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魔法少女リルちゃん。
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皆様、お元気ですか?心配事があって不安一杯のリルです。
まさかわたしが魔王様の側近に選ばれると思っていなかったのですが、朱里ちゃんが魔王になるのならと、精一杯頑張りました。
魔王はまだ決まってません。じゃあ誰がなるのかって言ったら、それはもう朱里ちゃんに決まってます。
でも少しだけ心配に思う事もあるのです。
それは魔術。
例えば「恋☆どす」のキャラを幻術で朱里ちゃんの前に出すとします。その瞬間、朱里ちゃんは隙だらけになる事でしょう。
しかし鋼の耐久力を持つ朱里ちゃんが相手ともなると、それだけで負けるとも考えにくいです。
でも違うんです。魔術は他にも沢山あるんです。
纏わりつく炎や、絶え間なく降り注ぐ雷。皮膚を溶かす猛毒に、凍りついて解けない氷。
簡単に上げただけでも、これだけ出てきます。
もちろんだからと言って、絶対に朱里ちゃんが勝てないという訳でも無いのは分かってます。
だけど、大怪我をしてしまうかも知れません。そんなの見たくありません。
だから、私が練習相手に相手になります。
お父さんと、お母さんしか知らないわたしの力。
大切な人を守る時にその力を使いなさい、と言われてきました。
今がその時、わたしにとって今がその時です。
1つだけ引っかかるのがクリスちゃんがいること。
はあ。それだけが……ほんっとに嫌。
—————————
「じゃあ朱里ちゃん。いきなり魔術を出すと驚くだろうから、まずは簡単なものから見せるね。えい!」
「おお。すごいね」
「指先から青い炎が出てる。すごいキレイ」
「次はどうしようかな? そうだ、クリスちゃんの事を見てて。えい!」
(リ、リルちゃん!なんで!)
「クリスが凍った!? ざまあみろ」
「使う人によっては得意、不得意はそれぞれあるけど、色々な魔術があるんだよ。」
「さ、寒いよ! リルちゃん、なんで!?」
「ちょ、丁度良い所にいたから」
(リルちゃんも朱里みたいになっちゃうの!?体がもたないよ!)
「もう少し魔力を上げてみるね。あの波を見てもらっていい?」
「え? 波が……凍っちゃった」
「今のわたしにはこれが限界かな」
これは見せてもらっといて良かった。ムポポペサの人達は誰でもこんなこと出来るの?だとしたら凄いよ。
「リルちゃん、まだ本気じゃ無いだろ?」
「マジで? 既にかなり驚いてるんだけど」
「わたしはまだ子供だから、高威力の魔術の使用は限界があるのね。だけど少しだけなら本気を出せる方法があるの」
「もしかして、それを今から?」
「うん。いくね」
リルちゃんが目をつぶると、体が徐々に光で包まれたていった。
そして気がつくと、目の前に私が小さい頃に思い描いていたような一人の魔法少女が姿を現した。
「……すごい、リルちゃん。僕は感動すら覚えるよ」
「か、可愛い。キレイだし可愛い。魔法少女なの? リルちゃんって魔法少女なの? こんなに大きくなっちゃって、私より少し背が低いくらい? あわわわわ!? リルちゃんが魔法少女になってしまったのだ」
「は、恥ずかしいけどこういう感じです。……クリスちゃん、からかったら絶対零度で凍らせるからね」
(クリス、表情を殺せ。そして喋るな)
「朱里ちゃん?」
私も魔法少女になりたい。
大人の階段を転げ落ちてもいいから、少女に戻って魔法少女になりたい。
「う、うう。私も魔法少女になりたいです」
(そこなんだ。鼻水垂らして本気で泣いてるよ)
「朱里ちゃん、魔法少女じゃないからね? それは違うからね」
うう、ぐすん、羨ましい。私も可愛く産まれたかった。ぐすん、ずずずず。
「あの、朱里ちゃん? 時間制限あるからそろそろ始めるね。私の魔術から逃げてみてね」
「はい。お願いします」
(テンション低っ)
「じゃあ、まず火焔系から行くよ」
やばい、火柱で囲まれた!なら、上!
「飛んじゃうと逃げる方向が分っちゃうよ!」
「え? うわあ!」
びっくりしたー!雷落ちてきた。飛んでたらやられてた、魔術やば。
なるほどね。厄介だわ。
「そして気づかない内に足下を凍らせたりも」
冷た!靴が凍って動けなくなっちゃった。脱ぎ捨てちゃえば良いけど、一瞬でも動きを封じられるだけで、実力が拮抗している者同士ならそれは命取りだよ。
「今は地面と靴だけを凍らせたけど、魔術師が相手だとさっきのクリスちゃんみたいになっても不思議じゃない」
(想像以上に魔術を操ってる。流石フェンリルだ)
「毒に侵される時も、麻痺で動けなくなる時もある。幻術で惑わされる時だって。あ、そろそろ限界みたい」
元に戻っちゃった。こっちのリルちゃんも可愛い。
うう、私も魔法少女になりだいよ、ぐす。
「魔術師を相手にするって事はこういう事なの。魔術って相手にするの少し厄介でしょ?」
「ありがとう、リルちゃん。体験するとしないじゃ大違いだよ。何個か作戦も思いついたし、明日はいい結果が残せそう」
「うん! 信じてる!」
(僕、そろそろ喋ってもいいかな?)
思ったよりも魔術は厄介で苦戦するかも。
そして、ひとつ。私は決心した。
絶対、魔術覚えて魔法少女になる。
これ、絶対。
まさかわたしが魔王様の側近に選ばれると思っていなかったのですが、朱里ちゃんが魔王になるのならと、精一杯頑張りました。
魔王はまだ決まってません。じゃあ誰がなるのかって言ったら、それはもう朱里ちゃんに決まってます。
でも少しだけ心配に思う事もあるのです。
それは魔術。
例えば「恋☆どす」のキャラを幻術で朱里ちゃんの前に出すとします。その瞬間、朱里ちゃんは隙だらけになる事でしょう。
しかし鋼の耐久力を持つ朱里ちゃんが相手ともなると、それだけで負けるとも考えにくいです。
でも違うんです。魔術は他にも沢山あるんです。
纏わりつく炎や、絶え間なく降り注ぐ雷。皮膚を溶かす猛毒に、凍りついて解けない氷。
簡単に上げただけでも、これだけ出てきます。
もちろんだからと言って、絶対に朱里ちゃんが勝てないという訳でも無いのは分かってます。
だけど、大怪我をしてしまうかも知れません。そんなの見たくありません。
だから、私が練習相手に相手になります。
お父さんと、お母さんしか知らないわたしの力。
大切な人を守る時にその力を使いなさい、と言われてきました。
今がその時、わたしにとって今がその時です。
1つだけ引っかかるのがクリスちゃんがいること。
はあ。それだけが……ほんっとに嫌。
—————————
「じゃあ朱里ちゃん。いきなり魔術を出すと驚くだろうから、まずは簡単なものから見せるね。えい!」
「おお。すごいね」
「指先から青い炎が出てる。すごいキレイ」
「次はどうしようかな? そうだ、クリスちゃんの事を見てて。えい!」
(リ、リルちゃん!なんで!)
「クリスが凍った!? ざまあみろ」
「使う人によっては得意、不得意はそれぞれあるけど、色々な魔術があるんだよ。」
「さ、寒いよ! リルちゃん、なんで!?」
「ちょ、丁度良い所にいたから」
(リルちゃんも朱里みたいになっちゃうの!?体がもたないよ!)
「もう少し魔力を上げてみるね。あの波を見てもらっていい?」
「え? 波が……凍っちゃった」
「今のわたしにはこれが限界かな」
これは見せてもらっといて良かった。ムポポペサの人達は誰でもこんなこと出来るの?だとしたら凄いよ。
「リルちゃん、まだ本気じゃ無いだろ?」
「マジで? 既にかなり驚いてるんだけど」
「わたしはまだ子供だから、高威力の魔術の使用は限界があるのね。だけど少しだけなら本気を出せる方法があるの」
「もしかして、それを今から?」
「うん。いくね」
リルちゃんが目をつぶると、体が徐々に光で包まれたていった。
そして気がつくと、目の前に私が小さい頃に思い描いていたような一人の魔法少女が姿を現した。
「……すごい、リルちゃん。僕は感動すら覚えるよ」
「か、可愛い。キレイだし可愛い。魔法少女なの? リルちゃんって魔法少女なの? こんなに大きくなっちゃって、私より少し背が低いくらい? あわわわわ!? リルちゃんが魔法少女になってしまったのだ」
「は、恥ずかしいけどこういう感じです。……クリスちゃん、からかったら絶対零度で凍らせるからね」
(クリス、表情を殺せ。そして喋るな)
「朱里ちゃん?」
私も魔法少女になりたい。
大人の階段を転げ落ちてもいいから、少女に戻って魔法少女になりたい。
「う、うう。私も魔法少女になりたいです」
(そこなんだ。鼻水垂らして本気で泣いてるよ)
「朱里ちゃん、魔法少女じゃないからね? それは違うからね」
うう、ぐすん、羨ましい。私も可愛く産まれたかった。ぐすん、ずずずず。
「あの、朱里ちゃん? 時間制限あるからそろそろ始めるね。私の魔術から逃げてみてね」
「はい。お願いします」
(テンション低っ)
「じゃあ、まず火焔系から行くよ」
やばい、火柱で囲まれた!なら、上!
「飛んじゃうと逃げる方向が分っちゃうよ!」
「え? うわあ!」
びっくりしたー!雷落ちてきた。飛んでたらやられてた、魔術やば。
なるほどね。厄介だわ。
「そして気づかない内に足下を凍らせたりも」
冷た!靴が凍って動けなくなっちゃった。脱ぎ捨てちゃえば良いけど、一瞬でも動きを封じられるだけで、実力が拮抗している者同士ならそれは命取りだよ。
「今は地面と靴だけを凍らせたけど、魔術師が相手だとさっきのクリスちゃんみたいになっても不思議じゃない」
(想像以上に魔術を操ってる。流石フェンリルだ)
「毒に侵される時も、麻痺で動けなくなる時もある。幻術で惑わされる時だって。あ、そろそろ限界みたい」
元に戻っちゃった。こっちのリルちゃんも可愛い。
うう、私も魔法少女になりだいよ、ぐす。
「魔術師を相手にするって事はこういう事なの。魔術って相手にするの少し厄介でしょ?」
「ありがとう、リルちゃん。体験するとしないじゃ大違いだよ。何個か作戦も思いついたし、明日はいい結果が残せそう」
「うん! 信じてる!」
(僕、そろそろ喋ってもいいかな?)
思ったよりも魔術は厄介で苦戦するかも。
そして、ひとつ。私は決心した。
絶対、魔術覚えて魔法少女になる。
これ、絶対。
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