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レヴェント編
48.無意味で無駄
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「はぁ~……次」
流石のレナも彼の偉そうな態度にため息を吐いていた。凄まじいほど自身を知らぬドン・キホーテぶり、あれはきっと自身のことを物語の主人公とでも思っているのだろう。
「じゃあ、私やります」
そう言い立ち上がったのは赤髪、朱色の瞳を持った少女だった。
「私はエヴァ・ローレシア、よろしく」
元気な声でそういうエヴァ。
ふと、思ったのだが自己紹介の割に名前しか言わないのは何故なのだろうか? 皆様方、自己紹介へのやる気がなさ過ぎではありませんか?
そんな疑問が過る中、レナが次の合図を送り、俺の隣の席の少女が立ち上がり教卓の前に向った。
「私はオリビア・ジルフィールです。どうぞみなさん、よろしくお願いします」
俺はハッと目を見開いてオリビアを見た。そして次にレナの方に視線を向けて真偽を確かめる。レナは俺の視線に気づくと小さく頷いた。
つまりそういう事なのだろう――
もう一度オリビアに視線を戻す。オリビア・ジルフィール、名前からしてアンドリュオの娘、つまりは彼から頼まれた護衛の相手だ。
なるほど。君が、そうだったか……
初めて彼女に会った時を思い出し、エヴァがフルネームを名乗ったのに対して彼女はオリビアという名しか名乗っていないことを思い出す。当たり前だ、王族である彼女があんな場所で名を簡単に明かせるわけがない。
その違和感に気づかなかったのが不思議なくらい異常は目の前にあった。
優雅に金色の髪を揺らして席に戻って行くオリビア、そんな様子を見てほんの少し護衛の仕事に対しての意欲が上がった気がする。
――彼女には絶対、〝何か〟ある……そう、思ったからだ。
不確かながら俺の中では確信めいたものがあった。
柄にもなく彼女を助けたあの時、あれは本当にただの気まぐれだったのか……それとも俺はあの時――
思考が深く稼働する。段々と表情から感情が無くなる。回転がジリジリと上がり余分を排斥、己の淵を俯瞰して覗いた。
「……ケイ……――」
この疑問は単に彼女が持っている〝謎〟だけじゃない。
「……ケイ、ヤ…――」
この疑問はきっと俺自身に対しての疑問でもある。そう、きっと俺自身の――
「ケイヤ!」
「っ――はい!」
思考が強制切断され、呼ばれた名前に反応する。周囲に目をやると既に俺を除く者の自己紹介は終わっているようで、レナの言葉に反応しなかった俺の様子に視線を集めていた。
「君で最後だ、速く」
「……了解です、レナ先生」
脳の収拾がいったところでそう答える。すると、レナがものすごく驚いたような表情、というよりは気持ち悪いような表情をした。
いや、確かに俺もそう思うけど、その露骨な反応やめい。
先生と呼ばれたレナの気持ちの悪そうな表情、あまりにも露骨、周囲の人間達が反応しないのが不思議なくらい変な表情をしている。
俺はそんな彼女の横を通り過ぎて教卓の前に行き、止まる。
「はぁ」
小さくため息を吐く。変な思考が直前にあったせいか、何を言えばいいのか特に考えていなかった。
ま、なんでもいいや……
「もう皆さん名前の方は知っているかもしれませんが、僕は神塚敬也、魔力無しということになっていますが一様多少の魔力はあります。まあ、とりあえずこんな奴ですが仲良くしてください」
そう自己紹介をしてみると数人が手をパチパチと叩き、さらに数人が怒気を孕んだ表情を見せ、その他は無関心な目を向けていた。
こう見ると感心のある人物の方が少ないことがよく分かる。
好意的にしろ、敵対的にしろ、感情を向けている人間というのは少ないものだ。例え俺がこの世界における嫌悪される立場においてもそういうモノ、みな基本は無関心であり、状況によって関心を示す。
人の感情はその場その場で大きく変動する、予測不可な〝事〟なのだ。
ゆっくりと席に戻る中、ふいにそんな思考が通り過ぎた。柄にもない、分かり切っていることなのにも関わらず、無駄に考えている。
本当に柄にもない、最近はそんなことが多い。いや、この世界に来てからだろうか? わからない……わからない……本当に理解できない、な。
自分でも理解できない行動に戸惑う。こうなってしまった原因はこの世界に来たからなのか、彼女達に出会ったからなのか、時間経過による記憶の露出なのか、それとも――
いや、これもまた無駄な思考か。フッ……
苦笑、無駄だ無駄だと理解して尚、続ける自身への自嘲的な笑い。
そう、本当に無意味な話だと……そう思うよ。
流石のレナも彼の偉そうな態度にため息を吐いていた。凄まじいほど自身を知らぬドン・キホーテぶり、あれはきっと自身のことを物語の主人公とでも思っているのだろう。
「じゃあ、私やります」
そう言い立ち上がったのは赤髪、朱色の瞳を持った少女だった。
「私はエヴァ・ローレシア、よろしく」
元気な声でそういうエヴァ。
ふと、思ったのだが自己紹介の割に名前しか言わないのは何故なのだろうか? 皆様方、自己紹介へのやる気がなさ過ぎではありませんか?
そんな疑問が過る中、レナが次の合図を送り、俺の隣の席の少女が立ち上がり教卓の前に向った。
「私はオリビア・ジルフィールです。どうぞみなさん、よろしくお願いします」
俺はハッと目を見開いてオリビアを見た。そして次にレナの方に視線を向けて真偽を確かめる。レナは俺の視線に気づくと小さく頷いた。
つまりそういう事なのだろう――
もう一度オリビアに視線を戻す。オリビア・ジルフィール、名前からしてアンドリュオの娘、つまりは彼から頼まれた護衛の相手だ。
なるほど。君が、そうだったか……
初めて彼女に会った時を思い出し、エヴァがフルネームを名乗ったのに対して彼女はオリビアという名しか名乗っていないことを思い出す。当たり前だ、王族である彼女があんな場所で名を簡単に明かせるわけがない。
その違和感に気づかなかったのが不思議なくらい異常は目の前にあった。
優雅に金色の髪を揺らして席に戻って行くオリビア、そんな様子を見てほんの少し護衛の仕事に対しての意欲が上がった気がする。
――彼女には絶対、〝何か〟ある……そう、思ったからだ。
不確かながら俺の中では確信めいたものがあった。
柄にもなく彼女を助けたあの時、あれは本当にただの気まぐれだったのか……それとも俺はあの時――
思考が深く稼働する。段々と表情から感情が無くなる。回転がジリジリと上がり余分を排斥、己の淵を俯瞰して覗いた。
「……ケイ……――」
この疑問は単に彼女が持っている〝謎〟だけじゃない。
「……ケイ、ヤ…――」
この疑問はきっと俺自身に対しての疑問でもある。そう、きっと俺自身の――
「ケイヤ!」
「っ――はい!」
思考が強制切断され、呼ばれた名前に反応する。周囲に目をやると既に俺を除く者の自己紹介は終わっているようで、レナの言葉に反応しなかった俺の様子に視線を集めていた。
「君で最後だ、速く」
「……了解です、レナ先生」
脳の収拾がいったところでそう答える。すると、レナがものすごく驚いたような表情、というよりは気持ち悪いような表情をした。
いや、確かに俺もそう思うけど、その露骨な反応やめい。
先生と呼ばれたレナの気持ちの悪そうな表情、あまりにも露骨、周囲の人間達が反応しないのが不思議なくらい変な表情をしている。
俺はそんな彼女の横を通り過ぎて教卓の前に行き、止まる。
「はぁ」
小さくため息を吐く。変な思考が直前にあったせいか、何を言えばいいのか特に考えていなかった。
ま、なんでもいいや……
「もう皆さん名前の方は知っているかもしれませんが、僕は神塚敬也、魔力無しということになっていますが一様多少の魔力はあります。まあ、とりあえずこんな奴ですが仲良くしてください」
そう自己紹介をしてみると数人が手をパチパチと叩き、さらに数人が怒気を孕んだ表情を見せ、その他は無関心な目を向けていた。
こう見ると感心のある人物の方が少ないことがよく分かる。
好意的にしろ、敵対的にしろ、感情を向けている人間というのは少ないものだ。例え俺がこの世界における嫌悪される立場においてもそういうモノ、みな基本は無関心であり、状況によって関心を示す。
人の感情はその場その場で大きく変動する、予測不可な〝事〟なのだ。
ゆっくりと席に戻る中、ふいにそんな思考が通り過ぎた。柄にもない、分かり切っていることなのにも関わらず、無駄に考えている。
本当に柄にもない、最近はそんなことが多い。いや、この世界に来てからだろうか? わからない……わからない……本当に理解できない、な。
自分でも理解できない行動に戸惑う。こうなってしまった原因はこの世界に来たからなのか、彼女達に出会ったからなのか、時間経過による記憶の露出なのか、それとも――
いや、これもまた無駄な思考か。フッ……
苦笑、無駄だ無駄だと理解して尚、続ける自身への自嘲的な笑い。
そう、本当に無意味な話だと……そう思うよ。
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