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第3章*俺だけのはずなのに
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「…じゃあ、今日はもう帰るから、本を…」
本を借りる手続きをしてらう。
マルが本を手渡してくれる。
名残惜しくて、いつもそっと触る指を…今日はほんの一瞬だけ、軽く握った。
さすがに、マルがぱっと俺をみたけど、素知らぬフリを通した。
他の男と食事をしてる時に…俺を、少しでも思い出せばいいんだ。
振り向くと、玉木さんは新刊コーナーの本をパラパラとめくっていた。
なんとなく、見られていなくてホッとした。
子供っぽい独占欲だって、自覚してるから。
マルの耳が、ちょっぴり赤いのを確認して、本をしまう。
前にマルにもらった、ちょっとしっかりした雨の日用のビニール袋。
雷はやんだけど、まだ小雨が落ちている。
図書室の本は、マルの大事な物だから。
マルに触れるように大事にしまった。
玉木さんには「失礼します」マルには「また明日」といって図書室を出た。
もちろん背中の二人のこの後が気になってしょうがなかったけど、仕方がない。
邪魔者がいなくなったとばかりに寄りそったり、抱き合ったり…なんて、そんなイヤな妄想で心が支配されそうな時、あの柔らかな声に呼び止められた。
「あのっ、篠原くんっ」
階段の踊り場で振り向くと、マル。
立ち止まって待つと、俺の前に立つために階段を下りてきた。
それだけで、なんだか感動しちゃいそうな…うん。バカな俺。
本当は、待ってたんじゃなくて、びっくりして動けなかった。
「…なに?」
つとめて無愛想な声をだす。
だってマルは、今から俺じゃない男と食事に行くんでしょ?
不機嫌な俺に気づいてよ。
「あの…今日はごめんね?せっかくいつも来てくれてるのに」
マルの言葉に、俺の不機嫌はどこかに消え去ってしまった。
「………それだけ?」
そういうと、マルはちょっと困った顔と、傷ついた目をした。
あ…かわいい。じゃなくて。
「違うよ、それだけいうために、来てくれたの?って意味」
わざわざ呼び止めんなよ、て誤解してたに違いない。
訂正するとホッとしたのか、本当に嬉しそうに笑った。
やめてほしい。
触るのをがまんしてることをいくら知らないからって、そんなに無邪気に、可愛く笑うなんて。
「あの、だって…いつも、せっかく帰る前に涼んでるのに…」
すまなそうにマルがいったけど、かぶせるように口を開いた。
「…違うよ。マルに会えれば、暑くったっていいんだ」
マルの笑顔が、俺の理性とか、意地とか、プライドなんかを溶かしてしまったみたい。
珍しく素直な言葉が自分の口からこぼれた。
マルの顔が瞬間で赤くなった。
「………」
かけられた甘い言葉に、マルが口をきけないでいる。
こっちは、逆にちょっと余裕がでてきて、笑いをこらえるのに必死だった。
「………っじゃぁ!!それだけっ」
あ、逃げた。
たっぷり時間をかけたけど、なんていっていいのかわからなかった様子。
逃げる様も猫みたいだ。
ちょっとトロいけど。
「マル」
階段を精一杯急いで上がろうとするマルを呼び止めた。
立ち止まったけど、振り向いてはくれない。
「食事…さ。あんまり楽しんでこないで」
そういうと、やっとこちらを向いた。
振り向くマルは、さっきよりさらに顔が赤い。
なるほど、だから振り返れなかったのかと合点する。
マルは、びっくりした顔をしている。そりゃそうだ、普通楽しんでとしか言わないハズ。
「卒業したら…俺も誘うから、あんまハードル上げないでよ」
そういうと、なんて返したらいいかわからないらしく…
しばらく無言の後、泣きそうな顔になった。
慣れてないんだ。
わかってたけど、改めて嬉しくなる。
もう、こらえきれなくて、吹き出してしまった。
「絶対、誘うから」
ちょっと呼吸を整えて、改めて言った。
相変わらずマルは、何もいえないでいる。
止まったままのマルをそのままに、じゃーねと手を振って、階段を下りた。
ちょっと浮かれてる足取りを自覚してる。
階段だって1段飛ばして降りた。
マルが、俺を追いかけて来た。
図書室からほとんどでないマルが。
マルと会いたがるは俺だけのハズなのに…いつも会いに行くだけの関係が、ちょっとだけ、ちょっとだけ近づいた気がした。
思わぬ伏兵の玉木さんが、頭をよぎったけど、今はそれだけで満足だった。
生ぬるい小雨も、アスファルトから立ち上る熱気も、全然不快に感じない。
ちょっと浮かれながら、ニヤケる顔で…もう何度もつぶやいた願いを、改めて強く念じた。
マルが…マルが、少しでも俺を意識してくれますよーにっ!!
本を借りる手続きをしてらう。
マルが本を手渡してくれる。
名残惜しくて、いつもそっと触る指を…今日はほんの一瞬だけ、軽く握った。
さすがに、マルがぱっと俺をみたけど、素知らぬフリを通した。
他の男と食事をしてる時に…俺を、少しでも思い出せばいいんだ。
振り向くと、玉木さんは新刊コーナーの本をパラパラとめくっていた。
なんとなく、見られていなくてホッとした。
子供っぽい独占欲だって、自覚してるから。
マルの耳が、ちょっぴり赤いのを確認して、本をしまう。
前にマルにもらった、ちょっとしっかりした雨の日用のビニール袋。
雷はやんだけど、まだ小雨が落ちている。
図書室の本は、マルの大事な物だから。
マルに触れるように大事にしまった。
玉木さんには「失礼します」マルには「また明日」といって図書室を出た。
もちろん背中の二人のこの後が気になってしょうがなかったけど、仕方がない。
邪魔者がいなくなったとばかりに寄りそったり、抱き合ったり…なんて、そんなイヤな妄想で心が支配されそうな時、あの柔らかな声に呼び止められた。
「あのっ、篠原くんっ」
階段の踊り場で振り向くと、マル。
立ち止まって待つと、俺の前に立つために階段を下りてきた。
それだけで、なんだか感動しちゃいそうな…うん。バカな俺。
本当は、待ってたんじゃなくて、びっくりして動けなかった。
「…なに?」
つとめて無愛想な声をだす。
だってマルは、今から俺じゃない男と食事に行くんでしょ?
不機嫌な俺に気づいてよ。
「あの…今日はごめんね?せっかくいつも来てくれてるのに」
マルの言葉に、俺の不機嫌はどこかに消え去ってしまった。
「………それだけ?」
そういうと、マルはちょっと困った顔と、傷ついた目をした。
あ…かわいい。じゃなくて。
「違うよ、それだけいうために、来てくれたの?って意味」
わざわざ呼び止めんなよ、て誤解してたに違いない。
訂正するとホッとしたのか、本当に嬉しそうに笑った。
やめてほしい。
触るのをがまんしてることをいくら知らないからって、そんなに無邪気に、可愛く笑うなんて。
「あの、だって…いつも、せっかく帰る前に涼んでるのに…」
すまなそうにマルがいったけど、かぶせるように口を開いた。
「…違うよ。マルに会えれば、暑くったっていいんだ」
マルの笑顔が、俺の理性とか、意地とか、プライドなんかを溶かしてしまったみたい。
珍しく素直な言葉が自分の口からこぼれた。
マルの顔が瞬間で赤くなった。
「………」
かけられた甘い言葉に、マルが口をきけないでいる。
こっちは、逆にちょっと余裕がでてきて、笑いをこらえるのに必死だった。
「………っじゃぁ!!それだけっ」
あ、逃げた。
たっぷり時間をかけたけど、なんていっていいのかわからなかった様子。
逃げる様も猫みたいだ。
ちょっとトロいけど。
「マル」
階段を精一杯急いで上がろうとするマルを呼び止めた。
立ち止まったけど、振り向いてはくれない。
「食事…さ。あんまり楽しんでこないで」
そういうと、やっとこちらを向いた。
振り向くマルは、さっきよりさらに顔が赤い。
なるほど、だから振り返れなかったのかと合点する。
マルは、びっくりした顔をしている。そりゃそうだ、普通楽しんでとしか言わないハズ。
「卒業したら…俺も誘うから、あんまハードル上げないでよ」
そういうと、なんて返したらいいかわからないらしく…
しばらく無言の後、泣きそうな顔になった。
慣れてないんだ。
わかってたけど、改めて嬉しくなる。
もう、こらえきれなくて、吹き出してしまった。
「絶対、誘うから」
ちょっと呼吸を整えて、改めて言った。
相変わらずマルは、何もいえないでいる。
止まったままのマルをそのままに、じゃーねと手を振って、階段を下りた。
ちょっと浮かれてる足取りを自覚してる。
階段だって1段飛ばして降りた。
マルが、俺を追いかけて来た。
図書室からほとんどでないマルが。
マルと会いたがるは俺だけのハズなのに…いつも会いに行くだけの関係が、ちょっとだけ、ちょっとだけ近づいた気がした。
思わぬ伏兵の玉木さんが、頭をよぎったけど、今はそれだけで満足だった。
生ぬるい小雨も、アスファルトから立ち上る熱気も、全然不快に感じない。
ちょっと浮かれながら、ニヤケる顔で…もう何度もつぶやいた願いを、改めて強く念じた。
マルが…マルが、少しでも俺を意識してくれますよーにっ!!
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