小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重

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閑話(アディ視点)

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 心配して今すぐにでも捜索を命じようとした俺の耳に、エイベット卿の低い声が聞こえてくる。


「――――まさか、奴が我らを裏切ったのか?」


 それは聞き捨てならない言葉だった。

「エイベット卿!!」

 ユウがそんな真似をするはずがない!

「このタイミングで姿を消すなど、それ以外考えられません。元々怪しい男でした。異世界から来たなどと言いながら、その実は有鱗種から送り込まれたスパイだったのかもしれません」

「ユウは、俺が異世界から召喚したのだと何度言えばわかる!?」

「そもそもそれがおかしいのです。異世界などというわけのわからぬ世界、そんなものが存在するはずがありません! それよりは、この事の全てが最初から有鱗種により仕組まれた罠だと考えた方がしっくりくる。有鱗種の中には鱗の無い無鱗と呼ばれる者もいると聞いた事があります。陛下は、あの男にダマされておられるのです!」

 エイベット卿は、そんな荒唐無稽な事を本気で信じているようだった。
 目を血走らせ、頬を紅潮させて俺に自身の考えを主張する。

 今すぐ否定しようとした俺を制して、エイベット卿を怒鳴りつけたのは、なんとリーファだった。


「エイベット卿。貴方は『神』を疑うおつもりですか!」


 その迫力に、エイベット卿が思わず息をのむ。

「ユウさまを召喚したのは神殿であり、巫女である私です。それ以前に、陛下に『神の賜いし御力』に縋り、相談する事をお勧めしたのも私です。その結果としてこの国におられるユウさまを疑う事は、『神』を疑う事に他なりません! エイベット卿、このままそのような戯言を続けるようであれば、あなたを神に背く意思ありと見なしますがよろしいのですね?」

 リーファがこんなにはっきりと人を責める姿を俺ははじめて見た。

 エイベット卿は赤くした顔を蒼くし、更には白く変えて動きを止める。
 他の者達も全員驚きに目を瞠ってリーファを見ていた。



 俺は静かにリーファに近づくとその肩に手を置く。

「……お兄さま。ユウさまは」

 そう言って震えるリーファをそっと引き寄せた。

「大丈夫だ。リーファ。ユウは無事だ。――――エイベット卿、私もリーファもユウを信じている。ユウは決してそんな事ができる男じゃない。お前とてユウに接してそれくらいはわかっているのだろう?」

 俺の言葉にエイベット卿は、ギュッと唇を噛む。


「……確かに、そんな真似ができる程賢そうな男ではありませんでしたな」

「エイベット卿!」

 せっかく落ち着きそうだったリーファが、また怒りを爆発させる。
 しかし今度の怒りには、先刻ほどの恐ろしさはなかった。



 リーファを宥めながらも情報を俺は集める。

 その結果、ユウと共にユウに付けていたティツァという獣人の男も姿を消しており、二人共城内のどこにもいないらしいという事が判明した。

「何らかの手段で危険を察知したティツァがユウを連れて城から逃げたのかもしれない」

 それは俺の希望的観測だった。

「自分ひとりで逃げ出すなど、言語道断の行為だ」

 エイベット卿がプリプリと怒り出すが、俺は本当にそうであってくれればと心の底から願う。
 ユウが無事でいるのならばそれ以上の事はない。




 俺がほんの少しではあるがホッとした瞬間――――それは起こった。

 グワァン! という今までで一番大きな爆発音が直ぐ近くで聞こえる。


「陛下! お逃げ下さいっ」


 叫びながらコヴィが部屋に飛び込んできた。
 彼の背後で再びドン! という爆発が起こり、コヴィが吹き飛び俺の足元に転がる。
 うつぶせたその背は、真っ赤な血に染まっていた。


『見つけたぞっ! ロダの一族』


 二度と聞きたくないと思っていた有鱗種の言葉が聞こえてくる。
 何を言っているのかはわからなくとも、『ロダ』という単語だけは聞き取れた。



 視線を向けた部屋の入口には、鱗に覆われた大きな体。


(……ユウ、どうか無事逃げていてくれ)


 絶望の中、俺は心からそう願ったのだった。
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