私が月になる

琴音

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37. 恋人はエスパー

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カイが医大生のわりに勉強をしないのを不思議に思ったことがある。
家で課題のレポートを書いてるのは見たことがあるが、普段はゲーム三昧で学業に専念してる医大生の姿とはかけ離れている。
本棚も専門書が数冊並んでいるだけで心配になるほどだ。
「勉強しないで成績がいいって、カイって天才なの」
「エスパー」
「えっ、ど、どんなの、超能力者なの?」
「フォトグラフィックメモリー、たぶん、それ」
「あ、知ってる。ドラマでやってた。画像で記憶しちゃうやつでしょ」
「一瞬で記憶しちゃうとか、あんなに凄くはない。ヤマが当たれば90点くらいは楽勝ってとこかな。あとトランプの神経衰弱は面白くない、1回捲れば表に見えちゃうから」
「じゃあスプーンとか曲げられるの?」
「それは試したことがない」
「ねぇねぇ、詳しく聞きたい。どんな感じなの、なんか気合入れたりするの?それとも おまじないとか?」
「普通にここからここまでを覚えようとして、例えば教科書だったら蛍光ペンで要点を色付けするの。記憶を再現するときにカラーで出てくるから、俺の場合は色が大事かな。たまに線の細い太いまで思い出すから、画像で記憶してるって自覚するんだ。時々、デジャヴってときは本とかで見たりしてるのを無意識にすり込んでるんだと思う。見ただけで全部覚えちゃうとかじゃないけど、ほかの人よりは記憶力がいいかな」
「ふーん、カイにとっては普通の感覚なんだね、やっぱエスパーじゃん。それ誰にも言ってないんだよね」
「文献で『アスペルガー症候群』の人に多い才能だってあったから、ちょっとねって思った。それに集中し過ぎると疲れるから、ここぞというとき以外に使いたくない」
「そっか、じゃあ私も秘密にしとこ」
こんな身近に超能力を使える人がいたなんてビックリだよ。
なんか凡人ではないと思っていたが、想像の上をいくカミングアウトだった。
私の言った言葉とかも、本人以上に覚えているのも納得である。
これからは適当なことは安易に言えないと肝に命じました。

その夜に見た夢は、魔法使いが活躍するファンタジーだった。
善行した私に黒マントの魔術師が褒美をくれるようだ。
「願いを一つだけ叶えてあげよう」
「私を若返らせてください」
「いくつが希望なのかね」
「18歳の美少女で」
「願いは一つだけだ、18歳か美少女か、どっちかを選びなさい」
私は迷っていた。
たとえ18歳になっても、顔が今のままでは不釣り合いも甚だしい。
と、いうより不気味だ。
美少女になっても、少女というくらいだから10歳かもしれない。
そうなるとカイのストライクゾーンから外れてしまう。
いわゆる究極の選択である。
良く考えろ。カイは今の私の顔を選んだのだから、やっぱ18歳の若さだろう。
年の差を引け目に感じることもなく、胸に飛び込んでいけるのは何ものにも代えがたい特権だ。
「はい、時間切れです」
「えっ、時間制限があるなんて聞いてません。18歳で、若く、若くしてくださ・・・」
手を高く差し出したところで目が覚めた。
「うなされてたよ、大丈夫」
カイが心配そうに顔を覗き込んでいる。
「うん・・・残念だけどしょうがない。魔法ってとけちゃうと厄介だから良かったんだよね」
「???」カイのキョトン顔が朝から見れて超ラッキーです。

いえいえ、超能力者と魔術師は別物ですよ。
ちゃんと理解できてるのでしょうか、心配です。

エスパーになりたい<レベル98>

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