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第2章 ショコラと愉快な仲間達
フルーツサンド
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今日は天気がいい。
朝は寒かったが、昼になるとちょうどいいくらいの気温になった。
風も気にならない。
ラグナルとショコラは、二人で手をつないで、緩やかな山道を歩いていた。
迷子になってはいけないから、とラグナルが手を離してくれないのだ。さすがに迷子にはならないと思うが、振り払うこともできないので、ショコラはおとなしく繋がれていた。
最初はそわそわしていたショコラだったが、そもそもここには人があまりいないことを思い出した。たとえ自分が変だったとしても、それを笑う人自体がいないので、なんだか気が楽になった。
それよりも、ゆっくりと景色を眺めながら二人で散歩をするのは、楽しかった。空は綺麗だったし、落ち葉が地面に不思議な模様を描いている。ショコラたちが住む館や村は、山の麓にあるのだが、山は紅葉して鮮やかに色づいていた。
「葉っぱが綺麗ですねぇ」
ショコラがしっぽをぶんぶん振りながらそう言うと、ラグナルも頷いた。
「あそこ、トンボが飛んでる」
「あ、本当です! 大きいですよ、ラグナル様!」
しっぽを振って、はしゃぐショコラ。
そこにはなんの屈託もなく、本当に心の底からこの散歩を楽しんでいることがわかった。
ショコラは無意識だったのだが、道端に花を発見するたび、ラグナルを引っ張っていた。そして見て見てとラグナルと一緒に観察した。
「これはなんでしょう?」
小さな青い花がぽつぽつと生えていた岩陰で屈んで、ショコラが指をさしてラグナルに聞いた。まさか知っているとは思わなかったのだが、ラグナルはちょっと考えてから言った。
「……アオノユメクサ。魔界にしかない花」
「へええ! そんなのがあるんですか?」
「うん。枕元にこの花を置くと、夢を見られるんだって」
「夢?」
「ちょっと悲しい夢」
「悲しい夢……」
「みたい?」
それは嫌だ、とショコラが首をふると、ラグナルは笑った。
「じゃあ置かないほうがいいよ」
「はい」
ショコラもくすりと笑った。
二人はしばらく山道を歩いた。
山道と言っても、たまに紅葉を見る観光客でもいるのか、ちゃんと舗装されていて、ほとんど平地と変わらない。
ショコラは楽しげに、ラグナルの隣を歩き続けた。
◆
しばらく歩いて、二人は開けた場所でお昼ご飯を食べることにした。
シートをしいて、ラグナルの世話をする。
バスケットを開けると、ヤマトが作ってくれた美味しそうなごはんがぎっしりと入っていた。急にお弁当を頼んだ割に、結構な量だった。ポットにはオレンジジュースが入っている。
海苔の巻かれたおにぎりに、甘い卵焼き、ウィンナー、からあげ。サンドイッチやフルーツサンドもあった。
歩いた後に食べるごはんは美味しい。
二人は紅葉を満喫しながら、ごはんを食べた。
「……君は、こういうのが好きなんだね」
「へ?」
ショコラがデザートのフルーツサンドを頬張っていると、不意にラグナルがそう言った。
「野にある花や、草や、虫や、自然にあるものを愛でるんだね」
ショコラを見つめるその瞳は、なぜか少し嬉しそうだった。
ショコラはぽっと頬を赤くする。
「ど、ドングリ、ひろわない方がよかったですか?」
さっき、ドングリを拾ってこっそりポシェットに入れていたのだ。
偉い人の付き人はそんなことをしないのだろうとようやく気づいて、ショコラは恥ずかしくなる。
けれどラグナルは首を振った。
「僕もドングリ好き。小さいころ、ここでたくさん拾ったよ」
「!」
ショコラは驚いた。
「ご主人様は、小さいころはここで暮らしていたんですか?」
ラグナルは少し考えてから、口を開いた。
「母さんの実家が所有していた、別荘だったんだよ。小さいころ、ここで遊んでたこともあるから、エルフの里の人たちとは昔からの知り合い」
「そうだったんですか?」
「うん」
そういえば、前にリリィが話していたことを思い出した。ラグナルの両親は、ラグナルが幼い頃に亡くなったのだと。
だから小さな弟の面倒を見ながら、魔王として人のために尽くし続けた。
そして今は、弟に魔王としての仕事を任せていると。
ショコラは話の流れで聞いてみた。
「あの、ご主人様。聞いてもいいですか?」
「なに?」
「ご主人様はどうして、魔王様をやめちゃったんですか?」
思い切ってそう聞いてみると、ラグナルは眠そうな目でぽやっと考えてから、色づく木々のほうに視線を移した。
立てた膝に、肘をついて、ぼやっと遠くを見ている。
「……食べ物がおいしくなくなったから」
「え?」
「食べ物が美味しくなくなって。好きだったものから、興味が失せた。それからどうでもいいことで怒って、疲れて。朝起きたら、お腹痛くて、動くのが億劫になった」
だからやめた。
ラグナルは眠そうな顔で、そう言った。
ショコラは眉を下げて、手元のフルーツサンドに視線を下ろす。
「……ご主人様はきっと、疲れちゃったんですね」
具体的に何があったのかはわからない。
けれどラグナルの口ぶりから、ずいぶん疲弊していたことがうかがえた。
「……そう。どうしようかなって考えて、好きなことして、好きなものを食べて、好きな子といて、いっぱい寝たいなって思ったから、今そうしてる」
ラグナルはそういうと、ちょっと笑った。
「飛ぶのが疲れたなら、木に止まって休めばいい。今だと思う風が吹いたら、もう一度飛べるかもしれないね」
「……」
「だから今は、人生の休憩中」
(あれ? ご主人様って……)
魔族は基本的に寿命が長い。
女性がないがしろにされないのも、妊娠や出産、子育てなど、人生のほんのわずかな期間でしかないからだ。男も女も、仕事を十年や二十年休むことなど、ざらにあるらしい。
(もしかして、また魔王様に、戻るのかな?)
本当のところは、ラグナルにしか分からない。
けれどショコラはそんなことを感じた。
「好きな子と一緒にいるって意味、わかる?」
「?」
唐突にそう聞かれて、ショコラは首をかしげた。
「好きな子って、誰かわかる?」
「え……」
ラグナルは姿勢を崩すと、なぜかショコラのほうへ手を伸ばす。
頬に手を当てられ、顔が近づいてきて、ショコラはびく、と固まった。
「それって、どういう……」
意味ですか?
そう聞く前に、ショコラの影と、ラグナルの影が重なった。
「っ」
(えっ!?)
頬をぺろ、と舐められる感覚。
ショコラは衝撃で一瞬固まった。
「クリーム、ついてるけど」
ラグナルは何事もなかったかのように、唇をぺろりと舐める。
(ひょえええええ!?)
「ご、ご、ご主人様!?」
ショコラは混乱して、ラグナルの言った質問など、すっかり忘れてしまった。
「な、なんでこんなことするんですかぁ!」
「……甘いの、食べたかったから」
「ここにいっぱいありますよ!」
ショコラは心臓がドキドキして、頬が真っ赤になってしまった。
「ご主人様は、やっぱり変わってます、食べたいなら、ちゃんと普通に食べてください!」
「ごめんね」
「ほらもう、ちゃんとこっちを食べてください」
そう言って、ショコラはフルーツサンドをラグナルの手に持たせる。
(本当に変な人!)
ショコラがドキドキを落ち着かせていると、それを見ていたラグナルがにこ、と笑った。
「甘くて、美味しかった」
「……?」
頭がおかしくなったのかと今度は心配になって、ショコラはラグナルのそばに寄り添った。
ラグナルは何事もなかったかのように、フルーツサンドをもぐもぐと食べていた。
(まったく、本当に何を考えているんでしょう、ショコラのご主人様は……)
ショコラは呆れながら、ラグナルの世話をしたのだった。
朝は寒かったが、昼になるとちょうどいいくらいの気温になった。
風も気にならない。
ラグナルとショコラは、二人で手をつないで、緩やかな山道を歩いていた。
迷子になってはいけないから、とラグナルが手を離してくれないのだ。さすがに迷子にはならないと思うが、振り払うこともできないので、ショコラはおとなしく繋がれていた。
最初はそわそわしていたショコラだったが、そもそもここには人があまりいないことを思い出した。たとえ自分が変だったとしても、それを笑う人自体がいないので、なんだか気が楽になった。
それよりも、ゆっくりと景色を眺めながら二人で散歩をするのは、楽しかった。空は綺麗だったし、落ち葉が地面に不思議な模様を描いている。ショコラたちが住む館や村は、山の麓にあるのだが、山は紅葉して鮮やかに色づいていた。
「葉っぱが綺麗ですねぇ」
ショコラがしっぽをぶんぶん振りながらそう言うと、ラグナルも頷いた。
「あそこ、トンボが飛んでる」
「あ、本当です! 大きいですよ、ラグナル様!」
しっぽを振って、はしゃぐショコラ。
そこにはなんの屈託もなく、本当に心の底からこの散歩を楽しんでいることがわかった。
ショコラは無意識だったのだが、道端に花を発見するたび、ラグナルを引っ張っていた。そして見て見てとラグナルと一緒に観察した。
「これはなんでしょう?」
小さな青い花がぽつぽつと生えていた岩陰で屈んで、ショコラが指をさしてラグナルに聞いた。まさか知っているとは思わなかったのだが、ラグナルはちょっと考えてから言った。
「……アオノユメクサ。魔界にしかない花」
「へええ! そんなのがあるんですか?」
「うん。枕元にこの花を置くと、夢を見られるんだって」
「夢?」
「ちょっと悲しい夢」
「悲しい夢……」
「みたい?」
それは嫌だ、とショコラが首をふると、ラグナルは笑った。
「じゃあ置かないほうがいいよ」
「はい」
ショコラもくすりと笑った。
二人はしばらく山道を歩いた。
山道と言っても、たまに紅葉を見る観光客でもいるのか、ちゃんと舗装されていて、ほとんど平地と変わらない。
ショコラは楽しげに、ラグナルの隣を歩き続けた。
◆
しばらく歩いて、二人は開けた場所でお昼ご飯を食べることにした。
シートをしいて、ラグナルの世話をする。
バスケットを開けると、ヤマトが作ってくれた美味しそうなごはんがぎっしりと入っていた。急にお弁当を頼んだ割に、結構な量だった。ポットにはオレンジジュースが入っている。
海苔の巻かれたおにぎりに、甘い卵焼き、ウィンナー、からあげ。サンドイッチやフルーツサンドもあった。
歩いた後に食べるごはんは美味しい。
二人は紅葉を満喫しながら、ごはんを食べた。
「……君は、こういうのが好きなんだね」
「へ?」
ショコラがデザートのフルーツサンドを頬張っていると、不意にラグナルがそう言った。
「野にある花や、草や、虫や、自然にあるものを愛でるんだね」
ショコラを見つめるその瞳は、なぜか少し嬉しそうだった。
ショコラはぽっと頬を赤くする。
「ど、ドングリ、ひろわない方がよかったですか?」
さっき、ドングリを拾ってこっそりポシェットに入れていたのだ。
偉い人の付き人はそんなことをしないのだろうとようやく気づいて、ショコラは恥ずかしくなる。
けれどラグナルは首を振った。
「僕もドングリ好き。小さいころ、ここでたくさん拾ったよ」
「!」
ショコラは驚いた。
「ご主人様は、小さいころはここで暮らしていたんですか?」
ラグナルは少し考えてから、口を開いた。
「母さんの実家が所有していた、別荘だったんだよ。小さいころ、ここで遊んでたこともあるから、エルフの里の人たちとは昔からの知り合い」
「そうだったんですか?」
「うん」
そういえば、前にリリィが話していたことを思い出した。ラグナルの両親は、ラグナルが幼い頃に亡くなったのだと。
だから小さな弟の面倒を見ながら、魔王として人のために尽くし続けた。
そして今は、弟に魔王としての仕事を任せていると。
ショコラは話の流れで聞いてみた。
「あの、ご主人様。聞いてもいいですか?」
「なに?」
「ご主人様はどうして、魔王様をやめちゃったんですか?」
思い切ってそう聞いてみると、ラグナルは眠そうな目でぽやっと考えてから、色づく木々のほうに視線を移した。
立てた膝に、肘をついて、ぼやっと遠くを見ている。
「……食べ物がおいしくなくなったから」
「え?」
「食べ物が美味しくなくなって。好きだったものから、興味が失せた。それからどうでもいいことで怒って、疲れて。朝起きたら、お腹痛くて、動くのが億劫になった」
だからやめた。
ラグナルは眠そうな顔で、そう言った。
ショコラは眉を下げて、手元のフルーツサンドに視線を下ろす。
「……ご主人様はきっと、疲れちゃったんですね」
具体的に何があったのかはわからない。
けれどラグナルの口ぶりから、ずいぶん疲弊していたことがうかがえた。
「……そう。どうしようかなって考えて、好きなことして、好きなものを食べて、好きな子といて、いっぱい寝たいなって思ったから、今そうしてる」
ラグナルはそういうと、ちょっと笑った。
「飛ぶのが疲れたなら、木に止まって休めばいい。今だと思う風が吹いたら、もう一度飛べるかもしれないね」
「……」
「だから今は、人生の休憩中」
(あれ? ご主人様って……)
魔族は基本的に寿命が長い。
女性がないがしろにされないのも、妊娠や出産、子育てなど、人生のほんのわずかな期間でしかないからだ。男も女も、仕事を十年や二十年休むことなど、ざらにあるらしい。
(もしかして、また魔王様に、戻るのかな?)
本当のところは、ラグナルにしか分からない。
けれどショコラはそんなことを感じた。
「好きな子と一緒にいるって意味、わかる?」
「?」
唐突にそう聞かれて、ショコラは首をかしげた。
「好きな子って、誰かわかる?」
「え……」
ラグナルは姿勢を崩すと、なぜかショコラのほうへ手を伸ばす。
頬に手を当てられ、顔が近づいてきて、ショコラはびく、と固まった。
「それって、どういう……」
意味ですか?
そう聞く前に、ショコラの影と、ラグナルの影が重なった。
「っ」
(えっ!?)
頬をぺろ、と舐められる感覚。
ショコラは衝撃で一瞬固まった。
「クリーム、ついてるけど」
ラグナルは何事もなかったかのように、唇をぺろりと舐める。
(ひょえええええ!?)
「ご、ご、ご主人様!?」
ショコラは混乱して、ラグナルの言った質問など、すっかり忘れてしまった。
「な、なんでこんなことするんですかぁ!」
「……甘いの、食べたかったから」
「ここにいっぱいありますよ!」
ショコラは心臓がドキドキして、頬が真っ赤になってしまった。
「ご主人様は、やっぱり変わってます、食べたいなら、ちゃんと普通に食べてください!」
「ごめんね」
「ほらもう、ちゃんとこっちを食べてください」
そう言って、ショコラはフルーツサンドをラグナルの手に持たせる。
(本当に変な人!)
ショコラがドキドキを落ち着かせていると、それを見ていたラグナルがにこ、と笑った。
「甘くて、美味しかった」
「……?」
頭がおかしくなったのかと今度は心配になって、ショコラはラグナルのそばに寄り添った。
ラグナルは何事もなかったかのように、フルーツサンドをもぐもぐと食べていた。
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