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第四章 選んだ先の未来へ向かいます!
魔女ではなく”なまはげ”だったようです
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「温泉?」
あまりにテンションの高い暖に、さすがの正妃もタジタジとなる。
「ソウ! 温泉! 温カイ、オ湯。ユックリ、タップリ、ノンビリ、入ッテ、健康バッチリ! 心、体、元気ナル! 魔界、温泉ナイ?」
片言ながら暖は言葉を連発する。
身振り手振りをまじえて、温泉の説明をした。
「……えっと、それって大きなお風呂のことかしら?」
笑みを引きつらせながらモノアが質問した。
後宮には、どこぞの温泉施設も真っ青なくらい大きい豪華絢爛な浴室がある。
モノアの質問は、全員思ったことだった。
しかし、暖は「違ウ!」と大声で否定する。
「温泉、タダノオ湯ナイ! 決メラレタ成分入ッテル、効能アル! 体、トッテモ癒サレル!」
日本には温泉法というものがあり、決められた成分が一定以上含まれているものを温泉という。
ただのお風呂と温泉は明確に区別がつくのだ。
「温泉、国ノ法デ定義サレテイル!」
だから違うのだと、暖は声高に主張した。
「そんな……法? は、聞いたことがないわ」
「それって、必要なものなの?」
「人間というものは、おかしな法を作るのね」
正妃とモノア、イノトは不思議そうな顔をして首を傾げる。
もちろん、この世界の人間界にそんな法律はないはずだった。
なにせ、異世界日本から温泉を召喚するぐらい温泉がない国なのだ。
地球にしたって日本のような温泉文化を持つ国は少ない。温泉法なるものが外国にあるかどうかは、暖だって知らなかった。
しかし、今その説明を正妃たちにする必要はないだろう。
重要なのは魔界に温泉があるかどうかだ。
その後、暖は片言を駆使してモノアと正妃から魔界の温泉情報を聞き出そうとした。
――――結果、暖にとって非常に残念なことに魔界には温泉がないことが判明する。
魔族は頑健な種族。温泉で疲れをとったり、ましてや治療をしたりすることはなかったのだ。
「ナイモノハ、仕方ナイワヨネ」
暖は意外にあっさりと納得する。
しかし、決して温泉を諦めたわけではなかった。
こと温泉に関して、暖が諦めることなんて天地がひっくり返ってもありえない!
暖をよく知る妹や親友、何より義弟がその事実を声を大にして証言してくれるだろう。
「ナイナラ、作レバ、OK!」
案の定、暖は力強くそう宣言した。
「作る?」
不思議そうに首を傾げる正妃たち。
暖は大きく頷いた。
「私、知リ合イ、温泉呼ベル人イル!」
ニコニコと笑う暖の笑顔は、無敵だ。
虫の知らせとでもいうのだろうか、正妃たちの背中にブルッと悪寒が走る。
「……ウララ、その人って?」
恐る恐るモノアが聞いた。
「チョット気難シイ、オバアチャン。デモ、ホントハ優シイ! 大丈夫!」
暖はドンと大きく胸を叩く。しかし、あまりに強く叩きすぎたせいで派手にゴホゴホとむせた。
正妃とモノア、イノトやブラットまでもが、むせる暖を不安そうに見つめる。
「……その人の名は?」
聞いてはいけない! 何故かそう思いながら、しかし話の流れで聞かないわけにもいかず、正妃はたずねた。
聞かれて、暖はにっこり笑う。
「ディアナ!」
きっぱりと、暖は答えた。
…………どこかで聞いた名だなと、正妃は思う。
モノアとイノトは、なんだか聞き覚えはあるものの思い出すことができずに首を傾げる。
ブラットは――――大きく目を見開いた。
次の瞬間、まるで鬼の首をとったかのようなドヤ顔で立ち上がる。
「ついに正体を表したな! やっぱり、お前は魔界を滅ぼすために人間界から送り込まれた刺客だろう!」
暖をピシッと指さしながらブラットは大声で叫んだ。
一方、さされた暖は目をパチクリさせる。
「ブラット?」
正妃も不思議そうな声をあげた。
ブラットは、ますます声を大きく張り上げる。
「なにが優しいおばあちゃんだ! ……『ディアナ』とは忌み嫌われた魔女の名! 魔族の子供が言うことを聞かない時に脅しに使われる恐怖の対象だ!」
――――魔界では『悪い子になるとディアナが来るよ』と子供を脅すのだという。
悪い子の代表だったブラットにとって、その名は忘れようのない恐怖の対象だった。
(……ディアナったら、魔女じゃなくて“なまはげ”なの!?)
秋田県の有名な伝統行事を思い出した暖は、心の中で大声をあげる。
「……ブラット。あなたという子は。いくらなんでもそれは言いがかりよ。『ディアナ』はおとぎ話の中の魔女でしょう?」
正妃が深々とため息をつく。モノアや、イノトでさえも呆れ顔だ。
「違う!」
ブラットは首をブンブンと振って否定した。
「違う! 違う! こいつは間違いなく人間の刺客なんだ! ――――ダンケルが人間界から魔界に連れ込んだ災いに違いない!」
ブラットが「ダンケル」と言った瞬間、正妃の顔が強張った。
表情がすっかり抜け落ち、美しい顔がまるで能面のように変化する。
「……ダンケル?」
何の感情もうかがえない冷たい声が、正妃の口からもれた。
「そうだ! こいつは、ダンケルが後生大事に抱えてきた女なんだ! ダンケルの奴、後宮から魔界乗っ取りを企んでいるに違いない!」
ダンケルは誰もが認める魔王の嗣子である。彼が魔界を乗っ取る必要は、これっぽっちもない。
ブラットの言い分は理の通らないものであったが、彼は自信たっぷりに言い切った。
そして、その言葉が響いた次の瞬間――――
正妃の体から、膨大な威力の攻撃魔法が、暖をめがけ放たれた!
あまりにテンションの高い暖に、さすがの正妃もタジタジとなる。
「ソウ! 温泉! 温カイ、オ湯。ユックリ、タップリ、ノンビリ、入ッテ、健康バッチリ! 心、体、元気ナル! 魔界、温泉ナイ?」
片言ながら暖は言葉を連発する。
身振り手振りをまじえて、温泉の説明をした。
「……えっと、それって大きなお風呂のことかしら?」
笑みを引きつらせながらモノアが質問した。
後宮には、どこぞの温泉施設も真っ青なくらい大きい豪華絢爛な浴室がある。
モノアの質問は、全員思ったことだった。
しかし、暖は「違ウ!」と大声で否定する。
「温泉、タダノオ湯ナイ! 決メラレタ成分入ッテル、効能アル! 体、トッテモ癒サレル!」
日本には温泉法というものがあり、決められた成分が一定以上含まれているものを温泉という。
ただのお風呂と温泉は明確に区別がつくのだ。
「温泉、国ノ法デ定義サレテイル!」
だから違うのだと、暖は声高に主張した。
「そんな……法? は、聞いたことがないわ」
「それって、必要なものなの?」
「人間というものは、おかしな法を作るのね」
正妃とモノア、イノトは不思議そうな顔をして首を傾げる。
もちろん、この世界の人間界にそんな法律はないはずだった。
なにせ、異世界日本から温泉を召喚するぐらい温泉がない国なのだ。
地球にしたって日本のような温泉文化を持つ国は少ない。温泉法なるものが外国にあるかどうかは、暖だって知らなかった。
しかし、今その説明を正妃たちにする必要はないだろう。
重要なのは魔界に温泉があるかどうかだ。
その後、暖は片言を駆使してモノアと正妃から魔界の温泉情報を聞き出そうとした。
――――結果、暖にとって非常に残念なことに魔界には温泉がないことが判明する。
魔族は頑健な種族。温泉で疲れをとったり、ましてや治療をしたりすることはなかったのだ。
「ナイモノハ、仕方ナイワヨネ」
暖は意外にあっさりと納得する。
しかし、決して温泉を諦めたわけではなかった。
こと温泉に関して、暖が諦めることなんて天地がひっくり返ってもありえない!
暖をよく知る妹や親友、何より義弟がその事実を声を大にして証言してくれるだろう。
「ナイナラ、作レバ、OK!」
案の定、暖は力強くそう宣言した。
「作る?」
不思議そうに首を傾げる正妃たち。
暖は大きく頷いた。
「私、知リ合イ、温泉呼ベル人イル!」
ニコニコと笑う暖の笑顔は、無敵だ。
虫の知らせとでもいうのだろうか、正妃たちの背中にブルッと悪寒が走る。
「……ウララ、その人って?」
恐る恐るモノアが聞いた。
「チョット気難シイ、オバアチャン。デモ、ホントハ優シイ! 大丈夫!」
暖はドンと大きく胸を叩く。しかし、あまりに強く叩きすぎたせいで派手にゴホゴホとむせた。
正妃とモノア、イノトやブラットまでもが、むせる暖を不安そうに見つめる。
「……その人の名は?」
聞いてはいけない! 何故かそう思いながら、しかし話の流れで聞かないわけにもいかず、正妃はたずねた。
聞かれて、暖はにっこり笑う。
「ディアナ!」
きっぱりと、暖は答えた。
…………どこかで聞いた名だなと、正妃は思う。
モノアとイノトは、なんだか聞き覚えはあるものの思い出すことができずに首を傾げる。
ブラットは――――大きく目を見開いた。
次の瞬間、まるで鬼の首をとったかのようなドヤ顔で立ち上がる。
「ついに正体を表したな! やっぱり、お前は魔界を滅ぼすために人間界から送り込まれた刺客だろう!」
暖をピシッと指さしながらブラットは大声で叫んだ。
一方、さされた暖は目をパチクリさせる。
「ブラット?」
正妃も不思議そうな声をあげた。
ブラットは、ますます声を大きく張り上げる。
「なにが優しいおばあちゃんだ! ……『ディアナ』とは忌み嫌われた魔女の名! 魔族の子供が言うことを聞かない時に脅しに使われる恐怖の対象だ!」
――――魔界では『悪い子になるとディアナが来るよ』と子供を脅すのだという。
悪い子の代表だったブラットにとって、その名は忘れようのない恐怖の対象だった。
(……ディアナったら、魔女じゃなくて“なまはげ”なの!?)
秋田県の有名な伝統行事を思い出した暖は、心の中で大声をあげる。
「……ブラット。あなたという子は。いくらなんでもそれは言いがかりよ。『ディアナ』はおとぎ話の中の魔女でしょう?」
正妃が深々とため息をつく。モノアや、イノトでさえも呆れ顔だ。
「違う!」
ブラットは首をブンブンと振って否定した。
「違う! 違う! こいつは間違いなく人間の刺客なんだ! ――――ダンケルが人間界から魔界に連れ込んだ災いに違いない!」
ブラットが「ダンケル」と言った瞬間、正妃の顔が強張った。
表情がすっかり抜け落ち、美しい顔がまるで能面のように変化する。
「……ダンケル?」
何の感情もうかがえない冷たい声が、正妃の口からもれた。
「そうだ! こいつは、ダンケルが後生大事に抱えてきた女なんだ! ダンケルの奴、後宮から魔界乗っ取りを企んでいるに違いない!」
ダンケルは誰もが認める魔王の嗣子である。彼が魔界を乗っ取る必要は、これっぽっちもない。
ブラットの言い分は理の通らないものであったが、彼は自信たっぷりに言い切った。
そして、その言葉が響いた次の瞬間――――
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