23 / 49
噂。
しおりを挟む
やあ、河童だ。
幸せ運ぶパッションピンクの河童だ。
俺は今、窮地に立たされている。何を隠そうヌーだ。さっきからこの足音を聞いていてご存じかとは思うのだが、大群のヌーに俺は運ばれている。
パンツがツノに捻れて絡まってぜんっぜん取れないんだ。
折師匠が修行をつけてくれるというのに、この有様さ。いくら俺が牛を川に引きずり込む河童力があっても、流石にヌーを百万頭相手にするのは骨が折れるし、治った骨も折れそうだ。
牛もヌーも似たようなもんだと思ったがこいつらったら、ずーーーーーっと走ってる。
何なの?あの沈む夕陽でも追いかけてんの?夢や希望でも追いかけてるの?
いいよな、若いって。何をやるにも一生懸命だもんな。猪突猛進、いやこれはヌ突猛進か。
でも気をつけた方がいい。何事も周りが見えなくなったら危ないぜ。
こんなに目に付くパッションピンクの河童がツノにぶら下がってたら気付くのが普通だよ?もしかしてピンクに興奮してんの?闘牛じゃ、いや闘ヌーじゃないんだからさ。
はっ!
まさか!これはヌーのように立ち止まらずについてこ来いという師匠の差し金!?
よ、よーし。やってやる!ヌー達があの地平線に着くよりも速くな!
—————————
「ムポポペサの魔物は体の色が派手で、セクシーじゃなきゃいけない理由で、もももも、わぁくしょーーん!」
「祠が朱里のくしゃみでぶっ飛んだ!」
「すごい爆風! くしゃみで体が浮いたのは初めてだよ」
うー、むずむずするよ。
「急に鼻がむずむずした、ごめん。誰か私の噂でもしたのか? 昔から噂話に鼻腔が敏感なんだよ」
「ちょっと待って、あれって解呪の皿じゃない? 朱里のくしゃみで祠が吹き飛んでも、結界に守られて無事みたいだ。今のうちに、ちょっくら拝借してしまおうよ」
「でも国宝だし、勝手に持って行っていいのかな?」
「それは私も気が引けるな」
「考えてごらんよ。明日の営業時間になったら、どっちみち受付の河童に怒られそうじゃない? わざとではないにせよね」
それにしてもだめだろ。こいつは本当に悪いスライムだな。……あれ?そういえば銀色の河童さんどこ行ったんだ?
「あ! 銀の河童さんがあんなに遠くで倒れてる。もしかして、くしゃみが直撃したんじゃ」
「河童という種族は基本的についていないね。ほら起き上がってこっち近づいてきたよ。朱里、ちゃんと謝らないと」
やっちまった。悪気は無いにせよ、申し訳ない事しちゃったな。
「ごめんなさい! 銀の河童さん」
「謝罪はいらないよ。それより聞きたいことがあるんだ」
「聞きたい事?」
銀の河童はフラッフラになりながらも真剣な眼差しだ。
「あなた達ルシアの知り合いかい? 三人から香ってくるんだ。雨でびしょ濡れになった汗まみれの作業服をらそのまま箪笥に閉まって生乾きになったような臭いが。私には分かる、間違いないよ」
「ルシアって河童は知らないけど、お願いがあってここに来たんだよ。海の上を全身打撲になりながら猛スピードで吹っ飛んだ河童なら知ってるけどね」
「そんなんです。ルシアって河童さんは知らないけど、その解呪の皿を少しの間お借りしたいんです! ヌーの大群に攫われた河童なら知ってますけど」
「そんな名前の河童は知らないけど、はは、皿の水を零して、ふふふ。すぐに痙攣する河童なら、あはははは。知ってますけど、はははははははは」
「全身打撲で海を跳ねて行き、ヌーの大群に攫われて、お皿の水を零して痙攣する河童ですって!? その河童はピンク色じゃないかい? その河童がルシアよ。彼はいまどこに?」
(河童さんはパッションピンクだからな。ピンクの河童は知らないな)
「僕はピンクの河童は知らないよ」
(河童さんってパッションピンクだよね?ピンクなんてもの珍しい色の河童なんてこの世にいるのかな?)
「私もピンクの河童は見た事ないです」
ピンクの河童?この世界に河童は一体何匹いるんだ?あんなのがウジャウジャいるなんてすごい世界だよ本当に。
しかしあの光景を思い出すとまた笑いが込み上げてくるよ。ふふ。
「あはは! あはははははは、ぶわっくしょーーーーーい」
「きゃ、きゃーーーーーーー」
……いけね。
「銀色の河童さんのスカートがめくれて飛んでっちゃった! 朱里ちゃん風邪でも引いたの? 殺人くしゃみが止まらないなんて」
(はは。馬鹿が風邪引くなんて、そんな馬鹿な)
河童は私のくしゃみで再び吹き飛び草むらへと消えていった。
すぐさま救出に向かいましたが、二度に渡るくしゃみの直撃は流石の色っぽい河童も少し怒っている様子でした。
幸せ運ぶパッションピンクの河童だ。
俺は今、窮地に立たされている。何を隠そうヌーだ。さっきからこの足音を聞いていてご存じかとは思うのだが、大群のヌーに俺は運ばれている。
パンツがツノに捻れて絡まってぜんっぜん取れないんだ。
折師匠が修行をつけてくれるというのに、この有様さ。いくら俺が牛を川に引きずり込む河童力があっても、流石にヌーを百万頭相手にするのは骨が折れるし、治った骨も折れそうだ。
牛もヌーも似たようなもんだと思ったがこいつらったら、ずーーーーーっと走ってる。
何なの?あの沈む夕陽でも追いかけてんの?夢や希望でも追いかけてるの?
いいよな、若いって。何をやるにも一生懸命だもんな。猪突猛進、いやこれはヌ突猛進か。
でも気をつけた方がいい。何事も周りが見えなくなったら危ないぜ。
こんなに目に付くパッションピンクの河童がツノにぶら下がってたら気付くのが普通だよ?もしかしてピンクに興奮してんの?闘牛じゃ、いや闘ヌーじゃないんだからさ。
はっ!
まさか!これはヌーのように立ち止まらずについてこ来いという師匠の差し金!?
よ、よーし。やってやる!ヌー達があの地平線に着くよりも速くな!
—————————
「ムポポペサの魔物は体の色が派手で、セクシーじゃなきゃいけない理由で、もももも、わぁくしょーーん!」
「祠が朱里のくしゃみでぶっ飛んだ!」
「すごい爆風! くしゃみで体が浮いたのは初めてだよ」
うー、むずむずするよ。
「急に鼻がむずむずした、ごめん。誰か私の噂でもしたのか? 昔から噂話に鼻腔が敏感なんだよ」
「ちょっと待って、あれって解呪の皿じゃない? 朱里のくしゃみで祠が吹き飛んでも、結界に守られて無事みたいだ。今のうちに、ちょっくら拝借してしまおうよ」
「でも国宝だし、勝手に持って行っていいのかな?」
「それは私も気が引けるな」
「考えてごらんよ。明日の営業時間になったら、どっちみち受付の河童に怒られそうじゃない? わざとではないにせよね」
それにしてもだめだろ。こいつは本当に悪いスライムだな。……あれ?そういえば銀色の河童さんどこ行ったんだ?
「あ! 銀の河童さんがあんなに遠くで倒れてる。もしかして、くしゃみが直撃したんじゃ」
「河童という種族は基本的についていないね。ほら起き上がってこっち近づいてきたよ。朱里、ちゃんと謝らないと」
やっちまった。悪気は無いにせよ、申し訳ない事しちゃったな。
「ごめんなさい! 銀の河童さん」
「謝罪はいらないよ。それより聞きたいことがあるんだ」
「聞きたい事?」
銀の河童はフラッフラになりながらも真剣な眼差しだ。
「あなた達ルシアの知り合いかい? 三人から香ってくるんだ。雨でびしょ濡れになった汗まみれの作業服をらそのまま箪笥に閉まって生乾きになったような臭いが。私には分かる、間違いないよ」
「ルシアって河童は知らないけど、お願いがあってここに来たんだよ。海の上を全身打撲になりながら猛スピードで吹っ飛んだ河童なら知ってるけどね」
「そんなんです。ルシアって河童さんは知らないけど、その解呪の皿を少しの間お借りしたいんです! ヌーの大群に攫われた河童なら知ってますけど」
「そんな名前の河童は知らないけど、はは、皿の水を零して、ふふふ。すぐに痙攣する河童なら、あはははは。知ってますけど、はははははははは」
「全身打撲で海を跳ねて行き、ヌーの大群に攫われて、お皿の水を零して痙攣する河童ですって!? その河童はピンク色じゃないかい? その河童がルシアよ。彼はいまどこに?」
(河童さんはパッションピンクだからな。ピンクの河童は知らないな)
「僕はピンクの河童は知らないよ」
(河童さんってパッションピンクだよね?ピンクなんてもの珍しい色の河童なんてこの世にいるのかな?)
「私もピンクの河童は見た事ないです」
ピンクの河童?この世界に河童は一体何匹いるんだ?あんなのがウジャウジャいるなんてすごい世界だよ本当に。
しかしあの光景を思い出すとまた笑いが込み上げてくるよ。ふふ。
「あはは! あはははははは、ぶわっくしょーーーーーい」
「きゃ、きゃーーーーーーー」
……いけね。
「銀色の河童さんのスカートがめくれて飛んでっちゃった! 朱里ちゃん風邪でも引いたの? 殺人くしゃみが止まらないなんて」
(はは。馬鹿が風邪引くなんて、そんな馬鹿な)
河童は私のくしゃみで再び吹き飛び草むらへと消えていった。
すぐさま救出に向かいましたが、二度に渡るくしゃみの直撃は流石の色っぽい河童も少し怒っている様子でした。
0
あなたにおすすめの小説
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる