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1章《赦されざる者たち》
8話 王宮を突き刺す氷の刃
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かつて自分を「雪の王女」、冷たい王女、心臓が氷でできていると、まことしやかな噂を広め、断じた国。
その城門前に、セレナは静かに立った。長い銀髪が風に煽られ、ふわりと揺れた。蒼い瞳が光った。
白い魔力が空気を歪め、辺りには鳥の声ひとつなかった。
王都であるフィルゼリアはいつものように賑わい、今日も愚かな民が祭りに興じていた。
“冷たい姫”と嘲ったその口で、今は何を笑っているのか――。
雪の王女と蔑み氷の心と罵った者たちよ
「ふさわしい終わりを、私が与えてあげる」と呟くと前世の4大魔法の中でも得意とした――氷魔法を展開した。
――審判の鐘が、鳴り響いた。
空が裂け、氷の刃が雨のように降り注ぐ。
容赦なく民たちを貫いていく。その貫きは致命傷にはならず、四肢を狙うように貫く。
そして、その傷からジワジワと体が凍りつき、砕け散る。
建物に逃げ込んでも、建物ごと貫いていくのだ。
王都を守る精鋭騎士団は、セレナの姿を見た瞬間、体を貫かれて崩れ落ちた。
彼女の怒りに、言葉も魔法も届かない。もはやその存在は、“天災”と変わらなかった。
しかし、まだ王宮だけは氷の刃は降り注いでいなかった。
王宮だけは、セレナは自らの手で崩壊させたかったのだ。
セレナを苦しめた始まりの場所――。
王宮に足を踏み入れたセレナは、あえて音を立てて歩く。
焦燥を煽り、恐怖を植え付け、心の臓が破裂するまで――じわじわと追い詰めるために。
「姫……! お戻りに……!」
ようやく彼女を“姫”と呼んだ使用人の声を、セレナは見下ろした。
その女はかつて、セレナを完全に無視し、使用人でありながらセレナの指示を何一つ聞かず、わざと食事を与えなかった者だった。
「名を名乗りなさい。あなたを誰として裁くか、決めてあげる」
女は泣き叫びながら名を告げた。
その名を聞いた瞬間――セレナの魔力が女の喉を凍らせた。
声も出せぬまま、彼女は喉から次第に凍結し、砕けて砕けて、雪のように崩れた。
「その身が朽ちても、私の記憶から逃れることはできない」
セレナの復讐は、ただの破壊ではない。
一人ひとりの罪を数え、裁き、名前と共に“記録”として刻み、忘れさせない。
王宮の奥に向かうまでに、すべての使用人や家臣たちが凍りつき、そして砕けていった。
母である皇后は、私を蔑んだ侍女たちに守られるように私室にいた。
扉を凍らせ破壊したセレナに、気丈にも震える声で「母にあいさつはないのですか」と聞いた。
セレナは冷たい視線を向けると、
「私に母はいないわ」
心の奥底から湧き上がる憎しみを抑えながら言った。
「あなたは私を捨てた。私の存在を無視して、何もかも自分たちの都合の良いようにしてきた」
母はその言葉に冷淡な笑みを浮かべ、まるでセレナの感情を軽視するかのように言った。
「お前が私に何を求めているのか、理解できないわ。」
「理解できない? 私を生んだのはあなたでしょう!」セレナは声を荒げた。
「あなたたちのしてきたことが私をこんなに苦しめている。私はあなたの期待を裏切らないように努力したのに、あなたたちは私を娘としても家族としても認めなかった」
母は無表情でセレナを見つめ返し、
「それがなんなの?」乾いた声で言った。
その言葉にセレナの瞳は怒りに揺れた。
「今更、あなたたちと話をするつもりはないわ。あなたたちが私に与えた傷は、決して癒えない」
セレナは毅然とした態度で告げた。
そして指先に魔力を集めると、氷の刃で侍女たちを一瞬で壁に打ち付け凍らせると、母親の皇后を氷で作った牢獄に閉じ込めた。
牢獄の前後の壁には鋭く細い氷の槍が何千何百と生えており、ゆっくりと動いて皇后に迫ってくる。いずれは皇后の体を貫くだろう。
そして、最後に父王のもとに向かった。
豪奢な玉座に座りながら、哀れなほどに震えていた。
かつて玉座を囲んでいた側近や重鎮、護衛の騎士たちの姿は、そこにはもうなかった。
セレナが王宮を進軍する中で、彼らは次々と逃げ出したのだ。
「セレナ……ゆ、許せ……」
「“許し”は、“心”がある者にしか与えられない」
セレナは静かに言った。
「私は、あなたが砕いたその心ごと、今、ここに葬るわ」
セレナは父王に、刃を向けることはなかったが――
“声”を奪い
“手足”を奪った。
“視力”を奪った。
そして“記憶”を一つずつ、散らしていった。
父王は、生きながら“自分が何者かもわからぬ廃人”となり、城の地下に遺された。
セレナは城を出る。
王宮は、燃えもせず、崩れもせず――“誰にも使われぬ墓”として、そのまま放置された。
その城門前に、セレナは静かに立った。長い銀髪が風に煽られ、ふわりと揺れた。蒼い瞳が光った。
白い魔力が空気を歪め、辺りには鳥の声ひとつなかった。
王都であるフィルゼリアはいつものように賑わい、今日も愚かな民が祭りに興じていた。
“冷たい姫”と嘲ったその口で、今は何を笑っているのか――。
雪の王女と蔑み氷の心と罵った者たちよ
「ふさわしい終わりを、私が与えてあげる」と呟くと前世の4大魔法の中でも得意とした――氷魔法を展開した。
――審判の鐘が、鳴り響いた。
空が裂け、氷の刃が雨のように降り注ぐ。
容赦なく民たちを貫いていく。その貫きは致命傷にはならず、四肢を狙うように貫く。
そして、その傷からジワジワと体が凍りつき、砕け散る。
建物に逃げ込んでも、建物ごと貫いていくのだ。
王都を守る精鋭騎士団は、セレナの姿を見た瞬間、体を貫かれて崩れ落ちた。
彼女の怒りに、言葉も魔法も届かない。もはやその存在は、“天災”と変わらなかった。
しかし、まだ王宮だけは氷の刃は降り注いでいなかった。
王宮だけは、セレナは自らの手で崩壊させたかったのだ。
セレナを苦しめた始まりの場所――。
王宮に足を踏み入れたセレナは、あえて音を立てて歩く。
焦燥を煽り、恐怖を植え付け、心の臓が破裂するまで――じわじわと追い詰めるために。
「姫……! お戻りに……!」
ようやく彼女を“姫”と呼んだ使用人の声を、セレナは見下ろした。
その女はかつて、セレナを完全に無視し、使用人でありながらセレナの指示を何一つ聞かず、わざと食事を与えなかった者だった。
「名を名乗りなさい。あなたを誰として裁くか、決めてあげる」
女は泣き叫びながら名を告げた。
その名を聞いた瞬間――セレナの魔力が女の喉を凍らせた。
声も出せぬまま、彼女は喉から次第に凍結し、砕けて砕けて、雪のように崩れた。
「その身が朽ちても、私の記憶から逃れることはできない」
セレナの復讐は、ただの破壊ではない。
一人ひとりの罪を数え、裁き、名前と共に“記録”として刻み、忘れさせない。
王宮の奥に向かうまでに、すべての使用人や家臣たちが凍りつき、そして砕けていった。
母である皇后は、私を蔑んだ侍女たちに守られるように私室にいた。
扉を凍らせ破壊したセレナに、気丈にも震える声で「母にあいさつはないのですか」と聞いた。
セレナは冷たい視線を向けると、
「私に母はいないわ」
心の奥底から湧き上がる憎しみを抑えながら言った。
「あなたは私を捨てた。私の存在を無視して、何もかも自分たちの都合の良いようにしてきた」
母はその言葉に冷淡な笑みを浮かべ、まるでセレナの感情を軽視するかのように言った。
「お前が私に何を求めているのか、理解できないわ。」
「理解できない? 私を生んだのはあなたでしょう!」セレナは声を荒げた。
「あなたたちのしてきたことが私をこんなに苦しめている。私はあなたの期待を裏切らないように努力したのに、あなたたちは私を娘としても家族としても認めなかった」
母は無表情でセレナを見つめ返し、
「それがなんなの?」乾いた声で言った。
その言葉にセレナの瞳は怒りに揺れた。
「今更、あなたたちと話をするつもりはないわ。あなたたちが私に与えた傷は、決して癒えない」
セレナは毅然とした態度で告げた。
そして指先に魔力を集めると、氷の刃で侍女たちを一瞬で壁に打ち付け凍らせると、母親の皇后を氷で作った牢獄に閉じ込めた。
牢獄の前後の壁には鋭く細い氷の槍が何千何百と生えており、ゆっくりと動いて皇后に迫ってくる。いずれは皇后の体を貫くだろう。
そして、最後に父王のもとに向かった。
豪奢な玉座に座りながら、哀れなほどに震えていた。
かつて玉座を囲んでいた側近や重鎮、護衛の騎士たちの姿は、そこにはもうなかった。
セレナが王宮を進軍する中で、彼らは次々と逃げ出したのだ。
「セレナ……ゆ、許せ……」
「“許し”は、“心”がある者にしか与えられない」
セレナは静かに言った。
「私は、あなたが砕いたその心ごと、今、ここに葬るわ」
セレナは父王に、刃を向けることはなかったが――
“声”を奪い
“手足”を奪った。
“視力”を奪った。
そして“記憶”を一つずつ、散らしていった。
父王は、生きながら“自分が何者かもわからぬ廃人”となり、城の地下に遺された。
セレナは城を出る。
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