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1章《赦されざる者たち》
七話 「契約 ――凍てつく心に目覚めた力――」
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学院の奥、封印の間にて
白く凍てつく空間の中に、淡く揺らめく青い光が浮かんでいた。
それは人の姿にも、獣にも見える。けれど、どこか人間とは異なる気配――
「……誰?」
セレナが問いかけると、光が言葉のような“感情”を返してくる。
「名はない。ただ、願いを見守っていた。…強い怒りを抱く者よ、何を望む?」
精霊は、淡く光る瞳で静かに問いかけた。
セレナは一瞬、目を閉じ、深く息を吐いた。だがその瞳はすぐに鋭く開き、迷いなく答える。
「二つの国の滅びよ。私を嘲り、存在自体も蔑んだ祖国。
そして、私の事情を理解しながらも捕らえて殺害しようとしたリリスのいる国。
両方とも、私の手で滅ぼしてあげる――それが、私の生きる意味よ」
光はしばし沈黙し、やがて問いかける。
「……おまえの望みは、ただ滅ぼすことなのか? 本当に、それだけでいいのか?」
「……それで十分よ」
「嘘だ。お前の奥にあるものは、それだけではない。捨てられた痛み、愛されたかった心、気持が通っていると信じていた双子の妹………」
セレナは目を見開き、すぐに睨み返した。
「それが何? その全部が、私をここまで引きずり降ろしたのよ」
「ならば、力をやろう。ただし――その“真の願い”に、いつか向き合う時が来る。
その時、お前がそれでも滅びを望むなら、私は最後まで従おう」
セレナは一瞬だけ目を伏せ、そして微かに笑った。
「いいわ。そのときが来たら、教えてちょうだい。私のほんとうの望みとは何か」
精霊の言葉が静かに空気に溶けていった後も、封印の間には沈黙が降りたままだった。
セレナはしばらく何も言わず、ただ閉ざされた空間の中で自身の鼓動を聞いていた。
ふと、青白い光がまた揺らめき、淡く部屋の輪郭を照らす。
その光の中に、セレナは見た。
少女だった頃、王宮の中で一人きりで過ごした日々。
人形のように着飾られ、誰からも笑いかけられず、常に冷たい目で見られていた自分。
傍らで、誰からも愛され、祝福を受けていたリリスの姿。
「……なによ、今さら見せつけるつもり?」
セレナは小さく笑った。
その声は自嘲に染まりながらも、どこか冷たく研ぎ澄まされている。
「どんなにあの頃を思い返しても、私はもう戻れない。あの頃の私を守ってくれる者はいなかった。私を笑い者にし、無視し、見下した人々――王も、侍女たちも、誰一人として」
指先に魔力が集まっていく。
それは青白い光に呼応するように、空気を震わせ始めていた。
「そして……リリスの嫁いだ国。私を“無実”だと知りながら、誰一人手を差し伸べなかった。塔に閉じ込められ、食事も与えられず、寒さに震えながらただ、死ぬ事を待つしかなかったあの時――」
セレナは瞼を閉じ、深く息を吐いた。
「……私は、生き延びたわ」
再び目を開いた彼女の瞳には、炎のような光が宿っていた。
「私が持つこの魔導の力と、精霊の力。それをもって、二つの国に裁きを下す。これは復讐なんかじゃない。生きてきた証、私の存在そのものよ」
静かに、しかし確かに精霊の光が強くなる。
「ならば、契約は果たされた。お前は我の加護のもとに歩むだろう。その力、望むままに振るうがいい。だが忘れるな、汝が本当に求めているものが何であるか……それを思い出す日は必ず訪れる」
セレナはその言葉に頷き、振り返ることなく封印の間を後にした。
彼女の背には、青き光が宿っていた。
それは希望にも見え、絶望にも映る。
だが、彼女の歩みは止まらない。
もう、誰にも縛られないために――
白く凍てつく空間の中に、淡く揺らめく青い光が浮かんでいた。
それは人の姿にも、獣にも見える。けれど、どこか人間とは異なる気配――
「……誰?」
セレナが問いかけると、光が言葉のような“感情”を返してくる。
「名はない。ただ、願いを見守っていた。…強い怒りを抱く者よ、何を望む?」
精霊は、淡く光る瞳で静かに問いかけた。
セレナは一瞬、目を閉じ、深く息を吐いた。だがその瞳はすぐに鋭く開き、迷いなく答える。
「二つの国の滅びよ。私を嘲り、存在自体も蔑んだ祖国。
そして、私の事情を理解しながらも捕らえて殺害しようとしたリリスのいる国。
両方とも、私の手で滅ぼしてあげる――それが、私の生きる意味よ」
光はしばし沈黙し、やがて問いかける。
「……おまえの望みは、ただ滅ぼすことなのか? 本当に、それだけでいいのか?」
「……それで十分よ」
「嘘だ。お前の奥にあるものは、それだけではない。捨てられた痛み、愛されたかった心、気持が通っていると信じていた双子の妹………」
セレナは目を見開き、すぐに睨み返した。
「それが何? その全部が、私をここまで引きずり降ろしたのよ」
「ならば、力をやろう。ただし――その“真の願い”に、いつか向き合う時が来る。
その時、お前がそれでも滅びを望むなら、私は最後まで従おう」
セレナは一瞬だけ目を伏せ、そして微かに笑った。
「いいわ。そのときが来たら、教えてちょうだい。私のほんとうの望みとは何か」
精霊の言葉が静かに空気に溶けていった後も、封印の間には沈黙が降りたままだった。
セレナはしばらく何も言わず、ただ閉ざされた空間の中で自身の鼓動を聞いていた。
ふと、青白い光がまた揺らめき、淡く部屋の輪郭を照らす。
その光の中に、セレナは見た。
少女だった頃、王宮の中で一人きりで過ごした日々。
人形のように着飾られ、誰からも笑いかけられず、常に冷たい目で見られていた自分。
傍らで、誰からも愛され、祝福を受けていたリリスの姿。
「……なによ、今さら見せつけるつもり?」
セレナは小さく笑った。
その声は自嘲に染まりながらも、どこか冷たく研ぎ澄まされている。
「どんなにあの頃を思い返しても、私はもう戻れない。あの頃の私を守ってくれる者はいなかった。私を笑い者にし、無視し、見下した人々――王も、侍女たちも、誰一人として」
指先に魔力が集まっていく。
それは青白い光に呼応するように、空気を震わせ始めていた。
「そして……リリスの嫁いだ国。私を“無実”だと知りながら、誰一人手を差し伸べなかった。塔に閉じ込められ、食事も与えられず、寒さに震えながらただ、死ぬ事を待つしかなかったあの時――」
セレナは瞼を閉じ、深く息を吐いた。
「……私は、生き延びたわ」
再び目を開いた彼女の瞳には、炎のような光が宿っていた。
「私が持つこの魔導の力と、精霊の力。それをもって、二つの国に裁きを下す。これは復讐なんかじゃない。生きてきた証、私の存在そのものよ」
静かに、しかし確かに精霊の光が強くなる。
「ならば、契約は果たされた。お前は我の加護のもとに歩むだろう。その力、望むままに振るうがいい。だが忘れるな、汝が本当に求めているものが何であるか……それを思い出す日は必ず訪れる」
セレナはその言葉に頷き、振り返ることなく封印の間を後にした。
彼女の背には、青き光が宿っていた。
それは希望にも見え、絶望にも映る。
だが、彼女の歩みは止まらない。
もう、誰にも縛られないために――
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