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1章《赦されざる者たち》
20話 断罪の精霊と正義の代償
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「これ以上はもう見る必要はないわ」
彼女は小さくつぶやいた。心が晴れ晴れとするどころか、逆に重く苦々しい思いが彼女を襲った。
セレナは、鏡の前から立ち去り静かに歩き出そうとした。しかし意志とは裏腹に、足が言うことをきかない。セレナは自分の足を見下ろし、何とか動かそうと努力するが、まるで地面に縫いつけられているかのようだった。
その時、不意に耳元に冷たく響く声が聞こえた。断罪の精霊の声だ。
『まだ終わっていない。全てが終わるまで、立ち去ることまかりならん。』
その言葉に、セレナの心に恐怖が走った。彼女は、精霊が望む断罪が完了しない限り、自分は自由に動くことも許されないのだと分かった。足が動かないのは、彼女が封印を解き断罪の精霊の力を手に入れた為の制約なのかと、改めて思い知らされた。
セレナは、足を動かそうと試みるが、全く力が入らない。彼女の心は焦りを覚え、足が更に重くなった。まるで、足と地が一体化したような錯覚を覚え彼女の行動を許さないかのような圧迫感が襲ってきた。
その瞬間、彼女は決意を固める。逃げることは許されない。最後まで見届けなくてはならないのだ。自分の過去を直視し、精霊の意志に従うことで、初めて自由への道が開けるのだと。
そして----
断罪の精霊が断罪が必要と認めれば“いついかなる時“も断罪は行われるだろう。正義の名のもとに。自分が生きている限り。
セレナは改めて、封印されていた意味を理解したのだ。
………もう一度封印しなければ………
復讐の為に必要だったとはいえ余りにも危険な存在を目覚めさせてしまった。断罪の精霊はたかが人間ごときが自由に出来る存在では無かったのだ。
鏡の中で未だに繰り広げられている断罪を見ながら頭の中ではこれからの事が忙しく駆け回っていた。もう一度封印をする為の方法を探さなくてはならない。けれど、あからさまに動けば、今回のように邪魔される可能性がある。封印の為の行動だとバレないように動かなければならない。
鏡の前で長い時間が過ぎた。いや、もしかしたらそんなに長くはなかったのかもしれない。本当ところセレナは測りかねていた。けれども、縫い付けられていた足が急に軽くなったので断罪は終わったのだと悟った。
セレナは静まり返った城の廊下を歩きながら、胸の奥で自分の考えを整理していた。
(断罪そのものは、間違っていない……。だけど――)
彼女は立ち止まり、手すりに手をかける。広場の方から、まだすすり泣きやうめき声が風に乗って微かに聞こえてくる。
(精霊の裁きは、あまりにも正義すぎる
、容赦がない。確かに正しくないと裁きは出来ない。人は時に過ちを犯すけれど、悔い改めることもできる……はずだよね?)思わず自問自答してしまい苦笑いした。
なにを今更、と思ったのだ。祖国を容赦なく叩き潰したのはセレナ自身だ。母である皇后を多分死んだであろうが仕組んだのもセレナだ。父王を廃人にし放置したのもセレナだ。後悔は無い。許せと言いながらその目には侮辱が見えたし言葉は疑問に満ちていた。
セレナが心の中で浮かべる心配は、精霊がこの先も何かあるたびに現れ、白か黒かだけで人を裁き続ける未来だった。
(このままでは、人の心も社会も壊れてしまうかも知れない。精霊の力は、人間の手に余るものだった……)
セレナは静かに決意した。
「もう一度、封印しなければ。これは、断罪そのものを否定するためじゃない。人が人として生きるために――」
彼女は誰もいない城の中で、ひとり静かに歩き出した。
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1章完結
2章のストックを準備中です。暫くお待ち下さい。
彼女は小さくつぶやいた。心が晴れ晴れとするどころか、逆に重く苦々しい思いが彼女を襲った。
セレナは、鏡の前から立ち去り静かに歩き出そうとした。しかし意志とは裏腹に、足が言うことをきかない。セレナは自分の足を見下ろし、何とか動かそうと努力するが、まるで地面に縫いつけられているかのようだった。
その時、不意に耳元に冷たく響く声が聞こえた。断罪の精霊の声だ。
『まだ終わっていない。全てが終わるまで、立ち去ることまかりならん。』
その言葉に、セレナの心に恐怖が走った。彼女は、精霊が望む断罪が完了しない限り、自分は自由に動くことも許されないのだと分かった。足が動かないのは、彼女が封印を解き断罪の精霊の力を手に入れた為の制約なのかと、改めて思い知らされた。
セレナは、足を動かそうと試みるが、全く力が入らない。彼女の心は焦りを覚え、足が更に重くなった。まるで、足と地が一体化したような錯覚を覚え彼女の行動を許さないかのような圧迫感が襲ってきた。
その瞬間、彼女は決意を固める。逃げることは許されない。最後まで見届けなくてはならないのだ。自分の過去を直視し、精霊の意志に従うことで、初めて自由への道が開けるのだと。
そして----
断罪の精霊が断罪が必要と認めれば“いついかなる時“も断罪は行われるだろう。正義の名のもとに。自分が生きている限り。
セレナは改めて、封印されていた意味を理解したのだ。
………もう一度封印しなければ………
復讐の為に必要だったとはいえ余りにも危険な存在を目覚めさせてしまった。断罪の精霊はたかが人間ごときが自由に出来る存在では無かったのだ。
鏡の中で未だに繰り広げられている断罪を見ながら頭の中ではこれからの事が忙しく駆け回っていた。もう一度封印をする為の方法を探さなくてはならない。けれど、あからさまに動けば、今回のように邪魔される可能性がある。封印の為の行動だとバレないように動かなければならない。
鏡の前で長い時間が過ぎた。いや、もしかしたらそんなに長くはなかったのかもしれない。本当ところセレナは測りかねていた。けれども、縫い付けられていた足が急に軽くなったので断罪は終わったのだと悟った。
セレナは静まり返った城の廊下を歩きながら、胸の奥で自分の考えを整理していた。
(断罪そのものは、間違っていない……。だけど――)
彼女は立ち止まり、手すりに手をかける。広場の方から、まだすすり泣きやうめき声が風に乗って微かに聞こえてくる。
(精霊の裁きは、あまりにも正義すぎる
、容赦がない。確かに正しくないと裁きは出来ない。人は時に過ちを犯すけれど、悔い改めることもできる……はずだよね?)思わず自問自答してしまい苦笑いした。
なにを今更、と思ったのだ。祖国を容赦なく叩き潰したのはセレナ自身だ。母である皇后を多分死んだであろうが仕組んだのもセレナだ。父王を廃人にし放置したのもセレナだ。後悔は無い。許せと言いながらその目には侮辱が見えたし言葉は疑問に満ちていた。
セレナが心の中で浮かべる心配は、精霊がこの先も何かあるたびに現れ、白か黒かだけで人を裁き続ける未来だった。
(このままでは、人の心も社会も壊れてしまうかも知れない。精霊の力は、人間の手に余るものだった……)
セレナは静かに決意した。
「もう一度、封印しなければ。これは、断罪そのものを否定するためじゃない。人が人として生きるために――」
彼女は誰もいない城の中で、ひとり静かに歩き出した。
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1章完結
2章のストックを準備中です。暫くお待ち下さい。
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