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4:ジークの気持ち
しおりを挟むジークはすっかりイルナに心を開いていた。彼女が、ジークが苦手で嫌いだった勉強から解放してくれたからだ。
たったそれだけなのに、ジークは随分と明るくなった。勉強しなければ良い王にはなれない。そういう重圧が、幼い彼の心を蝕んでいたのだ。
勉強と礼儀作法。そして剣の訓練。どれも、それだけを見れば嫌いじゃなかった。だけども、良い王にならなければならないという両親や周りからの視線が途端にそれらを怪物に仕立て上げていた。
それが苦しかった。
それが辛かった。
だから勉強にも身が入らず、訓練も疎かになった。
だけど、今は違う。
〝そんな物はくだらない。貴方は貴方のままでいれば、立派な王になる〟とイルナは力強く言ってくれた。
それで、どれだけ救われたか。
更に彼女は、教科書や図書館にあるような本には決して載っていない知識を沢山持っていた。それらは、全てジークの知識として蓄えられていった。
ジークはもはや全幅の信頼をイルナに置いていた。
そして淡いながらも……彼女に恋心を抱いてしまったのも致し方ないことだった。
「今日は、鍛冶師のマルクさんのところに行ってみようかな!」
イルナには好きに遊んで良いと言われたので、ジークはイルナの魔法を使ってこっそり城を抜け出すと城下町へと出掛けた。
勿論、実はイルナの監視である一羽のスズメが常に近くにいて、危険がないか監視しているのだが、彼は当然気付いていない。
変装も何もしていないが、元々あまり衆前に出ていないジークの正体に気付く者はほとんどいない。精々、どこかの貴族か大商人の子息としか思われないだろう。
そんなジークの最近のお気に入りの場所は、王国一と謳われる鍛冶師のマルクの営む工房だった。
マルクはしかし、職人にありがちな頑固さがあり、弟子も取らず独りでひたすら鉄を打っていた。
「こんにちは!」
「またお前か。火傷しないうちに帰れ」
鉄を打つマルクが振り向きすらせず、ぶっきらぼうに答えた。昔のジークならそれだけで怖じ気づいていただろうか、慣れたものとばかりにジークが周囲を興味深そうに見渡した。
剣やら鎧やらが無造作に置かれている中、見慣れない物があった。
「ねえねえこれ何?」
ジークが脇に置いてあった、細長い鉄で出来て筒を見つけて声を上げた。
「ああん? ああ、それか。セベールんとこの馬鹿息子の特注品だよ。西大陸の最新鋭の武器だとか。ったく馬鹿みたいな精度を求めやがって……」
「へえ……これが武器になるんだ」
ジークにはこの筒がどう武器になるのか見当も付かなかった。この筒で殴るのだろうか?
「興味あるなら、本人に聞くといい。丁度今、大通りの酒場にいるぞ。まあ、目立ち過ぎて色んな奴に狙われているらしいから、近付けないかもしれないがな。」
「へえ……行ってみようかな」
セベール家といえば、この国でも有数の商人である。面白い話を色々聞けるかもしれない。
普通の商人なら見知らぬ子供に特注品の話なんて聞かれてもするわけがないのだが、ジークはまだまだ世間知らずであり、そして無邪気であった。
「また来まーす」
「もう来んな」
ジークが裏通りから大通りへと抜けていく。彼は城下町の地理を大体把握するまでに至っていた。
「あれかな?」
大通りに面した酒場の前が何やら騒ぎになっている。
「衛兵を連れて来い! あと医者だ!! すぐに!!」
「なんだろう?」
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