まだまだこれからだ!

九重

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第四章 選んだ先の未来へ向かいます!

正妃に必要なものは?

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 その後ようやくうららは話をはじめる。

(ごちゃごちゃと回りくどいのは苦手だわ。……私の語力で、かまをかけるなんて無理だし)

「魔界、滅亡シソウ、知ッテル?」

 結果、暖は単刀直入に聞いてみた。

 突然の質問に、モノアとイノトは驚いて目を丸くする。
 正妃はピクリとも表情を動かさなかった。
 しかし、あまりに動じないその姿は、かえって彼女が間違いなく魔界滅亡の話を知っていただろうということを暖に確信させる。
 相変わらず空気を読まないブラットは、ケラケラと笑いだした。

「何? あの馬鹿げた噂、子豚ちゃんの耳にまで入っているの?」

 彼がその話を信じていないのは、聞くまでもない。

「魔界は、一万年の歴史を誇る永遠の世界だよ。滅びるはずがないだろう?」

 得々と語るブラット。
 暖は、静かに彼に問いかけた。

「ブラット、弟、妹、イル?」

「なんだい? 藪から棒に。俺に弟妹なんていないよ。そんな面倒くさいモノ必要ないからね」

 やはり、と暖は思った。
 ブラットは三十歳。つまり三十年くらい前から、魔王の子供は一人も生まれていないのだ。
 後宮には、モノアやイノト以外の側妃が大勢いる。
 正妃だって、威厳と貫禄と同時に妖艶な魅力を漂わせる妙齢の美女だ。

(もっと、バンバン子供が産まれていたって不思議じゃないわよね?)

 なのに後宮に子供はいない。
 暖は悲しい気持ちで、正妃やモノア、イノトの細すぎる腰を見た。
 痩せている人でも子沢山の人は多い。腰が細いからといって子供が産めないわけでは決してない。

(……でも、細いと言っても限度があるわ)

 少なくとも、生理が止まってしまえば子供を産むことなど望めるはずもない。


「正妃さま……生理アル?」


 折れそうなほどに細い腰を見つめて、暖は問いかけた。

「ウララ!」

 途端、モノアが青い顔で飛び上がるように立ちあがる。

「も、申し訳ありません! 正妃さま。ウララは後宮のことがよくわからないのです! 彼女の無礼は私が謝罪します!」

 ブルブルと震えながらモノアは必死に頭を下げる。
 暖の質問に一瞬顔色を変えた正妃は……大きく息を吐き出した。

「落ち着きなさい、モノア。私は、この者の報復魔法の威力を試そうとは思っていませんよ」

 正妃の言葉を聞いたモノアは、ヘナヘナと腰が抜けたように椅子にへたり込む。
 その様子に苦笑しながら正妃は暖の方へと視線を向けてきた。
 こちらを向いた途端、彼女は表情を引き締める。

「ウララ……今のそなたの発言は、私の正妃としての資格を問うているものだと、わかってのものですか?」

 魔王の妃として第一に求められるものは、魔王の子を産むこと。
 暖の質問は、正妃に妃の資格があるのかと詰問しているに等しい。

 暖は小さく、しかし、はっきりと頷いた。

「妃、仕事、子供産ムダケ、違ウ思ウケド。子孫繁栄、大事、ワカル。……ダカラ、教エテ」

 正妃は虚を衝かれたようにハッとした。

「――――子供産むだけ、違う?」

 思ってもみなかったのだろう、暖の言葉をそっくりそのまま繰り返す。

「当タリ前! 夫婦、協力シテ生キル! 王ト王妃ナラ、国、統治モ、一緒! 子供産ムダケ、妃、務マラナイ!」

 国のトップレディとなる王妃にとって大切な資質が、子供を産むだけのはずがない。
 王を補佐し、支え、時には王になりかわり政治の矢面に立たねばならぬこともある。

「子供産ムダケ、妃、ナクテモデキル。ソレダケ全テ、ナイヨネ?」

 ぶっちゃけ自分の子供が欲しいだけなら相手は女性であれば誰でもいい。
 正妃はもちろん、側妃であるモノアやイノトだって、種族のバランスや生家の身分、何より彼女ら自身の資質や教養、考え方等の全てを考慮されて選ばれているはずだ。

(いくらあの魔王でも、それくらいは考えているわよね?)

 そうでなければ、長年魔王の座に就いていられたはずがない。
 何より目の前の正妃は、ただ美しいだけの女性とは思えなかった。

 暖の言葉に正妃は、静かに目を閉じた。

「……そなたの言うとおりね。どうやら私は、子を産むという一事にこだわり過ぎて正常な判断を失っていたようだわ」

 長く息を吐き出し目を開けた正妃はフッと笑った。


「後継争いで我が子を失い、新たな子を授かることがも、私が魔界の正妃であることは変わりない。……わかっていたはずなのに」


 正妃の言葉に、モノアとイノトが弾かれたように立ち上がった。

「正妃さま!」

 悲鳴のように叫ぶ二人の側妃に、正妃は美しく笑いかけた。



「ウララ。そなたの想像どおりよ。……私に生理はない。私だけでなく、このモノアやイノト、他のどの妃も同じ。――――今、この後宮に子をなす力を持つ者はいないわ」


正妃は、はっきりとそう言った。
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