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4話:デート
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「へぇ。そんな変な子がいるんだねえ」
「そうだよー。まあ女子校だしね」
静かな店内に柔和な青年の声が溶けていく。
優しい笑顔を浮かべている青年は、二十代後半に見えた。端正な顔立ちに柔和な笑みを浮かべるこの青年に、さくらは身体を許すまではいかないまでも、ある程度の信頼を置いていた。
トイレでの小雪とのやりとり以来、さくらは苛立ちを募らせていた。それの原因がなんなのかを彼女は理解していた。
だから彼女は珍しく自分から、最近知り合った目の前の男性、早見悠人をデートに誘ったのだ。
「ねえ、悠人さん。お仕事は順調? 人脈コンサルタントだったっけ?」
さくらが、ゆっくりと赤ワインを傾けた。最初は断ったのだが、一杯だけなら大丈夫と言われ、注文してしまった。
「まあコンサルタントなんてのは大げさで、僕は斡旋業者みたいなもんだよ。縁のない人と人を結びつける。そういう仕事さ」
悠人が、フォークとナイフを合わせてそう説明した。
さくらは、当然ながら異性からも同性からもモテた。しかし、彼女が身体を許した事はこれまで一度もなかった。最近学校では“ハルウリ”が流行っているらしいが彼女的にはそれが信じられなかった。
さくらは、己の価値を分かっているがゆえに安売りをしたくなかった。だけど、本当は自分で分かっていた。
自分が、性行為を恐れている事に。
それで、男性に幻滅されるのが怖かった。
さくらはだからこそ、金銭目的で身体を売る女生徒達の行動を理解出来なかったし、何より軽蔑していた。
自分より、男性経験人数があってそれをあけすけを話すクラスメートを嫌悪していた。それだけで、負けた気分だった。
もし彼女に近しい友人がいれば、それは本当に些細な思い違いでコンプレックスですらない小さな悩みだと忠告してくれたかもしれない。
だけど、彼女は傲慢だった。孤独だった。
ゆえに、自分は他の馬鹿女と違って出し惜しみをしているのだと。そう自分に思い込ませる方法でしかさくらは自分を保てなかった。
「そんな僕でも、さくらちゃんほど綺麗で賢い子は初めて見るよ」
微笑を浮かべながらそう言う目の前の青年は、これまでにないほどさくらの心を動かす存在だった。
だけど、さくらはどこかで違和感を感じていた。それが何なのか分からないのがもどかしかった。
「美味しかったね。さて、まだ時間大丈夫でしょ? 僕の部屋においでよ。こないださ、最新のジューサーを買ってね。フルーツジュース作りに凝ってるんだ」
「あーうん。どうしよっかなあ」
「そうだよー。まあ女子校だしね」
静かな店内に柔和な青年の声が溶けていく。
優しい笑顔を浮かべている青年は、二十代後半に見えた。端正な顔立ちに柔和な笑みを浮かべるこの青年に、さくらは身体を許すまではいかないまでも、ある程度の信頼を置いていた。
トイレでの小雪とのやりとり以来、さくらは苛立ちを募らせていた。それの原因がなんなのかを彼女は理解していた。
だから彼女は珍しく自分から、最近知り合った目の前の男性、早見悠人をデートに誘ったのだ。
「ねえ、悠人さん。お仕事は順調? 人脈コンサルタントだったっけ?」
さくらが、ゆっくりと赤ワインを傾けた。最初は断ったのだが、一杯だけなら大丈夫と言われ、注文してしまった。
「まあコンサルタントなんてのは大げさで、僕は斡旋業者みたいなもんだよ。縁のない人と人を結びつける。そういう仕事さ」
悠人が、フォークとナイフを合わせてそう説明した。
さくらは、当然ながら異性からも同性からもモテた。しかし、彼女が身体を許した事はこれまで一度もなかった。最近学校では“ハルウリ”が流行っているらしいが彼女的にはそれが信じられなかった。
さくらは、己の価値を分かっているがゆえに安売りをしたくなかった。だけど、本当は自分で分かっていた。
自分が、性行為を恐れている事に。
それで、男性に幻滅されるのが怖かった。
さくらはだからこそ、金銭目的で身体を売る女生徒達の行動を理解出来なかったし、何より軽蔑していた。
自分より、男性経験人数があってそれをあけすけを話すクラスメートを嫌悪していた。それだけで、負けた気分だった。
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だけど、彼女は傲慢だった。孤独だった。
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だけど、さくらはどこかで違和感を感じていた。それが何なのか分からないのがもどかしかった。
「美味しかったね。さて、まだ時間大丈夫でしょ? 僕の部屋においでよ。こないださ、最新のジューサーを買ってね。フルーツジュース作りに凝ってるんだ」
「あーうん。どうしよっかなあ」
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