まだまだこれからだ!

九重

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第二章 平穏な日々ばかりではないようです。

いつも以上に不機嫌な王子さま

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 一方、うららはギオルに言われた通り、ディアナの元に走った。

 なのに――――

「どこへ行っておった! 早く王子の元に行かんか!」

 顔を見せるなり、暖はディアナに怒鳴りつけられる。

「え?」

「早く行け!」

 暖は慌てて飛び出した。

「いったい、どうなっているのぉ!?」

 彼女の疑問に答えてくれる者はいない。
 そうして息を切らせてアルディアのところに行ったのに――――

「何しに来た?」

 待っていたのは、いつも通りの不機嫌顔のアルディアだった。




「ディ、ディアナが、行けって」

「また言葉が日本語に戻っているぞ。……私は、お前に用などない」

 ――――いや、いつも通りではなかった。
 いつも以上に、不機嫌なアルディアだ。

 暖は、目を白黒させる。
 その場にはウルフィアやサーバスもいて、アルディアに何かを言いたそうにしているのだが、王子に睨み付けられ口を出す事が出来ないでいる。
 それでも、暖には何となくアルディアの不機嫌の原因がわかった。

 先ほど聞いた、スゥェンの話――――


「魔族、報セ、アルディアノ所ニモ、来タ?」


 アルディアは、ギクリと体を震わせた。

「何で! お前っ――――」

 怒鳴ろうとして、アルディアは途中で言葉を止めた。
 眉間にしわを寄せツンと横を向く。


「お前には、関係ない」


 顔を反らせ素っ気なくそう言った。
 彼の横顔は、全てを拒絶しているよう。

 ウルフィアとサーバスが、また何かを言おうとしてアルディアに睨み付けられ黙る。


 暖は……それはそうだろうと、思った。

 起こっているのは国の一大事だ。
 戦争なんて事が、暖に関係のあるはずがない。
 彼女はこの国に生まれたわけでもなんでもない異世界の人間で、ただの居候でしかないのだ。

 それは、暖が一番よくわかっている。


「――――うん。そうよね」

 だから暖はそう言った。
 アルディアは、びっくりした顔で、暖を見てくる。
 暖はニコリと笑った。

「魔族がどうしようが、私には関係ないわ。……でも、アルディアの健康状態は気になるの。……アルディア、ひょっとして魔族と戦いが起こったせいでお城に帰ったりするの?」

 暖がそう聞けば、アルディアはますます驚いたように口をポカンと開けた。
 返事がないということは彼は城へ帰るということなのだろう。

(アルディア、最近元気になったものね)

 魔族との戦いなんて一大事だ。きっと国を挙げての戦いになるだろう。
 病気のアルディアが戦いでいさおしをあげられるとはとても思えないが、しかし王族なんて戦争の旗印のお飾りみたいなものだと、暖は何かの本で読んだことがある。

 大きな戦いであればあるだけ旗印はたくさんいるはずだった。

(親征とか言うんだっけ? 王様とか偉い人が直接進軍することで兵の士気をあげるのよね)

 暖は思わずため息をもらした。
 病気で役立たずの王子とはいえ王子は王子。いや、役立たずと思われていればこそアルディアには真っ先に白羽の矢が立つのだと思われた。



(戦争なんて危険なものに、行って欲しくない)

 そう暖は思う。
 しかしそれはあくまで暖個人の感傷。
 国と国との戦争に、一個人、しかもその国の国民でもない者の思いが考慮されるはずもない。



 だから――――
 暖は顔を上げた。

「アルディア! 薬、毎日必ズ飲ム! 食ベチャダメ食べ物一覧表作ル、持ッテ行ッテ! 急ニ走ッタリ怒鳴ッタリ、ダメ! 後、ソレカラ――――」

 暖はアルディアに注意しなければならないと思うものを、端からペラペラと話し出した。
 後で通じなかったと言われないため、日本語ではなくこちらの言葉でたどたどしくも延々と話す。

 アルディアもウルフィアもサーバスも、そんな暖に呆気にとられた。

「ソレカラ、ソレカラ――――」

 暖の言葉は、止まらない。

「おい! ちょっと待て!」

 流石にアルディアが止めた。

「お前、なんだそれは!?」

「アルディア、気ヲツケル事! 遠クデ発作起キテモ、私、行ケナイカラ」

 暖は大真面目だった。
 食べ物に気を使い、せっかくここまで元気になったアルディアが、遠くで発作を起こし、死にでもしたら絶対イヤだ。


「アルディア、スグ、無理スル! 自分ノ体、大事! 命、大事! ……死ナナイデ!」


気づけば、暖はポロポロと泣いていた。
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