3 / 102
第一章 異世界の住人はとても個性的でした。
魔女と女騎士2
しおりを挟む
「な、何でワシの温泉にあんな”モノ”が浮かんでおるのじゃ!?」
ディアナが怒鳴る。
「フム。土左衛門かな?」
動じぬウルフィアは、歴戦の騎士だ。今更死体の一つや二つどうということもない。
とんでもないと、ディアナは怒った。
「ワシの温泉にケチが付く! さっさと拾わんか!」
何で私がと、思わぬでもなかったが、まさかディアナに拾わせるわけにもいかないかと、ウルフィアは腰を庇いながらも温泉に入り死体を拾う。
「おや?」
素っ裸の死体を引っ張り上げながら、ふと違和感を感じた。 おもむろにあまり大きくない胸に耳を当てる。
「ディアナ、この死体生きておるぞ」
ウルフィアの耳に、はっきりと心臓の鼓動が聞こえた。
ディアナの顔が、嫌そうに歪む。
「もう暫く……死ぬまで捨てておけ!」
そう怒鳴り返された。
まさかそうもいくまいと、ウルフィアは死体――――元へ、気絶している女性を抱えてディアナの元に戻る。彼女の体は、びっくりするくらい軽かった。
「フム。この軽さは子供かな?」
そう思わざるを得ないほど華奢な体だ。
ウルフィアは、嫌そうなディアナの足元に女性の体を横たえた。
とりあえず気道を確保するため顎を上に上げる。
無理に水を吐かせる事は、かえって嘔吐物を喉に詰まらせる事があるから危険なのだ。
口元に耳を寄せれば、女性はしっかりと呼吸していた。胸の上下も規則正しい。
さほど心配いらないと、何度も死線をくぐり抜けてきたウルフィアは判断した。
「ディアナ、あなたのローブを貸してくれ」
「何でワシが……」
ブツブツ言いながらも、ディアナは黒いローブを脱いでこちらに寄越してきた。
それをウルフィアは、女の体にグルグル巻きで巻きつける。
「全くとんだ厄介者が一緒に付いて来てしまったものじゃ。ワシの一世一代の魔法が台無しじゃ」
ローブを脱ぎ寒そうに体を震わせたディアナが不満をこぼす。
「この少女が、あなたの召喚魔法に巻き込まれてここにいるという事実は、認められるのだな?」
ウルフィアが確認すれば、ディアナはフンと鼻を鳴らした。
「何もないところに今までいなかった者を呼び寄せるような大がかりな魔法を使える者はワシ以外におらぬからな」
大威張りで話すディアナ。
ここは威張れないところだろうと、ウルフィアは頭を抱えた。
「では、当然彼女の面倒は、あなたが見るのだろう?」
「何でそうなる? 身元不明の不審人物の保護など役人の仕事であろう」
「この村の役人が、その責任を負うと思うか?」
ウルフィアは、この長閑な村の役場にいるたった一人の役人を思い出していた。
悪い人間ではないが、どうにもやる気というものが見えない事なかれ主義の男。
ディアナも同じ人物を思い出したのだろう、しかめられていた顔を、なお酷くしかめた。
そのまま何か悪態をつこうとして口を開く――――
しかし、その口は言葉を発せずに閉じられた。
ローブで、す巻きになっていた女性が、突如ウゥ~ッと呻いたのだ。
ウルフィアは、落ち着いてその場から一歩下がる。
次の瞬間、狙いすましたように、ウルフィアの下がったその場所に、気絶していた女性は、ゲェ~ッと飲んでいた水を吐き出した。
「グッ…ゲホ、ゲホ…ッ!」
逃げ損ねたディアナの足元に吐き出した水がはねた。
ものすごい表情でディアナはウルフィアを睨みつける。
しかし、文句を言おうとして開いた口は、また言葉を発せずに閉じられた。
「××、○△×!」
倒れていた女性が起き上がり叫んだのだ。
「なんじゃ何と言ったんじゃ?」
「言葉が通じないのだろう」
沈着冷静にウルフィアは事実を指摘する。
どこからきたともわからぬ者と言葉が通じる方が不思議だった。
「なんと厄介な奴なんじゃ」
ディアナが天を仰ぐ。
――――全くもって、その通りだった。
ディアナが怒鳴る。
「フム。土左衛門かな?」
動じぬウルフィアは、歴戦の騎士だ。今更死体の一つや二つどうということもない。
とんでもないと、ディアナは怒った。
「ワシの温泉にケチが付く! さっさと拾わんか!」
何で私がと、思わぬでもなかったが、まさかディアナに拾わせるわけにもいかないかと、ウルフィアは腰を庇いながらも温泉に入り死体を拾う。
「おや?」
素っ裸の死体を引っ張り上げながら、ふと違和感を感じた。 おもむろにあまり大きくない胸に耳を当てる。
「ディアナ、この死体生きておるぞ」
ウルフィアの耳に、はっきりと心臓の鼓動が聞こえた。
ディアナの顔が、嫌そうに歪む。
「もう暫く……死ぬまで捨てておけ!」
そう怒鳴り返された。
まさかそうもいくまいと、ウルフィアは死体――――元へ、気絶している女性を抱えてディアナの元に戻る。彼女の体は、びっくりするくらい軽かった。
「フム。この軽さは子供かな?」
そう思わざるを得ないほど華奢な体だ。
ウルフィアは、嫌そうなディアナの足元に女性の体を横たえた。
とりあえず気道を確保するため顎を上に上げる。
無理に水を吐かせる事は、かえって嘔吐物を喉に詰まらせる事があるから危険なのだ。
口元に耳を寄せれば、女性はしっかりと呼吸していた。胸の上下も規則正しい。
さほど心配いらないと、何度も死線をくぐり抜けてきたウルフィアは判断した。
「ディアナ、あなたのローブを貸してくれ」
「何でワシが……」
ブツブツ言いながらも、ディアナは黒いローブを脱いでこちらに寄越してきた。
それをウルフィアは、女の体にグルグル巻きで巻きつける。
「全くとんだ厄介者が一緒に付いて来てしまったものじゃ。ワシの一世一代の魔法が台無しじゃ」
ローブを脱ぎ寒そうに体を震わせたディアナが不満をこぼす。
「この少女が、あなたの召喚魔法に巻き込まれてここにいるという事実は、認められるのだな?」
ウルフィアが確認すれば、ディアナはフンと鼻を鳴らした。
「何もないところに今までいなかった者を呼び寄せるような大がかりな魔法を使える者はワシ以外におらぬからな」
大威張りで話すディアナ。
ここは威張れないところだろうと、ウルフィアは頭を抱えた。
「では、当然彼女の面倒は、あなたが見るのだろう?」
「何でそうなる? 身元不明の不審人物の保護など役人の仕事であろう」
「この村の役人が、その責任を負うと思うか?」
ウルフィアは、この長閑な村の役場にいるたった一人の役人を思い出していた。
悪い人間ではないが、どうにもやる気というものが見えない事なかれ主義の男。
ディアナも同じ人物を思い出したのだろう、しかめられていた顔を、なお酷くしかめた。
そのまま何か悪態をつこうとして口を開く――――
しかし、その口は言葉を発せずに閉じられた。
ローブで、す巻きになっていた女性が、突如ウゥ~ッと呻いたのだ。
ウルフィアは、落ち着いてその場から一歩下がる。
次の瞬間、狙いすましたように、ウルフィアの下がったその場所に、気絶していた女性は、ゲェ~ッと飲んでいた水を吐き出した。
「グッ…ゲホ、ゲホ…ッ!」
逃げ損ねたディアナの足元に吐き出した水がはねた。
ものすごい表情でディアナはウルフィアを睨みつける。
しかし、文句を言おうとして開いた口は、また言葉を発せずに閉じられた。
「××、○△×!」
倒れていた女性が起き上がり叫んだのだ。
「なんじゃ何と言ったんじゃ?」
「言葉が通じないのだろう」
沈着冷静にウルフィアは事実を指摘する。
どこからきたともわからぬ者と言葉が通じる方が不思議だった。
「なんと厄介な奴なんじゃ」
ディアナが天を仰ぐ。
――――全くもって、その通りだった。
3
あなたにおすすめの小説
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる