階段から転げ落ちたら知らないゲームの中だったので勇者を倒してサッサと帰りたいと思います。

uma

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炎のクッキングファイター。

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 転生したら豚でした!~八頭身のナイスバディで潜入捜査もお手の物!実は敵のイケメンにモテすぎちゃって困ってます!?~

 そんなタイトルの漫画に出てきそうな豚が裸でお風呂から出て来ました。今後、豚の家の扉は勝手に開けない様に気をつけたいと思います。


——————


 
 「ごめんなさい! 私ったら勝手に開けてしまって誠に申し訳ございません」

 「私こそ大声出してごめんなさい。驚かせてしまったわね」

 やさしい!

 「それで、何の用かしら?」

 声キレイ!

 「あの? 聞こえてます?」

 付き合ってください!

 「おーい、帰ってこーい」

 はっ!あまりにも御豚様の御姿が御美しすぎてなんか字面が御御御付けみたいな感じになっちゃったけどすごいキレイ!

 「はじめまして。私、朱里って言います。本当にすいませんでした。実は台所をお借りしたくて馳せ参じた次第にございます」

 (朱里の言葉遣いがおかしくなってる。こりゃあシンディさんのチャームにやられちゃってるね)

 「台所を?……貴方、私の台所で料理を?」

 あれ、なんだろう?怒ってる?

 「はい。すいません。急に台所を貸せなんて失礼ですよね」

 「謝る事なんて無いわ。ただ一つ条件があるの。私は料理をする事に対して命を賭けてるわ。この身を削って、汗水を垂らして、料理をしているの」

 「そうなんだ朱里。面白そうだから言わなかったけど、シンディさんの台所を借りるには、ある条件が必要なんだ」

 本当にこのスライムは。後でお前を料理してやろうか?

 「条件ですか? 一体、私はどうすれば」

 「私はその腕を認めた相手にしか台所は貸さないわ! とどのつまり勝負よ!」

 まじか、これは予想外だ。しかも身を削って、汗水垂らして料理作ってるだって?そんな人に私は勝てるの?

 「あの私、素人に毛が生えたようなものなんで、お手柔らかにお願いします」

 「朱里さん。勝負が始まる前からそんな事言ってたらダメよ。やるからには本気でやってもらうわ」

 シンディさん、なんて真剣で真っ直ぐな瞳をしているんだろう。こんな人にナヨナヨした態度出しちゃダメだ!これは試合よ!武術の試合と同じなのよ!

 「わかりました! 全力でやらせて頂きます!!」

 「いい返事を聞けて嬉しいわ。まずは私の料理を食べてもらうわ! 待ってなさい!」

 「はい!」

 「いやー、楽しみだなー」

 ちっ、お気楽スライムが。

 シンディさん、まずはお湯を沸かしてるね。何か茹でるのか?きっとパスタとかだな。お?湯切りを始めた。なんて手慣れた手つき!あれは正に熟練の職人そのもの!

 くっ、やっぱり毛が生えた素人の私には無理な勝負だったの?

 あれ、シンディさんどっか行ったぞ?

 お風呂?なんでラーメン丼持ってったの?

 「へい! お待ち! 豚骨ラーメンだよ!」

 「シンディさんの十八番のラーメンだ! お、おいしい!」

 身削って汗水垂らすって豚骨スープかよ!シンディさんの豚骨スープって自らの出汁を!?

 さっきのは風呂上がりじゃなくて、寸胴上がりって事!?風呂場でグツグツ寸胴入ってたの!?

 いくらシンディさんが超絶美人とはいえ食べたくない!クリス良く食べれるな。こいつ味覚もなにも無いんじゃないか?

 いや!待って!

 この鼻腔と食欲をくすぐるこの匂いは!私が日本で食べていた天上天下超一品のスープと匂いと同じっ!

 ああ、だめ!抗えない!

 「折角だから食べようかな! いただきまーす!」

  !!

 「て、天才料理人や。シンディはん。あんた天才料理人や」

 「どうしたの? なんかさっきから変だよ。チャームが変な所に入っちゃったかな?かっこ

 「ふふ。気に入ってもらえて嬉しいわ。さあ、朱里さん。貴方の番よ! その実力見せてもらおうじゃないの」

 くっ!私は勝てるの?無謀な勝負を挑んでしまったのでは!?

 いいえ、朱里。自分を……信じるのよ!

 「台所、お借りします!」

 えーと。まずこの鍋に人参、大根入れて。皮が栄養あるって言うよね?このまま突っ込んでと。

 稲穂ってお米?だよね?じゃあこのまま茹でてパエリアにしよう。魚は焼けばとりあえず美味しいよね?鱗ついてても、このまま良く焼けばいいし、骨も食べれるから一石二鳥だね。

 塩は井太利亜の海様が土俵に撒く位の量でいいよね?確か鷲掴み3回位?砂糖も同じぐらいかな?あと料理ってお酒入れるよね?

 ええい、しゃらくさい!もうこの瓶全部入れるか!仕上げにお酢とソースとナンプラーとコーレーグースでめんそーれだよ!

 「へい! おまちどう!」

 「僕、今日親戚のお通夜だったから先に戻ってるね」

 「大変じゃん。後で小分けにして村に持ってくね」

 「……いや。やっぱり折角だからここで食べるようかな」

 (村に被害が出るくらいなら僕の命を捧げよう)

 「え? なんか言った?」

 「なにも」

 「朱里さん、その腕前この舌で確かめてさせてもらうわ!」

 ぱくぱく、ばりばり、じゃりじゃり、ぼりぼり、ごりごり、がりがり。

 (本当に?それ食べれるの?死んじゃわない?そこら辺の土と砂を茹でて飲んだ方がまだマシじゃないの?)

 「シンディさん、遠慮なんていりません! 思ったままの感想をお願いします」

 (台所を借りるのはまた次の機会かな)

 「朱里さん。とても繊細でいて相手を思いやるこの料理。感動したわ。台所を使ってちょうだい」

 (正気なの?シンディさん?これ誰でも借りれるじゃん)

 「やったー! シンディさんありがとうございます!」

 「ふふ。よかったらこれから一緒に新作作らない?」

 「喜んで!」

 こうして私はシンディさんの台所を使わせてもらえるようになったんだ!



 ※豚は基本なんでも食べます。
 ※全ての豚がそうであるとは限りません。
 ※この話はフィクションです。
 
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