2 / 15
2話:廃教会
しおりを挟む
ミネルヴァが意識を取りもどしたのは、古い、廃墟と化した教会の中だった。天井も崩れているが、曇っているせいで昼なのに妙に薄暗い。
「……アーミス……なぜ」
分かっている。自分が愚かにも妹を信じたせいで、こんな事になったのだと。祭壇の割れた鏡を覗けば、あれだけ長かった髪が、肩の上までしかない。
金色の瞳に、凜々しい顔付きも相まって普段であればより男っぽい雰囲気になるのだろうが、その表情はなぜかさっぱりとしていた。
「これももう着なくていいのは清々するな」
天界で着る事を強要されていた露出の多いこのローブももう不要だ。
前々から感じていた事だ。自分のような男性不信の処女神にあの色恋と情事がドロドロと絡み合う天界は合わない。
「せっかく下界に来たのだ。ゆっくり旅でもしようか」
髪の毛がある程度残されたのはアーミスの慈悲だろう。多少ならば神力も使えるようだ。これでも自分は戦と都市守護の神なのだ、身を守る事ぐらいは出来るし人間相手に後れを取る事はないだろう。
「ミネルヴァ! だから僕は反対したんだよ! 言ったろ! あのクソ妹の言う事なんて信じるなって!」
空から聞き覚えのある少年の声が聞こえ、ミネルヴァが見上げると、1匹の白いミミズクが降りてきてミネルヴァの右肩に止まった。
「グラウ! どうしてここに!」
それはミネルヴァの使い魔であるミミズク――グラウだった。
「どうもこうも……僕はミネルヴァの使い魔だからね!」
「だが、私は……もう」
神ではない。そうミネルヴァが言いかけたのをグラウは遮った。
「それだけ髪があれば神でなくたって十分だよ! でもその服は流石に下界では目立つなあ。戦の女神なんだからやっぱりこう全身フルアーマーで……」
「流石に怪しいと思うが……」
「じゃあ、あれが良いんじゃない? かっこいいし」
ミネルヴァは言われるままにグラウが器用に翼で指し示した先、祭壇に建てられた女神の像を見上げた。その像は、男装の麗人のような姿で貴族服の上から白銀の胸甲を付けており、右手にはサーベルを、左手にはなぜかマスケット銃を握っていた。
文字を読むにどうもこれは自分の像らしい事に気付いたミネルヴァ。こんな格好をした覚えも、銃を使った記憶もないのだが、まあ下界ではそう伝わっているのかもしれないと気を取り直し、その姿を自分で復元した。
「うんうん、短い髪も似合っててグッドだよ」
「ありがとうグラウ」
「どういたしまして。さてと……うん?」
グラウがその廃教会の入口へと顔を向けた。
「はあ……はあ……ほんとしつこい!」
ミネルヴァもそちらに視線を向けると、そこに一人の少女が飛び込んできた。長い金色の髪に碧玉のような色の瞳。白に金の刺繍が入ったワンピースに編み紐のブーツを履いた少女はしかし、全身傷だらけであり、額からも血を流していた。
満身創痍といった感じだが、しかしその少女は可愛らしい顔でキッと入口の方を睨んでいる。
「大変だ! あの子凄い怪我をしている!」
「……アーミス……なぜ」
分かっている。自分が愚かにも妹を信じたせいで、こんな事になったのだと。祭壇の割れた鏡を覗けば、あれだけ長かった髪が、肩の上までしかない。
金色の瞳に、凜々しい顔付きも相まって普段であればより男っぽい雰囲気になるのだろうが、その表情はなぜかさっぱりとしていた。
「これももう着なくていいのは清々するな」
天界で着る事を強要されていた露出の多いこのローブももう不要だ。
前々から感じていた事だ。自分のような男性不信の処女神にあの色恋と情事がドロドロと絡み合う天界は合わない。
「せっかく下界に来たのだ。ゆっくり旅でもしようか」
髪の毛がある程度残されたのはアーミスの慈悲だろう。多少ならば神力も使えるようだ。これでも自分は戦と都市守護の神なのだ、身を守る事ぐらいは出来るし人間相手に後れを取る事はないだろう。
「ミネルヴァ! だから僕は反対したんだよ! 言ったろ! あのクソ妹の言う事なんて信じるなって!」
空から聞き覚えのある少年の声が聞こえ、ミネルヴァが見上げると、1匹の白いミミズクが降りてきてミネルヴァの右肩に止まった。
「グラウ! どうしてここに!」
それはミネルヴァの使い魔であるミミズク――グラウだった。
「どうもこうも……僕はミネルヴァの使い魔だからね!」
「だが、私は……もう」
神ではない。そうミネルヴァが言いかけたのをグラウは遮った。
「それだけ髪があれば神でなくたって十分だよ! でもその服は流石に下界では目立つなあ。戦の女神なんだからやっぱりこう全身フルアーマーで……」
「流石に怪しいと思うが……」
「じゃあ、あれが良いんじゃない? かっこいいし」
ミネルヴァは言われるままにグラウが器用に翼で指し示した先、祭壇に建てられた女神の像を見上げた。その像は、男装の麗人のような姿で貴族服の上から白銀の胸甲を付けており、右手にはサーベルを、左手にはなぜかマスケット銃を握っていた。
文字を読むにどうもこれは自分の像らしい事に気付いたミネルヴァ。こんな格好をした覚えも、銃を使った記憶もないのだが、まあ下界ではそう伝わっているのかもしれないと気を取り直し、その姿を自分で復元した。
「うんうん、短い髪も似合っててグッドだよ」
「ありがとうグラウ」
「どういたしまして。さてと……うん?」
グラウがその廃教会の入口へと顔を向けた。
「はあ……はあ……ほんとしつこい!」
ミネルヴァもそちらに視線を向けると、そこに一人の少女が飛び込んできた。長い金色の髪に碧玉のような色の瞳。白に金の刺繍が入ったワンピースに編み紐のブーツを履いた少女はしかし、全身傷だらけであり、額からも血を流していた。
満身創痍といった感じだが、しかしその少女は可愛らしい顔でキッと入口の方を睨んでいる。
「大変だ! あの子凄い怪我をしている!」
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる