかな唇を思い出し、キスしたい衝動を抑える。

「なんで私にちょっかいだすの!?私、そんなに先生っぽくない!?」
…はい?
呆気にとられて反応が遅れる。
「っていうか…そこから?キスもちょっかいだと思ってんの!?」
ちょっかいって、冗談より下じゃない!?
「だって、反応がおもしろいからでしょ!?みんなそうなの!!」
ちょっと頬をふくらませる。もともとふくらんでるけど。
…つか、かわいいんですけど!!
直視ができない。キスをがまんしてるから。
いや、そうじゃなくて!!
「ちょっとまて!!みんなにナニされてんの!?」
まさか、キスをちょっかい程度だと勘違いするようなこと!?
焦ってマルの方に身を乗り出した。
「え?ほっぺた触られたり、腕ふにふにされたり?」
“普通先生にはしないでしょ?”と、平気でそう続けた。

前言撤回!!そいつらと一緒にされたくはない!!
ふざけたおさわりと、俺のいっぱいいっぱいのキスを同列に扱って欲しくない。
まだ言えない。からかいだとか、気まぐれなんかですませてやらない。

「篠原くんにとっては、キスもそれくらいのことなんでしょ?」
“私には違うのに”と口をとがらせる。
落ち着いてきて、マルの言葉が増えだした。
…今までの軽い行動が裏目にでたところも、敗因ではあるようだ。
それは、俺も悪い。




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