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第一章 異世界の住人はとても個性的でした。
吸血鬼は偏食のダイエッター
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暖の頭の中で、黒いコウモリがパタパタと飛び回る。
フフッと微笑んだ美女は、自分の名は「ラミアー」だと名乗った。
吸血鬼とは言っても、人の生き血を栄養分として接種できるだけの長生きな種族で、伝説などとは違い日光もニンニクもまったく平気なのだと。
しかし、暖がポカンとした理由は決して吸血鬼という存在に驚いたからばかりではなかった。
魔女がいて竜がいてエルフまでいるこの世界。
吸血鬼でも狼男でもなんでも来いと、暖的には思っている。
暖が驚いたのは ……
(吸血鬼なのに、貧血なの!?)
その一点だけである。
それは吸血鬼としてダメダメなのではないだろうか?
「ラミアー、血、吸ウノ?」
「あなた、私の話を聞いていた? 栄養分の一つとして摂取可能なだけだと言ったでしょう? 誰が好き好んで他人の首なんか噛みたいものですか! ……臭いし、絶対嫌よ!」
美人吸血鬼は、目をつり上げて怒る。
それでは貧血になるのも仕方ないかもしれなかった。
念のため、暖はラミアーに他の好き嫌いも聞いてみる。
抜群のプロポーションが自慢の彼女は、出るところは出ているのにウエストが細い。その細さから予想した通り、彼女はかなりダイエットを頑張っていた。
「基本朝食は食べないわね。パンや甘い果実も出来るだけ減らしているわ。あと肉や卵も嫌いよ」
それでどうやって血の代わりに必要な栄養素をとれるのだろう?
貧血以外でもいろいろ問題の有りそうなラミアーだ。
よく見れば顔色が悪いだけではなく肌荒れも酷い。
暖に向かって怒鳴っただけで息を切らした美女は、ぐったりと椅子にもたれかかった。
「ダイエット、ダメ」
暖の言葉にラミアーはギロリと睨みつけてくる。
もう怒鳴る元気もないようだ。
「あなたみたいなお子さま体型に言われたくないわ。吸血鬼にとって美しく在ることは、生きていく上での最優先課題なのよ」
それは他人の血を吸うために必要なことなのではないだろうか?
相手を魅了し近づいて血を吸う吸血鬼。
血を吸わないラミアーには、そこまでして美しく在ることは必要ないことだと思われる。
(こういうのを本末転倒って言うの? それとも目標を追って目的を忘れる?)
なんにせよ、ラミアーに過度のダイエットは不要というよりもしてはならないことだった。
「…… コノママダト、オ肌、モット、荒レルヨ」
暖の言葉にラミアーはギクリとする。
やはり肌荒れは女性にとって気になる事なのだ。
「良カッタラ、オ肌スベスベ、教エヨウカ?」
「教えなさい!」
間髪入れずラミアーは叫ぶ。ズイッと暖に近づいて来た。
暖は、ニコリと笑う。
「マズ、朝ゴ飯抜キ、ダメ! 好キ嫌イモ、バツ!」
両手の人さし指を立てて、バッテンに交差させて見せる暖。
ラミアーはムッと顔をしかめた。
「血は吸わないわよ」
暖は慌ててコクコクと頷いた。血を吸われるのは暖だって嫌だ。
「バランス良ク食ベル、大切。トマト、蜂蜜――――」
暖は肌荒れに良さそうな食べ物を次々とあげる。
次いで貧血の治療も必要だろうと思い、貧血に良さそうな食べ物もあげてみた。
「レバー、アサリ――――アト、ビタミンCイルカラ、レモンジュース!」
ラミアーは、……思いっきり顔をしかめた。
「それをみんな食事でとるの? そんな面倒なこと私できないわ」
ツンとあごを上げ断言するラミアー。
「デモ、ソレジャ治ラナイ」
この世界に便利なサプリメントがあるとは思えない。血を吸えないのなら食事療法以外ないだろう。
途方に暮れる暖を、ラミアーは覗きこんできた。
「あなたが、私の食事を作りなさい」
絶世の美女は、高飛車にそう言った。
◇◇◇
その後、結局ラミアーに押しきられ、暖は彼女の食事を作る羽目になった。
食事の世話をするとなれば一緒に住むのが一番だ。
そう話が落ち着いたため、暖はラミアーを暖とディアナの住む家に連れて来た。
「なあに? このボロ家。こんなところに私を住まわせるつもりなの?」
ラミアーは不機嫌そうに唇を尖らせる。
当然、ディアナは烈火のごとく怒った。
しかもその怒りは何故か暖に向かう。
「お前はバカか! 吸血鬼など不老不死の化け物なのだぞ! 貧血だろうが不治の病だろうが、こいつらが弱ったりましてや死ぬわけがない。こんな化け物など放っておいてかまわなかったのだ!」
「へ?」
暖はビックリして呆けてしまう。
そんな話は、聞いてない。
「お言葉ね。私が具合が悪いのは本当なのよ」
ラミアーはムッと顔をしかめる。
「生きるのに飽いたからじゃろうが! 血を吸う気が失せたのも、こんな所に黙って押し込まれるのも、全てお前が棺桶に片足突っ込んでいるからじゃ! この死に損ないめ!」
「あら、吸血鬼に棺桶なんて、あなたもうまい事言うわね」
ラミアーは、コロコロと笑った。
「流石ディアナ。世界最強の魔女にして、この ”危険物廃棄場” の番人だわ。……もっとも番人自身が自分を閉じ込めているところは、お笑いだけど」
ディアナは、剣呑な目付きでラミアーを睨む。
杖を大きく振りかぶった。
「キャア」と、わざとらしい悲鳴を上げ、ラミアーは暖の後に隠れる
「ボ、暴力反対!」
慌てて暖はディアナを手で押し止めた。
「退け! その死にぞこないの吸血鬼に、わしが引導を渡してやる!」
「まあ! ほんの少し前だったら喜んでお引き受けするとっても魅力的なお誘いだけど……今は、お断りするわ。新しいオモチャを見つけたから」
そう言ってラミアーは、暖の腕を掴んだ。
「このちっぽけな人間が、私をどうやって治してくれるのか、私は興味津々なの。……そうね、むこう百年くらいはこの子と遊ぶから、私を殺すのはそれからにしてくれる?」
いや、どうやったって百年も暖がラミアーに付き合えるはずがない。
暖は絶対無理だと首を横に振った。
ディアナも呆れたようにため息をつく。
「好きにせい。全く吸血鬼の気まぐれには付き合いきれん。そのくせ後始末だけはこちらに丸投げにしおって」
不満そうにディアナはこぼした。
それでもラミアーが一緒に暮らす事を了承してくれる。
「ただし、わしは何もせんからな!」
高らかに宣言する魔女。
元々何もしてないだろうとは、言えない暖だった。
フフッと微笑んだ美女は、自分の名は「ラミアー」だと名乗った。
吸血鬼とは言っても、人の生き血を栄養分として接種できるだけの長生きな種族で、伝説などとは違い日光もニンニクもまったく平気なのだと。
しかし、暖がポカンとした理由は決して吸血鬼という存在に驚いたからばかりではなかった。
魔女がいて竜がいてエルフまでいるこの世界。
吸血鬼でも狼男でもなんでも来いと、暖的には思っている。
暖が驚いたのは ……
(吸血鬼なのに、貧血なの!?)
その一点だけである。
それは吸血鬼としてダメダメなのではないだろうか?
「ラミアー、血、吸ウノ?」
「あなた、私の話を聞いていた? 栄養分の一つとして摂取可能なだけだと言ったでしょう? 誰が好き好んで他人の首なんか噛みたいものですか! ……臭いし、絶対嫌よ!」
美人吸血鬼は、目をつり上げて怒る。
それでは貧血になるのも仕方ないかもしれなかった。
念のため、暖はラミアーに他の好き嫌いも聞いてみる。
抜群のプロポーションが自慢の彼女は、出るところは出ているのにウエストが細い。その細さから予想した通り、彼女はかなりダイエットを頑張っていた。
「基本朝食は食べないわね。パンや甘い果実も出来るだけ減らしているわ。あと肉や卵も嫌いよ」
それでどうやって血の代わりに必要な栄養素をとれるのだろう?
貧血以外でもいろいろ問題の有りそうなラミアーだ。
よく見れば顔色が悪いだけではなく肌荒れも酷い。
暖に向かって怒鳴っただけで息を切らした美女は、ぐったりと椅子にもたれかかった。
「ダイエット、ダメ」
暖の言葉にラミアーはギロリと睨みつけてくる。
もう怒鳴る元気もないようだ。
「あなたみたいなお子さま体型に言われたくないわ。吸血鬼にとって美しく在ることは、生きていく上での最優先課題なのよ」
それは他人の血を吸うために必要なことなのではないだろうか?
相手を魅了し近づいて血を吸う吸血鬼。
血を吸わないラミアーには、そこまでして美しく在ることは必要ないことだと思われる。
(こういうのを本末転倒って言うの? それとも目標を追って目的を忘れる?)
なんにせよ、ラミアーに過度のダイエットは不要というよりもしてはならないことだった。
「…… コノママダト、オ肌、モット、荒レルヨ」
暖の言葉にラミアーはギクリとする。
やはり肌荒れは女性にとって気になる事なのだ。
「良カッタラ、オ肌スベスベ、教エヨウカ?」
「教えなさい!」
間髪入れずラミアーは叫ぶ。ズイッと暖に近づいて来た。
暖は、ニコリと笑う。
「マズ、朝ゴ飯抜キ、ダメ! 好キ嫌イモ、バツ!」
両手の人さし指を立てて、バッテンに交差させて見せる暖。
ラミアーはムッと顔をしかめた。
「血は吸わないわよ」
暖は慌ててコクコクと頷いた。血を吸われるのは暖だって嫌だ。
「バランス良ク食ベル、大切。トマト、蜂蜜――――」
暖は肌荒れに良さそうな食べ物を次々とあげる。
次いで貧血の治療も必要だろうと思い、貧血に良さそうな食べ物もあげてみた。
「レバー、アサリ――――アト、ビタミンCイルカラ、レモンジュース!」
ラミアーは、……思いっきり顔をしかめた。
「それをみんな食事でとるの? そんな面倒なこと私できないわ」
ツンとあごを上げ断言するラミアー。
「デモ、ソレジャ治ラナイ」
この世界に便利なサプリメントがあるとは思えない。血を吸えないのなら食事療法以外ないだろう。
途方に暮れる暖を、ラミアーは覗きこんできた。
「あなたが、私の食事を作りなさい」
絶世の美女は、高飛車にそう言った。
◇◇◇
その後、結局ラミアーに押しきられ、暖は彼女の食事を作る羽目になった。
食事の世話をするとなれば一緒に住むのが一番だ。
そう話が落ち着いたため、暖はラミアーを暖とディアナの住む家に連れて来た。
「なあに? このボロ家。こんなところに私を住まわせるつもりなの?」
ラミアーは不機嫌そうに唇を尖らせる。
当然、ディアナは烈火のごとく怒った。
しかもその怒りは何故か暖に向かう。
「お前はバカか! 吸血鬼など不老不死の化け物なのだぞ! 貧血だろうが不治の病だろうが、こいつらが弱ったりましてや死ぬわけがない。こんな化け物など放っておいてかまわなかったのだ!」
「へ?」
暖はビックリして呆けてしまう。
そんな話は、聞いてない。
「お言葉ね。私が具合が悪いのは本当なのよ」
ラミアーはムッと顔をしかめる。
「生きるのに飽いたからじゃろうが! 血を吸う気が失せたのも、こんな所に黙って押し込まれるのも、全てお前が棺桶に片足突っ込んでいるからじゃ! この死に損ないめ!」
「あら、吸血鬼に棺桶なんて、あなたもうまい事言うわね」
ラミアーは、コロコロと笑った。
「流石ディアナ。世界最強の魔女にして、この ”危険物廃棄場” の番人だわ。……もっとも番人自身が自分を閉じ込めているところは、お笑いだけど」
ディアナは、剣呑な目付きでラミアーを睨む。
杖を大きく振りかぶった。
「キャア」と、わざとらしい悲鳴を上げ、ラミアーは暖の後に隠れる
「ボ、暴力反対!」
慌てて暖はディアナを手で押し止めた。
「退け! その死にぞこないの吸血鬼に、わしが引導を渡してやる!」
「まあ! ほんの少し前だったら喜んでお引き受けするとっても魅力的なお誘いだけど……今は、お断りするわ。新しいオモチャを見つけたから」
そう言ってラミアーは、暖の腕を掴んだ。
「このちっぽけな人間が、私をどうやって治してくれるのか、私は興味津々なの。……そうね、むこう百年くらいはこの子と遊ぶから、私を殺すのはそれからにしてくれる?」
いや、どうやったって百年も暖がラミアーに付き合えるはずがない。
暖は絶対無理だと首を横に振った。
ディアナも呆れたようにため息をつく。
「好きにせい。全く吸血鬼の気まぐれには付き合いきれん。そのくせ後始末だけはこちらに丸投げにしおって」
不満そうにディアナはこぼした。
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