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第四章 選んだ先の未来へ向かいます!
ギリギリセーフでした
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咄嗟に瞑った目の奥で、パァ~ッ! と白い輝きが広がる。
次の瞬間、暖の体はグィッと大きな体に抱き込まれた。
「あっぶねぇ~! ……セーフ!? これまだセーフだよな!」
滅茶苦茶焦りまくった声が耳に届く。多少、上ずってはいいるが、低く男らしい声だ。
「――――正妃さま! 貴女ともあろう方が何をしておられるのです!? 魔界を滅ぼす気なのですか?」
声は、この後宮で臆することなく正妃を怒鳴りつけた。
不思議に思い、暖は顔を上げる。
眩しさに一瞬くらんだ視界に、クルリと巻かれた巻角が映った。
「……ダンケル?」
彼女の声に、巻角の男は下を向く。
そこには、予想通り焦燥を浮かべたダンケルの整った顔があった。
「ウララ、無事か?」
黒い目が心配そうに暖をのぞきこんでくる。
久しぶりに見るその顔に、暖は正直ホッとした。
肩の力が抜けて、その事実に自分がかなり緊張していたことを、ここではじめて自覚する。
小さく笑って頷き返せば、ダンケルは大きな安堵の息を吐いた。
「やっぱり現れたなダンケル! 俺の思ったとおりだ。その子豚はお前が後宮に送り込んだ刺客だろう!」
そんな二人に向かいブラッドが、大声で得意そうに叫んでくる。
――――つくづく呆れた男だった。
彼は、たった今、魔界が滅びかけていたことになど少しも気づいていないに違いない。
「ブラット! このバカ! お前は、直接ウララの報復魔法を知っているくせに、それでもこんなことをしでかすのか! バカだバカだと思っていたが、お前の頭は本当に空っぽなのか!?」
苛立ちまじりに、ダンケルはブラットを怒鳴りつける。
……魔界にとっては非常に残念なことながら、その通りだったりする。
罵られたブラットは真っ赤になって怒りだした。彼に反省した様子は少しもない。
一方、ダンケルはそんなブラットをそれ以上相手にしなかった。
彼の視線は、正妃へと向けられる。
「正妃さま。貴女も貴女です。貴女ほどの賢妃が私の名を聞いただけでこれほど取り乱すなど。……いったい、どういうおつもりですか?」
怒りを抑えたダンケルの問いに、正妃はフッと唇を歪ませる。
「ウララの影に隠れている気配があったからな。――――誰の気配かまでは特定できなかったが、ブラットの言葉を聞いてその中の一つが、ダンケル殿、そなたのものだとわかった」
先刻まで暖やモノアたちにかけていた声や口調をガラリと変えて、冷たく正妃は答える。
ダンケルは、驚いたように目を見開いた。
モノアも、不思議そうに首を傾げる。
「……気配、ですか?」
正妃は、モノアに対しては微笑みながら頷いた。
「気がつかなかったの? ウララは人間と言いながら大きな力の気配を纏っていたわ。報復魔法があると話していたから、それかと思っていたのだけれど――――」
暖を守る巨大で複数の気配。
魔王の正妃である彼女は、その気配に気づいていた。
そして、その中にどこか覚えのある気配が隠れていることにも。
ブラットが『ダンケル』と言った瞬間、それがダンケルのものだと思い出した正妃は迷わず攻撃魔法を放ったのだと話す。
「この後宮で私の目を欺かれるのは我慢ならないからな。特にダンケル殿――――後継争いの結果とはいえ、我が子を無慈悲に殺したそなたには。……それに、そなたがついているのなら酷い結果にはならないだろう?」
モノアに向けていた笑みをキレイに消して王妃はダンケルに向き合う。
彼女の言葉を聞いたダンケルは「ぐっ」と唸ると頭を抱えた。
つまり、ダンケルはまんまと正妃に誘き出されたのだ。
「……正妃さま。あなたを騙すような真似をしたことは謝罪します。ですが、俺がウララを守っていたのは全て魔界のためです」
人間界に紛れ込み自分が殺されないために、暖と隷属の契約を交わしたダンケル。
確かに、彼の行為の全ては魔界を救おうという目的のためだ。
彼の言葉は間違っていない。
頭を下げるダンケルに、正妃は「当然でしょう」と返した。
「……そうでなければ、王の認めた嗣子であろうと、この後宮であなたを生かしておかないわ」
魔王の正妃と次期魔王であるダンケル。
単純に比べれば、力は断然ダンケルの方が強い。
しかしここは後宮。正妃を要とし、他のなによりも魔王の妃を守るために作られた宮の中では、いかにダンケルでも正妃に敵わなかった。
正妃は苦々しい表情で笑う。
「それに、ダンケル殿、あなたが後宮に入ってこられたということは、あなたの行動を他ならぬ陛下がお許しになっているということ。……今回の騒動の背後には陛下の意向もあるのでしょう?」
正妃は全てお見通しのようだった。
ダンケルは大きなため息をつく。
「その通りです。……魔界の女性が子を産めなくなった病は放置すれば魔族が滅びかねない重大な問題。その病を治してくれる治癒魔法の使い手を捜すため、父上は私を人間界に派遣しました。そして私はウララを見つけ、帰ってきた。……しかし私が連れ帰った女性を、後宮の女性たち――――誰より、正妃さまあなたが受け入れてくださるかどうかは、わからなかった」
だから荒療治ではあったが、魔王は暖を問答無用で後宮へ放り込んだ。
ダンケルの影を見せずに近づけた方が、受け入れられると判断したのだ。
「……魔界を滅ぼすほどの膨大な自動報復魔法を付けたままで?」
驚いたように正妃が聞き返す。それはあまりに危険な方法だ。
ダンケルは、苦虫を噛み潰したみたいな顔になった。
「父上の魔力は、強大ですからね。……『自分の魔力に慣れ過ぎてウララの纏っている魔力を異常に感じなかった』そうです」
暖から無理やり引き離されたダンケル。
一度は父王の言葉に従ったものの、その後やっぱり納得できなくて、彼は何度も父に対しどうしてそんな無謀な真似をしたのかと問い詰めた。
結果帰ってきた言葉が、先ほどの『あれ』だった。
――――人は誰しも自分を基準に考えがちだ。魔王の基準も多分に漏れず自分で、ディアナいわく、“魔力だけは強いクソ魔王”の彼は、暖の纏った力をそれほどおかしなものとは感じなかったのだという。
いくら魔力が強いにしても、大雑把すぎだろう。
「……馬鹿ジャナイノ?」
ダンケルの腕の中、暖はポツリと呟いた。
次の瞬間、暖の体はグィッと大きな体に抱き込まれた。
「あっぶねぇ~! ……セーフ!? これまだセーフだよな!」
滅茶苦茶焦りまくった声が耳に届く。多少、上ずってはいいるが、低く男らしい声だ。
「――――正妃さま! 貴女ともあろう方が何をしておられるのです!? 魔界を滅ぼす気なのですか?」
声は、この後宮で臆することなく正妃を怒鳴りつけた。
不思議に思い、暖は顔を上げる。
眩しさに一瞬くらんだ視界に、クルリと巻かれた巻角が映った。
「……ダンケル?」
彼女の声に、巻角の男は下を向く。
そこには、予想通り焦燥を浮かべたダンケルの整った顔があった。
「ウララ、無事か?」
黒い目が心配そうに暖をのぞきこんでくる。
久しぶりに見るその顔に、暖は正直ホッとした。
肩の力が抜けて、その事実に自分がかなり緊張していたことを、ここではじめて自覚する。
小さく笑って頷き返せば、ダンケルは大きな安堵の息を吐いた。
「やっぱり現れたなダンケル! 俺の思ったとおりだ。その子豚はお前が後宮に送り込んだ刺客だろう!」
そんな二人に向かいブラッドが、大声で得意そうに叫んでくる。
――――つくづく呆れた男だった。
彼は、たった今、魔界が滅びかけていたことになど少しも気づいていないに違いない。
「ブラット! このバカ! お前は、直接ウララの報復魔法を知っているくせに、それでもこんなことをしでかすのか! バカだバカだと思っていたが、お前の頭は本当に空っぽなのか!?」
苛立ちまじりに、ダンケルはブラットを怒鳴りつける。
……魔界にとっては非常に残念なことながら、その通りだったりする。
罵られたブラットは真っ赤になって怒りだした。彼に反省した様子は少しもない。
一方、ダンケルはそんなブラットをそれ以上相手にしなかった。
彼の視線は、正妃へと向けられる。
「正妃さま。貴女も貴女です。貴女ほどの賢妃が私の名を聞いただけでこれほど取り乱すなど。……いったい、どういうおつもりですか?」
怒りを抑えたダンケルの問いに、正妃はフッと唇を歪ませる。
「ウララの影に隠れている気配があったからな。――――誰の気配かまでは特定できなかったが、ブラットの言葉を聞いてその中の一つが、ダンケル殿、そなたのものだとわかった」
先刻まで暖やモノアたちにかけていた声や口調をガラリと変えて、冷たく正妃は答える。
ダンケルは、驚いたように目を見開いた。
モノアも、不思議そうに首を傾げる。
「……気配、ですか?」
正妃は、モノアに対しては微笑みながら頷いた。
「気がつかなかったの? ウララは人間と言いながら大きな力の気配を纏っていたわ。報復魔法があると話していたから、それかと思っていたのだけれど――――」
暖を守る巨大で複数の気配。
魔王の正妃である彼女は、その気配に気づいていた。
そして、その中にどこか覚えのある気配が隠れていることにも。
ブラットが『ダンケル』と言った瞬間、それがダンケルのものだと思い出した正妃は迷わず攻撃魔法を放ったのだと話す。
「この後宮で私の目を欺かれるのは我慢ならないからな。特にダンケル殿――――後継争いの結果とはいえ、我が子を無慈悲に殺したそなたには。……それに、そなたがついているのなら酷い結果にはならないだろう?」
モノアに向けていた笑みをキレイに消して王妃はダンケルに向き合う。
彼女の言葉を聞いたダンケルは「ぐっ」と唸ると頭を抱えた。
つまり、ダンケルはまんまと正妃に誘き出されたのだ。
「……正妃さま。あなたを騙すような真似をしたことは謝罪します。ですが、俺がウララを守っていたのは全て魔界のためです」
人間界に紛れ込み自分が殺されないために、暖と隷属の契約を交わしたダンケル。
確かに、彼の行為の全ては魔界を救おうという目的のためだ。
彼の言葉は間違っていない。
頭を下げるダンケルに、正妃は「当然でしょう」と返した。
「……そうでなければ、王の認めた嗣子であろうと、この後宮であなたを生かしておかないわ」
魔王の正妃と次期魔王であるダンケル。
単純に比べれば、力は断然ダンケルの方が強い。
しかしここは後宮。正妃を要とし、他のなによりも魔王の妃を守るために作られた宮の中では、いかにダンケルでも正妃に敵わなかった。
正妃は苦々しい表情で笑う。
「それに、ダンケル殿、あなたが後宮に入ってこられたということは、あなたの行動を他ならぬ陛下がお許しになっているということ。……今回の騒動の背後には陛下の意向もあるのでしょう?」
正妃は全てお見通しのようだった。
ダンケルは大きなため息をつく。
「その通りです。……魔界の女性が子を産めなくなった病は放置すれば魔族が滅びかねない重大な問題。その病を治してくれる治癒魔法の使い手を捜すため、父上は私を人間界に派遣しました。そして私はウララを見つけ、帰ってきた。……しかし私が連れ帰った女性を、後宮の女性たち――――誰より、正妃さまあなたが受け入れてくださるかどうかは、わからなかった」
だから荒療治ではあったが、魔王は暖を問答無用で後宮へ放り込んだ。
ダンケルの影を見せずに近づけた方が、受け入れられると判断したのだ。
「……魔界を滅ぼすほどの膨大な自動報復魔法を付けたままで?」
驚いたように正妃が聞き返す。それはあまりに危険な方法だ。
ダンケルは、苦虫を噛み潰したみたいな顔になった。
「父上の魔力は、強大ですからね。……『自分の魔力に慣れ過ぎてウララの纏っている魔力を異常に感じなかった』そうです」
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一度は父王の言葉に従ったものの、その後やっぱり納得できなくて、彼は何度も父に対しどうしてそんな無謀な真似をしたのかと問い詰めた。
結果帰ってきた言葉が、先ほどの『あれ』だった。
――――人は誰しも自分を基準に考えがちだ。魔王の基準も多分に漏れず自分で、ディアナいわく、“魔力だけは強いクソ魔王”の彼は、暖の纏った力をそれほどおかしなものとは感じなかったのだという。
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