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第○章**私の心を乱さないで
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篠原くんの胸を押し戻そうとしたけど、かえってきつく引き寄せられた。
舌が入ってきただけなのに、頭の中までかき混ぜられて…その日、また眠れませんでした。ハイ。
大人のキスを、まさか生徒に伝授されるなんて。
あの子はなんであんなに慣れてるのー!?
あんな…ベロがっ!!くちゅって!!…篠原くんのバカー!!
やっと離してくれたと思ったら、突然「もうしない」と言ってくれた。
どうしていいかわからなくて…とりあえず、考えなくていいんだと思うと、ホッとした。
不思議と疑ったりはしなかった。
強い、強い…強い、意志。
それが読みとれたから。
きっと、この人は、約束を守る。そう思った。
でも、それからも、彼は毎日図書室に現れる。
来てくれるのはもちろん嬉しい。
いままで本を読まなかった子。そんな子が、読む楽しさをわかってくれるのは本当に嬉しい。
特に篠原くんは、透明な水を吸い込むように本を読んだ。
とても綺麗な所作で、ページを繰る。正直、ちょっとみとれちゃうときがあった。
借りて帰った本は、次の日には返ってきて、ポツリポツリと感想を伝えてくれた。
「けっこう楽しめた」
「最後がスキ」
「この女ヤダ」
「こいつかっこいーね」
そう?どこが?
そう尋ねると、私が思いつかないような言葉を返したり、隅々まで共感するような返事だったり。
篠原くんと本の話をするのは、本当に楽しかった。
でも… 確かに、約束通りキスしたりはしなかったけど、オススメの本を渡すときは必ず指が触れた。
鼓動が跳ねて、恥ずかしくて、普通に振る舞うのは大変だ。
「私は先生なんだから動揺しちゃだめ」
そう自分に言い聞かせた。
それも、なんとかなだめられたのは、前回まで。
今日は…一瞬だけ、ぎゅっと指を包んで離れたぬくもりが、いつまでも残ったまま。
次に指先が絡んだら、普通に接する自信がない。
篠原くんの…バカ。
「チョビは、そうとう篠原くんがお気に入りなんだね」
独特の、穏やかな口調で玉木くんが言葉を紡いだとき、ちょうど熱の引かない指先を眺めていたのでドキッとした。
いけない。びっくりして、時間が止まってしまった。
「…生徒だから、そりゃ可愛いけど、特にお気に入りとかはないよ?」
平静を装ったつもりだけど、きっと玉木くんには通じない。
今日は玉木くんがバイト代で、ごちそうしてくれることになっている。
割り勘にしようといったけど、聞き入れてくれそうにない。
せっかく手頃だけどおいしいイタリアンなのに、あまり味わえていなかった。
失礼よね。今考えるのはよそう。
そう思ったのに、玉木くんがさらに続ける。
「チョビがすすめてた本、チョビが好きな本でしょ」
グラスの水に口をつけながら、目だけを上目遣いに見つめられ、すべてが見透かされたような気がした。
「そりゃ…面白い本は?っていわれたら、好きな本をすすめるでしょ?」
普通だよ。篠原くんにだけ…なんてこと、ないはずだ。
「気づいてないの?チョビ、自分の好きな本はあんまり生徒に紹介してないよ」
驚いて玉木くんを見ると、鮮やかに微笑まれた。
目立つ程の美形ではないけれど、なかなか均整がとれている。
下級生にモテてたのを思い出す。
穏やかで、余裕があって…「憧れの先輩」そのものなんだろう。
派手なタイプではないけれど、年に似つかわしくない落ち着きのある人だ。
玉木くんに、隠し事なんて出来ないような気がした。
私が言葉をなくすと、料理に視線を落として話し出した。
「ちょっと潔癖で…自分の好きな作品を、共有したがらないよね」
確かに、スキな本は、その良さをわかってくれそうな人にしかすすめたくない。
「妬けるな」
そういった彼に、思わず笑ってしまった。
だって、とても楽しそう。
「そんな嬉しそうにいわれても」
心は跳ねない。
そういえば、雷が怖くてそれどころじゃなかったけど…顔を挟むようにして、耳をおおってくれだけど、緊張とかはしなくて、逆に安心した。
玉木くんといると、今でも落ち着く。
この仕事に初めてついたときも、すごく助けられた。
3年生だったし、読書家だったので、校内のことも図書室のこともよく知っていたから。
何を聞いても穏やかに答えてくれたので、頼りにしていた。
その時、篠原くんは1年生だったのか…
そう思うと、指がまた熱を持つ。
「あの子の話はもういいから…最近何か面白い本読んだ?」
ぎこちない、会話の切り替え。
それでも、玉木くんは付き合って、本のタイトルをいくつか挙げてくれた。
舌が入ってきただけなのに、頭の中までかき混ぜられて…その日、また眠れませんでした。ハイ。
大人のキスを、まさか生徒に伝授されるなんて。
あの子はなんであんなに慣れてるのー!?
あんな…ベロがっ!!くちゅって!!…篠原くんのバカー!!
やっと離してくれたと思ったら、突然「もうしない」と言ってくれた。
どうしていいかわからなくて…とりあえず、考えなくていいんだと思うと、ホッとした。
不思議と疑ったりはしなかった。
強い、強い…強い、意志。
それが読みとれたから。
きっと、この人は、約束を守る。そう思った。
でも、それからも、彼は毎日図書室に現れる。
来てくれるのはもちろん嬉しい。
いままで本を読まなかった子。そんな子が、読む楽しさをわかってくれるのは本当に嬉しい。
特に篠原くんは、透明な水を吸い込むように本を読んだ。
とても綺麗な所作で、ページを繰る。正直、ちょっとみとれちゃうときがあった。
借りて帰った本は、次の日には返ってきて、ポツリポツリと感想を伝えてくれた。
「けっこう楽しめた」
「最後がスキ」
「この女ヤダ」
「こいつかっこいーね」
そう?どこが?
そう尋ねると、私が思いつかないような言葉を返したり、隅々まで共感するような返事だったり。
篠原くんと本の話をするのは、本当に楽しかった。
でも… 確かに、約束通りキスしたりはしなかったけど、オススメの本を渡すときは必ず指が触れた。
鼓動が跳ねて、恥ずかしくて、普通に振る舞うのは大変だ。
「私は先生なんだから動揺しちゃだめ」
そう自分に言い聞かせた。
それも、なんとかなだめられたのは、前回まで。
今日は…一瞬だけ、ぎゅっと指を包んで離れたぬくもりが、いつまでも残ったまま。
次に指先が絡んだら、普通に接する自信がない。
篠原くんの…バカ。
「チョビは、そうとう篠原くんがお気に入りなんだね」
独特の、穏やかな口調で玉木くんが言葉を紡いだとき、ちょうど熱の引かない指先を眺めていたのでドキッとした。
いけない。びっくりして、時間が止まってしまった。
「…生徒だから、そりゃ可愛いけど、特にお気に入りとかはないよ?」
平静を装ったつもりだけど、きっと玉木くんには通じない。
今日は玉木くんがバイト代で、ごちそうしてくれることになっている。
割り勘にしようといったけど、聞き入れてくれそうにない。
せっかく手頃だけどおいしいイタリアンなのに、あまり味わえていなかった。
失礼よね。今考えるのはよそう。
そう思ったのに、玉木くんがさらに続ける。
「チョビがすすめてた本、チョビが好きな本でしょ」
グラスの水に口をつけながら、目だけを上目遣いに見つめられ、すべてが見透かされたような気がした。
「そりゃ…面白い本は?っていわれたら、好きな本をすすめるでしょ?」
普通だよ。篠原くんにだけ…なんてこと、ないはずだ。
「気づいてないの?チョビ、自分の好きな本はあんまり生徒に紹介してないよ」
驚いて玉木くんを見ると、鮮やかに微笑まれた。
目立つ程の美形ではないけれど、なかなか均整がとれている。
下級生にモテてたのを思い出す。
穏やかで、余裕があって…「憧れの先輩」そのものなんだろう。
派手なタイプではないけれど、年に似つかわしくない落ち着きのある人だ。
玉木くんに、隠し事なんて出来ないような気がした。
私が言葉をなくすと、料理に視線を落として話し出した。
「ちょっと潔癖で…自分の好きな作品を、共有したがらないよね」
確かに、スキな本は、その良さをわかってくれそうな人にしかすすめたくない。
「妬けるな」
そういった彼に、思わず笑ってしまった。
だって、とても楽しそう。
「そんな嬉しそうにいわれても」
心は跳ねない。
そういえば、雷が怖くてそれどころじゃなかったけど…顔を挟むようにして、耳をおおってくれだけど、緊張とかはしなくて、逆に安心した。
玉木くんといると、今でも落ち着く。
この仕事に初めてついたときも、すごく助けられた。
3年生だったし、読書家だったので、校内のことも図書室のこともよく知っていたから。
何を聞いても穏やかに答えてくれたので、頼りにしていた。
その時、篠原くんは1年生だったのか…
そう思うと、指がまた熱を持つ。
「あの子の話はもういいから…最近何か面白い本読んだ?」
ぎこちない、会話の切り替え。
それでも、玉木くんは付き合って、本のタイトルをいくつか挙げてくれた。
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