8 / 30
1章《赦されざる者たち》
8話 王宮を突き刺す氷の刃
しおりを挟む
かつて自分を「雪の王女」、冷たい王女、心臓が氷でできていると、まことしやかな噂を広め、断じた国。
その城門前に、セレナは静かに立った。長い銀髪が風に煽られ、ふわりと揺れた。蒼い瞳が光った。
白い魔力が空気を歪め、辺りには鳥の声ひとつなかった。
王都であるフィルゼリアはいつものように賑わい、今日も愚かな民が祭りに興じていた。
“冷たい姫”と嘲ったその口で、今は何を笑っているのか――。
雪の王女と蔑み氷の心と罵った者たちよ
「ふさわしい終わりを、私が与えてあげる」と呟くと前世の4大魔法の中でも得意とした――氷魔法を展開した。
――審判の鐘が、鳴り響いた。
空が裂け、氷の刃が雨のように降り注ぐ。
容赦なく民たちを貫いていく。その貫きは致命傷にはならず、四肢を狙うように貫く。
そして、その傷からジワジワと体が凍りつき、砕け散る。
建物に逃げ込んでも、建物ごと貫いていくのだ。
王都を守る精鋭騎士団は、セレナの姿を見た瞬間、体を貫かれて崩れ落ちた。
彼女の怒りに、言葉も魔法も届かない。もはやその存在は、“天災”と変わらなかった。
しかし、まだ王宮だけは氷の刃は降り注いでいなかった。
王宮だけは、セレナは自らの手で崩壊させたかったのだ。
セレナを苦しめた始まりの場所――。
王宮に足を踏み入れたセレナは、あえて音を立てて歩く。
焦燥を煽り、恐怖を植え付け、心の臓が破裂するまで――じわじわと追い詰めるために。
「姫……! お戻りに……!」
ようやく彼女を“姫”と呼んだ使用人の声を、セレナは見下ろした。
その女はかつて、セレナを完全に無視し、使用人でありながらセレナの指示を何一つ聞かず、わざと食事を与えなかった者だった。
「名を名乗りなさい。あなたを誰として裁くか、決めてあげる」
女は泣き叫びながら名を告げた。
その名を聞いた瞬間――セレナの魔力が女の喉を凍らせた。
声も出せぬまま、彼女は喉から次第に凍結し、砕けて砕けて、雪のように崩れた。
「その身が朽ちても、私の記憶から逃れることはできない」
セレナの復讐は、ただの破壊ではない。
一人ひとりの罪を数え、裁き、名前と共に“記録”として刻み、忘れさせない。
王宮の奥に向かうまでに、すべての使用人や家臣たちが凍りつき、そして砕けていった。
母である皇后は、私を蔑んだ侍女たちに守られるように私室にいた。
扉を凍らせ破壊したセレナに、気丈にも震える声で「母にあいさつはないのですか」と聞いた。
セレナは冷たい視線を向けると、
「私に母はいないわ」
心の奥底から湧き上がる憎しみを抑えながら言った。
「あなたは私を捨てた。私の存在を無視して、何もかも自分たちの都合の良いようにしてきた」
母はその言葉に冷淡な笑みを浮かべ、まるでセレナの感情を軽視するかのように言った。
「お前が私に何を求めているのか、理解できないわ。」
「理解できない? 私を生んだのはあなたでしょう!」セレナは声を荒げた。
「あなたたちのしてきたことが私をこんなに苦しめている。私はあなたの期待を裏切らないように努力したのに、あなたたちは私を娘としても家族としても認めなかった」
母は無表情でセレナを見つめ返し、
「それがなんなの?」乾いた声で言った。
その言葉にセレナの瞳は怒りに揺れた。
「今更、あなたたちと話をするつもりはないわ。あなたたちが私に与えた傷は、決して癒えない」
セレナは毅然とした態度で告げた。
そして指先に魔力を集めると、氷の刃で侍女たちを一瞬で壁に打ち付け凍らせると、母親の皇后を氷で作った牢獄に閉じ込めた。
牢獄の前後の壁には鋭く細い氷の槍が何千何百と生えており、ゆっくりと動いて皇后に迫ってくる。いずれは皇后の体を貫くだろう。
そして、最後に父王のもとに向かった。
豪奢な玉座に座りながら、哀れなほどに震えていた。
かつて玉座を囲んでいた側近や重鎮、護衛の騎士たちの姿は、そこにはもうなかった。
セレナが王宮を進軍する中で、彼らは次々と逃げ出したのだ。
「セレナ……ゆ、許せ……」
「“許し”は、“心”がある者にしか与えられない」
セレナは静かに言った。
「私は、あなたが砕いたその心ごと、今、ここに葬るわ」
セレナは父王に、刃を向けることはなかったが――
“声”を奪い
“手足”を奪った。
“視力”を奪った。
そして“記憶”を一つずつ、散らしていった。
父王は、生きながら“自分が何者かもわからぬ廃人”となり、城の地下に遺された。
セレナは城を出る。
王宮は、燃えもせず、崩れもせず――“誰にも使われぬ墓”として、そのまま放置された。
その城門前に、セレナは静かに立った。長い銀髪が風に煽られ、ふわりと揺れた。蒼い瞳が光った。
白い魔力が空気を歪め、辺りには鳥の声ひとつなかった。
王都であるフィルゼリアはいつものように賑わい、今日も愚かな民が祭りに興じていた。
“冷たい姫”と嘲ったその口で、今は何を笑っているのか――。
雪の王女と蔑み氷の心と罵った者たちよ
「ふさわしい終わりを、私が与えてあげる」と呟くと前世の4大魔法の中でも得意とした――氷魔法を展開した。
――審判の鐘が、鳴り響いた。
空が裂け、氷の刃が雨のように降り注ぐ。
容赦なく民たちを貫いていく。その貫きは致命傷にはならず、四肢を狙うように貫く。
そして、その傷からジワジワと体が凍りつき、砕け散る。
建物に逃げ込んでも、建物ごと貫いていくのだ。
王都を守る精鋭騎士団は、セレナの姿を見た瞬間、体を貫かれて崩れ落ちた。
彼女の怒りに、言葉も魔法も届かない。もはやその存在は、“天災”と変わらなかった。
しかし、まだ王宮だけは氷の刃は降り注いでいなかった。
王宮だけは、セレナは自らの手で崩壊させたかったのだ。
セレナを苦しめた始まりの場所――。
王宮に足を踏み入れたセレナは、あえて音を立てて歩く。
焦燥を煽り、恐怖を植え付け、心の臓が破裂するまで――じわじわと追い詰めるために。
「姫……! お戻りに……!」
ようやく彼女を“姫”と呼んだ使用人の声を、セレナは見下ろした。
その女はかつて、セレナを完全に無視し、使用人でありながらセレナの指示を何一つ聞かず、わざと食事を与えなかった者だった。
「名を名乗りなさい。あなたを誰として裁くか、決めてあげる」
女は泣き叫びながら名を告げた。
その名を聞いた瞬間――セレナの魔力が女の喉を凍らせた。
声も出せぬまま、彼女は喉から次第に凍結し、砕けて砕けて、雪のように崩れた。
「その身が朽ちても、私の記憶から逃れることはできない」
セレナの復讐は、ただの破壊ではない。
一人ひとりの罪を数え、裁き、名前と共に“記録”として刻み、忘れさせない。
王宮の奥に向かうまでに、すべての使用人や家臣たちが凍りつき、そして砕けていった。
母である皇后は、私を蔑んだ侍女たちに守られるように私室にいた。
扉を凍らせ破壊したセレナに、気丈にも震える声で「母にあいさつはないのですか」と聞いた。
セレナは冷たい視線を向けると、
「私に母はいないわ」
心の奥底から湧き上がる憎しみを抑えながら言った。
「あなたは私を捨てた。私の存在を無視して、何もかも自分たちの都合の良いようにしてきた」
母はその言葉に冷淡な笑みを浮かべ、まるでセレナの感情を軽視するかのように言った。
「お前が私に何を求めているのか、理解できないわ。」
「理解できない? 私を生んだのはあなたでしょう!」セレナは声を荒げた。
「あなたたちのしてきたことが私をこんなに苦しめている。私はあなたの期待を裏切らないように努力したのに、あなたたちは私を娘としても家族としても認めなかった」
母は無表情でセレナを見つめ返し、
「それがなんなの?」乾いた声で言った。
その言葉にセレナの瞳は怒りに揺れた。
「今更、あなたたちと話をするつもりはないわ。あなたたちが私に与えた傷は、決して癒えない」
セレナは毅然とした態度で告げた。
そして指先に魔力を集めると、氷の刃で侍女たちを一瞬で壁に打ち付け凍らせると、母親の皇后を氷で作った牢獄に閉じ込めた。
牢獄の前後の壁には鋭く細い氷の槍が何千何百と生えており、ゆっくりと動いて皇后に迫ってくる。いずれは皇后の体を貫くだろう。
そして、最後に父王のもとに向かった。
豪奢な玉座に座りながら、哀れなほどに震えていた。
かつて玉座を囲んでいた側近や重鎮、護衛の騎士たちの姿は、そこにはもうなかった。
セレナが王宮を進軍する中で、彼らは次々と逃げ出したのだ。
「セレナ……ゆ、許せ……」
「“許し”は、“心”がある者にしか与えられない」
セレナは静かに言った。
「私は、あなたが砕いたその心ごと、今、ここに葬るわ」
セレナは父王に、刃を向けることはなかったが――
“声”を奪い
“手足”を奪った。
“視力”を奪った。
そして“記憶”を一つずつ、散らしていった。
父王は、生きながら“自分が何者かもわからぬ廃人”となり、城の地下に遺された。
セレナは城を出る。
王宮は、燃えもせず、崩れもせず――“誰にも使われぬ墓”として、そのまま放置された。
11
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる