階段から転げ落ちたら知らないゲームの中だったので勇者を倒してサッサと帰りたいと思います。

uma

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ハプニング。

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 あのね、本当はね、面と向かって改めてこんな事言うのはすっごく恥ずかしいの。だけど勇気を振り絞って言うね?

 じつは私ってね、稲穂とか、皮き付泥付きの生野菜とか、鱗のついたままの魚とか、その他諸々を未調理のままでバリバリモリモリと食べる事は出来ないの。本当にごめんなさい。ぺろ。

 なんていう風にスカートひるがえしながら可愛く言えば良かったのかな?

 「ん?なんか言った?」

 「なにも言ってないよ。流石の私もお腹が空いてきたとは言えこのままじゃ食べれないよ。でもさ、ここの食材って私のいた所と全然変わらないね。少し安心したよ」

 「昔、ムポポペサに転移した人間がスキルで食材を沢山増やしたらしいよ。その人は様々な食文化をムポポペサに持ち込んだんだ。食の神様みたいな存在だよ」

 「そんな人がいたんだ。じゃあ調理器具とかもあるかな? 台所とかないの?」

 「あるよ。食材をそのまま飲み込めない系の嚥下機能が弱い人用に。あそこの小屋に料理好きな珍しい魔物が住んでいるんだ。普通の魔物は生でバリバリモリモリだよ」

 食材そのまま飲み込めない系ってなんだそれ。飲み込める系の人を逆に見てみたいよ。カレーは飲み物系の人から派生した亜種か新種か?だとしても大根丸呑みは人じゃないよ。

 「じゃあ借りに行こうかな。適当に食材貰って行ってもいいよね」

 「僕も手伝うよ。しかし朱里が料理作れるなんて意外だね。対戦相手を料理するとかの方が似合ってるよ」

 「そう? よく作ってたよ。みんな感激して美味しいって言ってくれるよ。あとお前は後で料理してやる」

 「僕は食べても美味しく無いよ」

 とりあえず持てるだけ持ってこうかな。スキルで食材増やしたって事は調味料とかもあるはずだよね。

 「やばい、結構重いな。持っていけるかな?」

 「朱里、僕の口の中に入れれば持っていけるよ。あーん」

 ……え?

 え、普通に嫌なんだけど。コイツの口に入れた食材を取り出して料理するの?

 「あんた口の中綺麗なの? そのゲル状の中に食材を突っ込むのちょっと抵抗あるんだけど」

 「大丈夫だよ、口の中は無菌だから。体の中はアイテムボックスになっているんだ。僕のご先祖様はその昔勇者に無理やり連れ回されていいように使われたんだ」

 「大変だったんだね、あんたのご先祖様は。じゃあいいか。ここにあるの全部入れるよ」

 おお、すごい体の容量以上にどんどん入ってる。

 「はい、取り込んだよ。じゃあ出発だね」

 抵抗感さえ無くせばこれは便利だな。連れて帰って鞄の中にクリスを入れといたら買い物が楽そう。

 「あそこの小屋だよね? じゃあ行ってみようか」

 「うん」

 しかし、こうやって歩いてると本当に綺麗な場所だよね。手入れされてるのはスライム達がやっているのかな?

 話してる感じもスライム達は全然悪いモンスターに見えないし。あ、でもあの子憎たらしい兎みたいな奴もいるのか。

 「ねえ。勇者って奴はムポポペサに来て魔物倒すって言ってるけどさ。悪い奴が沢山いるの? それとも魔王的なポジションの奴が悪い奴なの?」

 「魔王様はすごい優しいおじいちゃんだよ。僕達は平和に暮らしてるだけなんだけどね。あの兎みたいな奴だって滅多にいないよ。それに人間の中にも悪いやつはいるだろう?」

 まあ、いるけど。

 「じゃあ勇者はこの世界に来て、強くなって、魔物倒して、願い事叶えて、みたいな感じかな? ゲームってそんな感じだしね」

 「ゲームっていうのはよく分からないけど、そんな感じだとしたら迷惑な話だよ。だから是非とも朱里には勇者にお灸をすえてもらいたいね。さあ着いたよ」

 なんか普通の家だな。スライム達が葉っぱで暮らしてるんだからここの人はもしかして。

 「ここに住んでる人ってちゃんとしてる人? それともケンタさんパターンなの?」

 「ケンタさん含め、僕達がちゃんとしてないみたいじゃないか。ここに住んでいる魔物には前に村で一緒に暮らすように誘ったんだけどね。どうやら僕達の村には手狭だったみたいで自分でこの立派な小屋を作ったのさ」

 「そうなんだ。とりあえずノックするか」

 「すいませーん。台所お借りしに来ました。どなたかいらっしゃいますか?」

 あれ?返事がないな?

 「すいませーん!」

 いないのかな?
 
 「えい。あ、開いてる」

 「いきなり開けるなんて。朱里って大胆だね」

 「だってしょうがないよ。お腹減ったもん」

 「きゃー!」

 「あ、ご、ごめんなさい!!」

 びっくりしてとびら閉めちゃった。

 ていうか、え?何今の?

 手足長っ!細っ!髪サラサラの金髪だし!女スパイみたいに妖艶だ!

 「どうしたんだい? 顔が赤いよ」

 「なにあれ!? 身体にタオル巻いて、金髪のまつ毛が長い色っぽいモデルみたいな妖艶な豚がお風呂から出てきたよ!」

 「彼女は豚族のシンディだよ! お風呂入ってたんだね。やっぱり勝手に人の家のドア開けるのはダメだね」

 あれが豚だと!?

 豚でもあんなに綺麗になれるなら、私もまだまだ希望が持てそうだよ。
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