最初に好きになったのは…声

高宮碧稀

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第3章*俺だけのはずなのに

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放課後は、もちろん図書室に通ってる。
でも、やっぱ我慢できない日もあった。
放課後まで、待てない日。
うるさいメ…女どもにベタベタ触られた日とか、不意にマルの話を聞いた時とか。
ちなみに、獰猛な肉食獣バリの女どもを「メス」って呼んだら…マルにメチャクチャ怒られた。
「篠原くん?女性に失礼なこといわないの!!」
怒った顔も好きだし、マルの責めるような“篠原くん?”って響き、嫌いじゃない。 
「ハイ。もういいません」
ちょっとふざけてそういったら、満足そうに笑った。

その笑顔に満たされて、忠犬のようにそれを守ってる自分にびっくりする。
マルにたしなめられて、ちょっとだけ気をつけだした。
「リュウ最近優しくなったぁ~」
すぐにそう言われた。
それはどうでもいいけど、前ほど絡まれなくなったのは不思議だ。
まさか、逃げてたから追いかけられてたのか?
さすが肉食獣…
かといって、香水臭さにも、ベタベタ触ってくる無遠慮なところにも、不快感はいまだある。

それに比べてマルは…
声だけで胸が騒いで、笑顔を見ただけで顔がにやける。
困った顔や泣きそうな顔は押し倒したくなって…
がまんするのは大変だ。
しかも、マルはいつもいい匂いがする。フレグランスは何もつけてないらしい。
シャンプー?
男子高校生を試すような真似は、やめて欲しい。
本人にその気がないのもわかってる。
もうしないっていった俺を、全面的に信用してるのも嬉しい。
でも、本を勧めるときの近すぎる距離や、冗談をいったときにたたくフリで触れる腕。
俺だけがドキドキするのは…ずるい。
もっとひどいのは、他の男にも同じことしてるってこと。

「マルちゃんかわいいよねー」
ある女子の言葉に、他の女子はみんなうなずく。
「なんつーか、マルちゃんは癒し系?」
ある男子の言葉を、他の男子はみんな否定しない。
けっしてうなずかないけど、みんなそう思ってる証拠だ。
なんていうか、そういう存在なのだ。
ドキッとするほどの「女」は、もちろん感じさせない。
かといって、若いから「母親」って感じでもない。
女子には話しやすく相談しやすくて、男子にはちょっとの下心で触るのに、ちょうどいいんだろう。
くたばれ、男子ども。
そんな男どもに、何も考えず、警戒もせずに無防備に振る舞うマル。
もちろん俺は気が気じゃない。

この間は本当に、廊下でガラの悪いやつらに手をぷにぷにと触られていた。
世間話をしながら。
だらしなく着崩した制服に、明るい髪色。
一応進学校なせいか、色とりどりとまではいかないが、つきまとうメ…女たち同様、よく受かったな。この高校。
こいつらにとってはマスコット的存在らしいマルは、にこにこしがら秋の読書を勧めている。
手を自由に触らせながら。

いつか俺だって触りたい。手だけじゃなくて、恋人としてあちこちを。
そんな機会があったら、そういうことには、経験上ちょっと自信がある。
その時を楽しみに、今はがまんするしかない。
もし一度でも承諾してくれたら…嫌がってもやめてあげられそうにない。
でも、涙目で耐えるマルを想像するだけで…
顔がニヤケるのを止められなかった。
その日のために、さらなるスキルアップをと思ってもみたけど…
相当重傷みたいで、マル以外に触れたいとは思えない。
しかたなく、今日も触れることを許されないマルに会いに行く。

だいぶ言われてる。
付き合いが悪くなったって。
サトシは、俺が相当の女を見つけたと思ってるようで“遊べる時に声かけてくれ”とか相談に乗って欲しかったら言えよ?”というだけで気にした様子はない。
そんなサトシにすら、言えないでいる。
だから、人目を忍んで図書室に足を運ぶのだ。
マルを、前の時みたいに好奇の目にさらすわけにはいかない。




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