階段から転げ落ちたら知らないゲームの中だったので勇者を倒してサッサと帰りたいと思います。

uma

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噂。

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 やあ、河童だ。

 幸せ運ぶパッションピンクの河童だ。
 
 俺は今、窮地に立たされている。何を隠そうヌーだ。さっきからこの足音を聞いていてご存じかとは思うのだが、大群のヌーに俺は運ばれている。

 パンツがツノに捻れて絡まってぜんっぜん取れないんだ。

 折師匠が修行をつけてくれるというのに、この有様さ。いくら俺が牛を川に引きずり込む河童力があっても、流石にヌーを百万頭相手にするのは骨が折れるし、治った骨も折れそうだ。

 牛もヌーも似たようなもんだと思ったがこいつらったら、ずーーーーーっと走ってる。

 何なの?あの沈む夕陽でも追いかけてんの?夢や希望でも追いかけてるの?

 いいよな、若いって。何をやるにも一生懸命だもんな。猪突猛進、いやこれはヌ突猛進か。

 でも気をつけた方がいい。何事も周りが見えなくなったら危ないぜ。

 こんなに目に付くパッションピンクの河童がツノにぶら下がってたら気付くのが普通だよ?もしかしてピンクに興奮してんの?闘牛じゃ、いや闘ヌーじゃないんだからさ。

 はっ!

 まさか!これはヌーのように立ち止まらずについてこ来いという師匠の差し金!?

 よ、よーし。やってやる!ヌー達があの地平線に着くよりも速くな!
 

        —————————


 「ムポポペサの魔物は体の色が派手で、セクシーじゃなきゃいけない理由で、もももも、わぁくしょーーん!」

 「祠が朱里のくしゃみでぶっ飛んだ!」

 「すごい爆風! くしゃみで体が浮いたのは初めてだよ」

 うー、むずむずするよ。

 「急に鼻がむずむずした、ごめん。誰か私の噂でもしたのか? 昔から噂話に鼻腔が敏感なんだよ」

 「ちょっと待って、あれって解呪の皿じゃない? 朱里のくしゃみで祠が吹き飛んでも、結界に守られて無事みたいだ。今のうちに、ちょっくら拝借してしまおうよ」

 「でも国宝だし、勝手に持って行っていいのかな?」

 「それは私も気が引けるな」

 「考えてごらんよ。明日の営業時間になったら、どっちみち受付の河童に怒られそうじゃない? わざとではないにせよね」

 それにしてもだめだろ。こいつは本当に悪いスライムだな。……あれ?そういえば銀色の河童さんどこ行ったんだ?

 「あ! 銀の河童さんがあんなに遠くで倒れてる。もしかして、くしゃみが直撃したんじゃ」

 「河童という種族は基本的についていないね。ほら起き上がってこっち近づいてきたよ。朱里、ちゃんと謝らないと」

 やっちまった。悪気は無いにせよ、申し訳ない事しちゃったな。

 「ごめんなさい! 銀の河童さん」

 「謝罪はいらないよ。それより聞きたいことがあるんだ」

 「聞きたい事?」

 銀の河童はフラッフラになりながらも真剣な眼差しだ。

 「あなた達ルシアの知り合いかい? 三人から香ってくるんだ。雨でびしょ濡れになった汗まみれの作業服をらそのまま箪笥に閉まって生乾きになったような臭いが。私には分かる、間違いないよ」

 「ルシアって河童は知らないけど、お願いがあってここに来たんだよ。海の上を全身打撲になりながら猛スピードで吹っ飛んだ河童なら知ってるけどね」

 「そんなんです。ルシアって河童さんは知らないけど、その解呪の皿を少しの間お借りしたいんです! ヌーの大群に攫われた河童なら知ってますけど」

 「そんな名前の河童は知らないけど、はは、皿の水を零して、ふふふ。すぐに痙攣する河童なら、あはははは。知ってますけど、はははははははは」

 「全身打撲で海を跳ねて行き、ヌーの大群に攫われて、お皿の水を零して痙攣する河童ですって!? その河童はピンク色じゃないかい? その河童がルシアよ。彼はいまどこに?」

 (河童さんはパッションピンクだからな。ピンクの河童は知らないな)

 「僕はピンクの河童は知らないよ」

 (河童さんってパッションピンクだよね?ピンクなんてもの珍しい色の河童なんてこの世にいるのかな?)

 「私もピンクの河童は見た事ないです」

 ピンクの河童?この世界に河童は一体何匹いるんだ?あんなのがウジャウジャいるなんてすごい世界だよ本当に。

 しかしあの光景を思い出すとまた笑いが込み上げてくるよ。ふふ。

 「あはは! あはははははは、ぶわっくしょーーーーーい」

 「きゃ、きゃーーーーーーー」

 ……いけね。

 「銀色の河童さんのスカートがめくれて飛んでっちゃった! 朱里ちゃん風邪でも引いたの? 殺人くしゃみが止まらないなんて」

 (はは。馬鹿が風邪引くなんて、そんな馬鹿な)

 河童は私のくしゃみで再び吹き飛び草むらへと消えていった。  

 すぐさま救出に向かいましたが、二度に渡るくしゃみの直撃は流石の色っぽい河童も少し怒っている様子でした。
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