階段から転げ落ちたら知らないゲームの中だったので勇者を倒してサッサと帰りたいと思います。

ステータス。

　人の事は悪く言えないし、言っちゃいけない。むしろ大目に見てあげる海のように広い寛容な心を常に持ちたいものだ。

　人の振り見て我が振り直せ。昔の人は上手い事を言う。

　私も5歳の頃お母さんに鰻を買って来てって言われて、山に兎を狩りに行ったものの結局見つからずそのまま遭難してしまったり、待ち合わせの時間を10時と20時を聞き間違えて、約束の時間を10時間過ぎてたり。

　こんなミスは枚挙にいとわない。

　だからこそ、私は人を許せる優しい人になりたい。

　みんなもケアレスミスは気を付けようね！

　ムポポペサと恋☆どす。

　この二つはとても似てるからね。

　良い子の皆は間違えちゃ駄目だゾ☆


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　「もしかして、あのボンクラ店員が商品の渡し間違えをしなければ私は『恋☆どす』の世界へ行けたって事なの？　何の為にあのボンクラ店員はメガネをかけてたの？　伊達メガネにしても許せない。私にもメガネにも謝罪してほしい」

　「なんかムポポペサに来た事よりショックを受けていないかい？」

　「そりゃあ、そうでしょ。余計に帰りたくなったよ。しかも転移してしまったのは確定してしまったとして、私は階段の下で気絶したままって事？　最悪だよ！　絶対に白目ひん剥いてるよ」

　「朱里様。これは昔話になりますが、こちらの世界で使命を果たし、帰られた転移者の方々は転移する瞬間まで戻り、その人生を全うしたらしいですよ」

　「そうだよ、朱里。これ有名な話しだよ」

　「そうなんだ。杞憂は一つ晴れたね。でもやっぱり帰れない事もそうだけど、今は『恋☆どす』の世界に行けたかも知れなかったというこの現実が辛い。あまりにも辛すぎるよ」

　「朱里様、使命を果たした救世主様はなんでも一つだけ願いを叶えられますよ。これは転生者の特権です」

　……まじ？

　「さっさと勇者連れてこい！！」

　（あっ悪魔！！）

　「村長が魔除けのお守りつけながらも、天に召されてしまいそうだから溢れ出る殺気を抑えてもらっていいかな？」
　
　あ、村長が気絶した。

　「ごめんごめん。ねえ、さっき兎倒した後にスキルポイントが何とかって言ってたけど、あれどういう意味？」

　「自分の伸ばしたい特技を成長させるって感じだね。自分の得意技や特技にポイント入れちゃう人もいるし、均等に器用貧乏の人もいるよ。まあ好みだね」

　「ふーん。勇者から魔物を護るって事は戦い系がいいのかな？」

　「朱里、もう一回ステータス見せてもらってもいいかい」


　「はい、どうぞ。お？　よく見るとなんか色々書いてあるね」

　「みせてもらうね」

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　　　　　　　　　レベル12　女　朱里

　　　　　　　「勇者を倒し魔物を救う者」

　　　　　　スキル　空手　威圧
　　　　　　　　　　剛力
　　　　　　　　　　剣道　瞬足
　
　　　　　　加護　　スキルポイント取得（特大）
　　　　　　　　　　経験値取得　　　　（特大）
　　　　　　　　　　魔力増幅　　　　　（特大）
　　　
　　　　　　　残りスキルポイント　　120

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　「色々ついてるね。なんか凄そうだけど、空手とかは元々やってたやつだよ」

　「流石は救世主って感じのステータスだね。こんなの中々お目にかかれないよ」

　「見事な程に戦闘に特化していますね。何よりレベルが低いのがびっくりです。伸び代だらけって事ですから」

　「勇者を倒さなきゃいけないから、って事なのかな？　でもさ、ここってムポポペサ大陸なんでしょ？　タイトルに救っても救わなくてもってあるんだよね」

　「それは朱里が勇者を倒して元の世界に戻るのも、倒さないでここで暮らすのも自由って事じゃない？」

　「自由、ね。とりあえずその勇者を倒しに行こうかな」

　「どこに行くの？」

　「知らないよ？　知らないの？」

　「知らないよ」

　……思ったより面倒臭そうだな。

　「じゃあ情報収集かな？　ゲームの基本でしょ。どっかに大きな街ないの？　酒場とか、ギルドとか」

　「もちろんあるよ！　それと朱里、君にお願いがあるんだ」

　「何？」

　「僕も連れて行ってくれない？　こんな小さな村という名の葉っぱと枝で出来た掘立て小屋の集合住宅にいたくないんだ！　広い世界を旅してみたいんだ！」

　村じゃない自覚あったんだ。

　「別にいいよ、逆に助かるし。みんなに挨拶だけしてくれば？」

　「分かった！　ちょっと待っててね！」

　本当に面倒臭そうだな。しかしあの忌々しい店員め！今思い出すだけでもイライラしてくる。よくも私の千載一遇のチャンスを！勇者を倒した暁には奴の鼻の穴を4つにしてやる。

　（まっ魔物！！）

　「あ、村長ごめん」

　昇天しかけてた村長がまた気絶した。

　私がこれ以上村に留まってたら村長の心臓が止まってしまいそうだ。

　心臓あんのか知らないけど。