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2章凍てつく断罪----慈悲の導き
7話 セレナの選択――リリスの思い
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氷に覆われた街を抜けて、セレナはザイレル帝国の王都城門にたどり着いた。
城下では人々が苦しみながらも生きていた。
肌を裂くような寒気のなか、焚き火を囲い、目の焦点を失ったままパンを焼いている。
凍った井戸に鍋を沈めて、少しでも解けた水を集めようとする子供の姿。
――そのことが、何よりも残酷に感じられた。
「……これが、断罪の精霊の与えた罰の果て……」
だが、それでも――終わらせなければならない。
彼らを赦すためではなく、自分が歩き出すために。
広場に向かい歩きながら断罪の時を思い出していた。もう……いいだろ……そう思った時セレナは城内の鏡のある部屋にいた。全ての断罪を見せた鏡は今は何も映っては居なかった。
そっとため息を落とすと、静かに部屋のドアを開いた。
廊下は音もなく静まりかえっていた。まるで誰も居ないような錯覚さえする程に。向かう先はリリスの部屋。近くまで来たときにやっと侍女とあった。
ビクリとして怯えた侍女は
「誰?どうしてここに……」と
声を震わせていた。
その問いにセレナは答えることも歩みを止めることもしなかった。
侍女はハッとして言った。
「あの方だわ……王に報告を――いえ、“王妃さまに”」
“王妃”。それはリリスのことだろう。
セレナの顔には何の感情も浮かばなかった。
セレナの心の奥底から2つの異なる感情とエネルギーが湧き上がり絡み合ってやがて1つの糸になった。
リリスの部屋は、かつてと変わらず静かだった。
しかしその静けさには、かつての無垢ではなく、何か重く沈んだものが漂っていた。
扉を開けると、リリスが椅子に腰掛けていた。
その傍には、他国から来た侍女――マーナが控えている。
彼女は黙ってセレナを見つめ、何も言わずに頭を下げた。
リリスは、ふと立ち上がった。
驚きも、安堵も、後悔も、すべてが混ざったような曖昧な目でセレナを見つめていた。
そして、ひとことだけ――
「……姉さま……」
その声に、セレナの心は波立たなかった。
もはや、何も揺さぶるものはない。
「……突然消えてしまってもう、会えないのかと………」
リリスの声は、幼い少女のように震えていた。
だがセレナはただ一歩、部屋の奥へと進む。
マーナがさりげなく後ろに数歩下がった。セレナはふと目を向けた。
――気づいた。
この少女だけが、あの断罪の渦の中で唯一“変わりがない”者だった。
何も知らず、ただ日々を真面目に生きていた他国の者。
あの日、セレナとマーナは一度も言葉を交わすことはなかったがリリスを守ろうとしていたのは分かった。忠実な侍女。
セレナの心の奥に、何かが小さく結ばれる音がした。
「……彼女が、無傷でいてよかった」
誰に言うでもないその言葉に、マーナはわずかに目を伏せ頭を下げた。
だが、何も言わず黙ってリリスの後ろに控えた。
リリスは涙をこらえるように唇を噛みしめた。
だがセレナはその姿にも、もはや心を揺らさない。
「私に会いたかった?」
「……はい」
「何を話すの?」
「……わからない。けれど……」
けれど――と、言いかけた言葉は、氷のような沈黙にかき消された。
セレナはそっと目を閉じた。
すべてを終わらせるために来た。赦すためではなく、歩き出すために。
その言葉を胸に、セレナは再びリリスを見つめた。
「あなたに恨みごとをいいに来たわけでは無いのよ。もう、責める気もないの」
セレナの声は静かだった。
だが、その一言にリリスは大きく目を見開いた。
「……じゃあ……」
「違う。赦したわけでもない。私は――私のために来たのよ」
リリスの肩が震える。だが、セレナはその様子にも感情を動かさない。
「もう、あなたを“想い続ける”必要もない。
あなたのために、苦しむ理由も……これで終わりにする」
リリスは、膝から崩れ落ちた。
ただ、泣いていた。
セレナは静かに背を向けた。
マーナは何も言わず、セレナが去るその姿に一礼する。
――これで、いい。
すべてを終わらせたセレナの歩みは、確かに未来へと向かっていた。
王妃の部屋から出るとセレナは王がいるだろう玉座の間に向かって歩き始めた。
城下では人々が苦しみながらも生きていた。
肌を裂くような寒気のなか、焚き火を囲い、目の焦点を失ったままパンを焼いている。
凍った井戸に鍋を沈めて、少しでも解けた水を集めようとする子供の姿。
――そのことが、何よりも残酷に感じられた。
「……これが、断罪の精霊の与えた罰の果て……」
だが、それでも――終わらせなければならない。
彼らを赦すためではなく、自分が歩き出すために。
広場に向かい歩きながら断罪の時を思い出していた。もう……いいだろ……そう思った時セレナは城内の鏡のある部屋にいた。全ての断罪を見せた鏡は今は何も映っては居なかった。
そっとため息を落とすと、静かに部屋のドアを開いた。
廊下は音もなく静まりかえっていた。まるで誰も居ないような錯覚さえする程に。向かう先はリリスの部屋。近くまで来たときにやっと侍女とあった。
ビクリとして怯えた侍女は
「誰?どうしてここに……」と
声を震わせていた。
その問いにセレナは答えることも歩みを止めることもしなかった。
侍女はハッとして言った。
「あの方だわ……王に報告を――いえ、“王妃さまに”」
“王妃”。それはリリスのことだろう。
セレナの顔には何の感情も浮かばなかった。
セレナの心の奥底から2つの異なる感情とエネルギーが湧き上がり絡み合ってやがて1つの糸になった。
リリスの部屋は、かつてと変わらず静かだった。
しかしその静けさには、かつての無垢ではなく、何か重く沈んだものが漂っていた。
扉を開けると、リリスが椅子に腰掛けていた。
その傍には、他国から来た侍女――マーナが控えている。
彼女は黙ってセレナを見つめ、何も言わずに頭を下げた。
リリスは、ふと立ち上がった。
驚きも、安堵も、後悔も、すべてが混ざったような曖昧な目でセレナを見つめていた。
そして、ひとことだけ――
「……姉さま……」
その声に、セレナの心は波立たなかった。
もはや、何も揺さぶるものはない。
「……突然消えてしまってもう、会えないのかと………」
リリスの声は、幼い少女のように震えていた。
だがセレナはただ一歩、部屋の奥へと進む。
マーナがさりげなく後ろに数歩下がった。セレナはふと目を向けた。
――気づいた。
この少女だけが、あの断罪の渦の中で唯一“変わりがない”者だった。
何も知らず、ただ日々を真面目に生きていた他国の者。
あの日、セレナとマーナは一度も言葉を交わすことはなかったがリリスを守ろうとしていたのは分かった。忠実な侍女。
セレナの心の奥に、何かが小さく結ばれる音がした。
「……彼女が、無傷でいてよかった」
誰に言うでもないその言葉に、マーナはわずかに目を伏せ頭を下げた。
だが、何も言わず黙ってリリスの後ろに控えた。
リリスは涙をこらえるように唇を噛みしめた。
だがセレナはその姿にも、もはや心を揺らさない。
「私に会いたかった?」
「……はい」
「何を話すの?」
「……わからない。けれど……」
けれど――と、言いかけた言葉は、氷のような沈黙にかき消された。
セレナはそっと目を閉じた。
すべてを終わらせるために来た。赦すためではなく、歩き出すために。
その言葉を胸に、セレナは再びリリスを見つめた。
「あなたに恨みごとをいいに来たわけでは無いのよ。もう、責める気もないの」
セレナの声は静かだった。
だが、その一言にリリスは大きく目を見開いた。
「……じゃあ……」
「違う。赦したわけでもない。私は――私のために来たのよ」
リリスの肩が震える。だが、セレナはその様子にも感情を動かさない。
「もう、あなたを“想い続ける”必要もない。
あなたのために、苦しむ理由も……これで終わりにする」
リリスは、膝から崩れ落ちた。
ただ、泣いていた。
セレナは静かに背を向けた。
マーナは何も言わず、セレナが去るその姿に一礼する。
――これで、いい。
すべてを終わらせたセレナの歩みは、確かに未来へと向かっていた。
王妃の部屋から出るとセレナは王がいるだろう玉座の間に向かって歩き始めた。
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