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襲撃
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「ムポポペサ大陸の皆様。いよいよ本日決まるのです。次期魔王の誕生が近づいております! 昨日は朱里選手の特集でSNSがざわついてましたね」
「本人は信じてない様子でしたけどね」
「反響の大きさに本人も信じられない様子との事ですか。仕方ないでしょう、あのパフォーマンスを見て魅了されない者はいないでしょうね」
(信じられないじゃなくて、信じてないだけどね)
「さあ、選手が入場して来ましたよ! 早速登場したのは魔王候補筆頭の朱里選手だ!」
(会場がどよめいている!)
「すごい歓声!」
「続いてこちらの選手は大会前から大注目! 先日の総当たり戦を最速タイムで切り抜けた少女! 天音選手の入場だ!」
(あっ!あの時取材陣に囲まれてた人だ。昨日は全然魔力を感じなかったのに)
(なるほど、転移者ということか?朱里以外にもいたんだね。あの強さにも納得だ)
「事前予想ではこの組み合わせが事実上の決勝戦と巷では騒がれていますね」
「事実上の決勝戦ですか。観客の皆さんは目が肥えていらっしゃる」
(田中さんが真面目な顔を!)
「天音選手はBフロアを静かに、そして最速で勝ち上がりました。朱里ちゃんの派手な勝ちっぷりにその影を潜めてましたが、果たしてどうなるんでしょう? 改めて見ると只者ではない感じがヒシヒシと伝わってきますね」
———
うっわー、すっごい歓声。ちょっと緊張するかも。
お、あの子が昨日勝ち上がった相手か。
あれ?私と同じ制服?……あれ!?
あの子、私と同じ体力テストで力を抑えてた明るくて社交的で人気者の——
「天音さん、だよね?」
「こんにちは。朱里ちゃん」
「なんで? いつからムポポペサへ?」
「ん? 私は元々ムポポペサの人間だよ」
ほーん。そんな事もあるのね。
「そうなんだ。じゃあさ、元の世界とムポポペサを生き来する方法があるって事だよね?」
「知ってるよ。教えてほしい?」
———
「何か会話していますね。同じ服を来ていますし、お互い顔見知りなのでしょうか?」
「いや、朱里からは何も聞いていないですね」
(仲良くはなさそうだね)
「開始時刻が近づいてきています。緊張感がありますね」
———
なんか感じ悪いなあ。こんな子だったっけ?さては猫かぶってたな?
「別にいいけどね。勇者を倒せば帰れるんだから」
「朱里ちゃん。自分でおかしいと思わないの? その行き過ぎた力」
「努力の結果だよ」
「本当にそれだけだと思う? いくらスキルの補正がかかってるとはいえおかしいと思わないの? だとしたら傲慢だよ」
「それ以外にないでしょ。それより、あんた何の為に学校に?」
「わかりやすく言えば監視。クリアする可能性があるのは朱里ちゃんくらいだからね」
「どういう事?」
「どういう事って、朱里ちゃんってもしかして本当に何も知らないの? 呆れた、貴方の両親は何も教えてくれなかったのね。いや、あえてなにも言わなかったのかな?」
両親?なんで親が出てくんだよ。さっきから意味が分からない事ばかり言いやがって。
「とりあえずクリアはさせないよ」
「クリア? 関係ないね。私は勇者を倒せればそれでいいんだ」
「だからそれをさせないって言ってるの」
黒い羽根? この子、人間ですらないの!?
———
「朱里と天音選手がなにやらずっと話をしてますね」
「やっぱり知り合いなのかな?……え!? なにこの揺れ!?」
「こ、これは一体!? 会場の皆様! 落ち着いて下さい! 落ち着いて下さい!」
「河村さん、ここは任せていいかい? 観客の皆を上手く落ち着かせてくれ。リルちゃん、急いで!」
「な、なに!?」
「勇者だ! あそこに勇者が現れた! 朱里が危ない!」
「勇者が!? 朱里ちゃん!」
———
「あーあー、魔物の諸君。はじめましてだね。勇者と言えば分かり易いかな?」
……は?
「私の目的は魔王を始めとする魔物の討伐。何でもこのゲームをクリアするとお願い事が必ず一つ叶うらしくてねえ。流石クソゲーだよ。設定が浅い」
「勇者、この子が朱里ちゃん。見た事あるでしょ?」
はあ?勇者!?
「んー? 残念ながらここに来る前の記憶がだいぶ薄くてね。思い出せないよ」
「そう、残念ね」
「そんな事より、俺はムポポペサの魔物イジメがとても楽しいんだよ! 魔王含むここにいる全部の魔物を殺してしまったらつまらないだろう? 終わってしまうじゃないか!」
イジメだ?あの野郎なめんなよ。私がイジメてやる!
!?
こいつ!!
「天音どいてくんない? アイツの事一回ぶん殴らないと気が済まないんだよね」
「ごめんね、私はいわゆるNPCなの。そして勇者の案内人。だから手は出させないから」
「朱里とか言ったな? 俺は一年ムポポペサで遊ばせてもらう。クソゲーは隅々まで楽しむ主義でね。それまではお前も自由にしなよ。勿論、俺の首を狙いに来るのも構わないよ? 取れればの話だけどな」
「今すぐ狙いに行ってやるからそこで大人しくしとけ!」
「言ったでしょ? 手は出させないって」
くっ、こいつ!
「一年後だ! そうだな、またここで会おうじゃ無いか!」
「朱里ちゃんはまだ案内人に会ってないみたいだね。なんでか知らないけど、会った方がいいよ。私は勇者が死にさえしなければそれでいいから」
「うわっと! 急に消えんな!」
「朱里!」
「朱里ちゃん! 大丈夫!?」
『本日の大会は中止とさせて頂きます。係員の指示に従い、落ち着いて移動をよろしくお願いします。繰り返します——』
あいつが勇者だって?
髪が生えた腹中黒じゃねえか!
「本人は信じてない様子でしたけどね」
「反響の大きさに本人も信じられない様子との事ですか。仕方ないでしょう、あのパフォーマンスを見て魅了されない者はいないでしょうね」
(信じられないじゃなくて、信じてないだけどね)
「さあ、選手が入場して来ましたよ! 早速登場したのは魔王候補筆頭の朱里選手だ!」
(会場がどよめいている!)
「すごい歓声!」
「続いてこちらの選手は大会前から大注目! 先日の総当たり戦を最速タイムで切り抜けた少女! 天音選手の入場だ!」
(あっ!あの時取材陣に囲まれてた人だ。昨日は全然魔力を感じなかったのに)
(なるほど、転移者ということか?朱里以外にもいたんだね。あの強さにも納得だ)
「事前予想ではこの組み合わせが事実上の決勝戦と巷では騒がれていますね」
「事実上の決勝戦ですか。観客の皆さんは目が肥えていらっしゃる」
(田中さんが真面目な顔を!)
「天音選手はBフロアを静かに、そして最速で勝ち上がりました。朱里ちゃんの派手な勝ちっぷりにその影を潜めてましたが、果たしてどうなるんでしょう? 改めて見ると只者ではない感じがヒシヒシと伝わってきますね」
———
うっわー、すっごい歓声。ちょっと緊張するかも。
お、あの子が昨日勝ち上がった相手か。
あれ?私と同じ制服?……あれ!?
あの子、私と同じ体力テストで力を抑えてた明るくて社交的で人気者の——
「天音さん、だよね?」
「こんにちは。朱里ちゃん」
「なんで? いつからムポポペサへ?」
「ん? 私は元々ムポポペサの人間だよ」
ほーん。そんな事もあるのね。
「そうなんだ。じゃあさ、元の世界とムポポペサを生き来する方法があるって事だよね?」
「知ってるよ。教えてほしい?」
———
「何か会話していますね。同じ服を来ていますし、お互い顔見知りなのでしょうか?」
「いや、朱里からは何も聞いていないですね」
(仲良くはなさそうだね)
「開始時刻が近づいてきています。緊張感がありますね」
———
なんか感じ悪いなあ。こんな子だったっけ?さては猫かぶってたな?
「別にいいけどね。勇者を倒せば帰れるんだから」
「朱里ちゃん。自分でおかしいと思わないの? その行き過ぎた力」
「努力の結果だよ」
「本当にそれだけだと思う? いくらスキルの補正がかかってるとはいえおかしいと思わないの? だとしたら傲慢だよ」
「それ以外にないでしょ。それより、あんた何の為に学校に?」
「わかりやすく言えば監視。クリアする可能性があるのは朱里ちゃんくらいだからね」
「どういう事?」
「どういう事って、朱里ちゃんってもしかして本当に何も知らないの? 呆れた、貴方の両親は何も教えてくれなかったのね。いや、あえてなにも言わなかったのかな?」
両親?なんで親が出てくんだよ。さっきから意味が分からない事ばかり言いやがって。
「とりあえずクリアはさせないよ」
「クリア? 関係ないね。私は勇者を倒せればそれでいいんだ」
「だからそれをさせないって言ってるの」
黒い羽根? この子、人間ですらないの!?
———
「朱里と天音選手がなにやらずっと話をしてますね」
「やっぱり知り合いなのかな?……え!? なにこの揺れ!?」
「こ、これは一体!? 会場の皆様! 落ち着いて下さい! 落ち着いて下さい!」
「河村さん、ここは任せていいかい? 観客の皆を上手く落ち着かせてくれ。リルちゃん、急いで!」
「な、なに!?」
「勇者だ! あそこに勇者が現れた! 朱里が危ない!」
「勇者が!? 朱里ちゃん!」
———
「あーあー、魔物の諸君。はじめましてだね。勇者と言えば分かり易いかな?」
……は?
「私の目的は魔王を始めとする魔物の討伐。何でもこのゲームをクリアするとお願い事が必ず一つ叶うらしくてねえ。流石クソゲーだよ。設定が浅い」
「勇者、この子が朱里ちゃん。見た事あるでしょ?」
はあ?勇者!?
「んー? 残念ながらここに来る前の記憶がだいぶ薄くてね。思い出せないよ」
「そう、残念ね」
「そんな事より、俺はムポポペサの魔物イジメがとても楽しいんだよ! 魔王含むここにいる全部の魔物を殺してしまったらつまらないだろう? 終わってしまうじゃないか!」
イジメだ?あの野郎なめんなよ。私がイジメてやる!
!?
こいつ!!
「天音どいてくんない? アイツの事一回ぶん殴らないと気が済まないんだよね」
「ごめんね、私はいわゆるNPCなの。そして勇者の案内人。だから手は出させないから」
「朱里とか言ったな? 俺は一年ムポポペサで遊ばせてもらう。クソゲーは隅々まで楽しむ主義でね。それまではお前も自由にしなよ。勿論、俺の首を狙いに来るのも構わないよ? 取れればの話だけどな」
「今すぐ狙いに行ってやるからそこで大人しくしとけ!」
「言ったでしょ? 手は出させないって」
くっ、こいつ!
「一年後だ! そうだな、またここで会おうじゃ無いか!」
「朱里ちゃんはまだ案内人に会ってないみたいだね。なんでか知らないけど、会った方がいいよ。私は勇者が死にさえしなければそれでいいから」
「うわっと! 急に消えんな!」
「朱里!」
「朱里ちゃん! 大丈夫!?」
『本日の大会は中止とさせて頂きます。係員の指示に従い、落ち着いて移動をよろしくお願いします。繰り返します——』
あいつが勇者だって?
髪が生えた腹中黒じゃねえか!
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