最初に好きになったのは…声

高宮碧稀

文字の大きさ
10 / 29
第2章*放課後の図書室に

6

しおりを挟む
「からかってない。その…キスしたあとに、ごまかしたのは認めるけど…」
せめてふざけた行動じゃないってことだけでも伝えたい。
そう思って言い訳したけど、マルは信じない。

「私としなくても、不自由してないでしょ?からかってないなら…“年上”とか“先生”とかだと燃えるものなの?」
自分の不誠実さのせいとはいえ…これは、ちがうっていっても、信用してもらえない。
「別に“年上”とか“先生”が好きなんじゃない 」
マルが、好きなだけだ。
「…わかった。なかったことにしていい。もう、軽々しくそんなことしない」
淡々と、そう告げた。
声は少しふるえたけど。…ダセェ。
本当は全然軽々しくなかったけど仕方がない。

卒業まで、もうしない。
マルに、本気を伝えたい。
その気持ちだけでも、真剣さだけでも、ちゃんと伝わったのか…マルがふわっと笑って、ホッと息をついた。
さっそく拷問だ。できれは、挑発しないでもらいたいんだけど。
そんな笑顔を見たら、祈らずにはいられない。

抱きしめて、キスをして…
いつか、龍って呼んでもらえますように。

でも、この想いを軽く扱って欲しくない。
「何もしないから、図書室にきていい?」
最大の、譲歩。姿までは隠さないで。
せめて、見つめていさせて。
そんなの、ガラじゃないってわかってるけど、願わずにはいられなかった。
「それはもちろん!!来てくれたら嬉しいのよ」
にこにこ笑って意気込んで答えてくれるけど、キスとかしなければでしょ?
それが難しいんだってば。
人の気も知らないで、マルはすがすがしく笑って注文をつけてくる。
「本も読んでね」
しかたなくうなずく。
数日前すすめられた文庫本を、今日は借りて帰ろう。

「もう大人をからかっちゃだめよ?」
すぐに表情に出て、言い訳も丸め込むのも下手な、たいした大人じゃないくせに。
「…本気ならいいの?」
「本気でからかうとか、もっとだめだよ!!」
………はぁっ。
からかうとか、ちょっかいだすとか、そこからは離れないわけね。
まぁ、今はいいか。
ゆっくり、マルの中に染みていけばいい。
俺の言葉が、俺の存在が。
今はまだ、祈りでしかないけど…

それからの俺は、毎日放課後に図書室に通った。
時間は、ちょっと遅め。
そして、最新の注意を払う。
浮かれた様子をなるべく隠して、極力だるそうに歩く。
人に見られたら、色々と面倒だから。
毎日繰り返しても飽きないこの習慣。
マルに、会いにいく。
この時間にめったに人は来ないから、俺だとわかってて、マルは優しい笑顔とやわらかなその声で俺を迎えてくれる。

バカみたいだけど…毎日思う。
時間が、止まってしまえばいいのにって。
放課後の図書室に…ずっとふたりでいられたらいいのにって。

マルが…早く俺を好きになればいいのにって。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...