階段から転げ落ちたら知らないゲームの中だったので勇者を倒してサッサと帰りたいと思います。

uma

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さよなら河童。

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 私は走った。ひたすら真っ直ぐに。途中、襲いかかってくる魔物を吹き飛ばしながら。ちょいちょいレベルも上がったのでなんだか得した気分だ。

 流石の私も一日中走り続けるのは飽きるので、途中の休憩や夜を過ごす時はクリスの部屋に入る。最初は抵抗しかなかったけど、思った以上に中は快適で冷蔵庫やお風呂まで完備していた。

 何故かこの世界って電化製品があったり、ヌーがいたりと私がいた世界と共通点が多い。なんにせよ野宿せずに一晩を過ごせる事に関しては、クリスに感謝しなければいけない。

 話によると、河童の故郷には一週間で着くとのことだったが、私は三日で大きな森に辿り着く事が出来た。

 「あれ? 意外に早く着いちゃったよ。ここじゃない?」

 「え! もう着いたのかい? 今からリルちゃんと二人で海外ドラマをぶっ通しで見ようとしてたのになんて事だ!」

 「なんて事だ、じゃねえよ。早く出てこい馬鹿スライム」

 クリスは鞄から飛び出ると口を大きく広げた。中からリルちゃんが出てくる。

 「朱里ちゃんお疲れ様です、ありがとう。こんなに早く着くなんて流石だね」

 「どういたしまして、お姫様。快適な移動が出来たようで何よりだよ」

 「河童さんの故郷に着いたって、ここ森じゃないか。河童って森に生息してるの? 普通は清流とかなんじゃない?」

 「だって看板が出てるじゃん。ほら、あそこ」

 【河童の森へようこそ! 君は幸せを運ぶ呼ぶパッションピンクの河童を、見つけられるかな!?※ピンクの河童はアルビノの河童です。とても繊細ですので、遠くから見守ってあげてね】

 「ねえ、クリスちゃん。パッションピンクの河童ってさ河童さんの事じゃない? 遠くから見守るどころか、遠くに連れて行かれちゃったけど」

 「少なくとも、ヌーに明後日の方向に連れて行かれたピンクの河童さんには会えそうに無いね」

 「あいつ、私の弟子になって直ぐにヌーと修行出来るなんて。幸せを運ぶだけじゃなく、遂に自分で幸せ掴んだんだね」

 「河童さんに会えないのは寂しいけど、それが河童さんの幸せなら、私達は止める事は出来ないんだね」

 リルリルだって子供じゃないんだ。きっと分かってる。もう、アイツの生臭い匂いは嗅げないという事は。

 こうして私達は河童と永遠の別れを告げた。

 バイバイ。河童、アンタと過ごした日々忘れない。忘れるほどの思い出もないけど。

 「さあ、湿っぽいのはこれでおしまい! リルリルのお父さんを助ける解呪の品を探しましょう」

 「あれ? 看板の裏になんか書いてあるよ。ねぇ、朱里ちゃんこれって」

 【国宝、解呪の皿はこちら。河童の祠に展示中】

 「み、みつけたー! てか国宝!? これって持ち出せないんじゃない?」

 「じゃあ使うとしたらリルリルのお父さんをここまで連れて来なきゃいけないって事!?」

 「それどころか、使わせてもらえるかも分からないよ」

 「そ、そんな」

 こんな時、河童がいたら口利きしてもらえたかもしれないのに。いや、もう永遠の別れを告げたんだ。無い物ねだりは良くないね。

 「とりあえず一度現物を見に行こうか」

 「私、理由を話してお願いしてみる。もしかしたら分かってくれるかも知れないし」

 「そうだよ。諦めるのはまだ早いよ。河童は臭くて、ヌルヌルしてて、ピンク色で目がチカチカするけど、良い奴だったから同種族の河童も話が通じやすいかも知れないし」

 まさか解呪の品が国宝だったなんて予想外だった。あの河童、肝心な事を伝えないでリルリルをガッカリさせやがって。生きてたら皿割ってやる。

 看板の指定する方向に私達は歩き始めた。河童の森、という位だから河童の一匹や二匹遭遇してもおかしくないと思うんだけど、どこにも河童は見当たらなかった。

 しかし途中には屋台が出ていたり、観光客が学生らしい子達がチラホラいたりと意外と賑わいを見せている。

 ここってもしかして観光地なのかな?

 だとしたらなんで河童はいないんだろう?冬眠でもしてるのだろうか?なんて事を考えてると、目の前に小さな祠が見えて来た。

 「見て! あの祠じゃないかい? きゅうりが大量に祀られているよ」

 「ん? ちょっと待ってまた看板が」

 【只今、改修中の為、お休みとさせて頂きます】

 「そ、そんな」

 「ここまで管理されている森なんだ。関係者の河童が必ずいるはずだよ。しかし問題は、その河童が見当たらないという事だね」 

 その時だった。涼やかな三味線の音色が鳴り響いた。優しくもあり、妖しくもあるその響きはたちまち辺りを包み込む。

 「なんだ!? この音色は」

 「アンタ達、観光客かい? 随分と祠に執着しているようだけど」

 私達がその声に驚き振り向くと、そこには全身銀色の色っぽい河童が三味線を持ちながら木に寄りかかっていた。
 
 ……なんでシンディさんといい、この銀色の河童といい、この世界の女性は皆セクシーなのだろう。そして河童は皆、このような個性的な色をしてるのだろうか。

 ムポポペサの生活には慣れたつもりだったが、まだまだ驚かされる事は多そうだ。
 
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