愛されない王女は世界を壊す

夢花音

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2章凍てつく断罪----慈悲の導き

1話 封印の書庫、禁忌の記憶

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セレナは静寂に包まれた回廊を歩いていると、不意に視線のようなものを感じた。

(……また、見られてる)

振り返っても誰もいない。ただ、整然とした壁と、窓から差し込む月明かりが柔らかく廊下を照らしているだけだった。

けれど、確かに感じる。背後から、あるいは足元から、あるいは……心の内側から。

断罪の精霊の力を手にして以来、セレナは常に誰かに“見られている”感覚と共にあった。それはただの監視ではない。まるで精霊自身が、セレナを次なる「断罪の対象」として値踏みしているかのような――。

(……まだ、時間がある。今のうちに、方法を探さなければ)

王城の奥深くにある封印の書庫を目指し、セレナは急ぎ足で進んだ。誰も近寄らぬよう封印された部屋には、過去の精霊に関する禁忌の記録が残されているはずだ。

重たい扉を開くと、ひんやりとした空気が頬をなでた。積もった埃と、古い紙の匂いが鼻をつく。この部屋が精霊の力を遮断する魔術をかけられていて本当に良かった。ここなら、断罪の精霊の干渉を受けずに調べ物ができる。

棚の奥、黄ばんだ羊皮紙の束に手を伸ばした。古代の賢者や聖者が、精霊の力を制御するための特殊な魔道具を作り出していた。その魔道具には、精霊の感知を遮断したり、力を封印する効果があるのだ。

セレナは断罪の精霊記憶からそうした魔道具の存在を知っていた。そして、魔道具のありかも……。

《精霊のバングルは精霊の力を制御できるものである。しかし断罪の精霊を完全に制することはバングルでは出来ない。もともと世界の秩序を保つため、かつて“慈悲の精霊”と対を成して生まれし存在なり。ゆえに、その力を鎮めるには、対なる存在の力を借りるべし――》

その一文を見た瞬間、彼女の心に電流が走った。

「……慈悲の精霊……?」

その存在の名を聞いた記憶はなかった。だが、確かに記されている。「断罪」を制御するためには「赦し」が必要なのだ。

(まずはバングルを探して、それから私は赦しの精霊を探す。断罪の力を否定するわけじゃない。けれど……制御しなくてはならない)

慈悲の精霊――その存在を探し出し、協力を得る。

それが、自らの心と世界の破滅を防ぐために、彼女が選ぶべき次の道だとセレナは知った。

その夜、彼女は書庫に眠る古代語の書を抱えて、ひとり静かに部屋を後にした。ここは安全だと自分に言い聞かせながら。

だが、その背には、闇に紛れて確かに“影”が付き従っていた。断罪の精霊は、その影として彼女の心の中に潜んでいるのだ。

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2章更新再開しました。これからも宜しくお願いします
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