47 / 101
第4章 魔王様は脱力系?
雪夜の燐光花
しおりを挟む
すっかり日が沈んだ頃。
手にオレンジ色の淡い明かりを持って、山道を登る列があった。
みんなで、燐光花が見られるというスポットへ行くのだ。
大人も子供も、楽しそうに山道を登っている。
雪の夜の山道を、みんなで歩くということだけで、なんだか今日は特別な夜な感じがした。
「危ないから気をつけてくださいね」
列を監督しているエルフの青年が、すっ転びそうになったショコラを支えて、笑いかけた。ショコラは恥ずかしくなって、こくこくと頷く。
しばらく歩くと、入ったことのない道にみんなが入っていった。
「うわぁ……!」
キンと冷えた空気の中で、そこだけはなぜか、ふんわりとしたあたたかさがあった。
その小さな広場には、薄い青色に輝く光の花が群生していた。多くの花は、まだ蕾だ。花は葉を落とした木々にも絡まるように生えていて、そこの地域一帯が青白い光に包まれているようだった。
空気が澄んでいるからだろう。
よりクリアに、はっきりと光を見ることができる。
風がふくと、輝く花びらが空高く舞っていく。
人々は夢中になって、その景色を眺めていた。
子供たちは楽しげに花の中をかけていく。
「こんなところがあったんですねぇ」
ショコラが感動してその景色を眺めていると、シュロが微笑んで言った。
「ここはね、魔素が他の地域の何倍も濃いのです。だから野生の植物や動物に、魔力がたまりやすい。そうすると植生も変わってくる」
「このお花は、魔力を含んでいるのですか?」
「ええ。葉脈からそれが透けて見えるから、光ってみえるのだそうです」
「へええ」
ルーチェが鼻をならして言った。
「ふんっ。まあ、こんなど田舎に来た甲斐があるってもんだわ」
「る、ルーチェさん……」
「都会の方じゃ、こういう花は咲かないのよ」
そう言って光に照らされるルーチェは、さすがモデルだった。
黙っていれば、非常に美しい。
何か、映画のワンシーンを見ているようだった。
それがふと、こちらを見てガルル、と威嚇する。
「あにみてんのよ!」
「い、いえ……」
映画のワンシーンは一瞬で崩壊したのだった。
ショコラは愛想笑いして、身を引く。
それからラグナルを見れは、彼はぼうっと花を眺めていた。
相変わらず何を考えているのかわからない。
ショコラは先ほどのやりとりから、一度もラグナルと話していない。
なんとなく気まずかった。
早く謝らなければならないのに、どうしてもうまく言葉が出てこない。
ショコラがもやもやした気持ちでラグナルを見ていると、分厚かった雲の隙間から、月が見え始めた。
今夜は見事な満月だ。
「見て!」
誰かの声がした。
すると、雲の切れ間から差し込んだ光を浴びた花は、一斉に、さらに強く輝き始めた。
「すごい……」
ショコラは息をのんだ。
「月の光を浴びた燐光花は、さらに魔力が増えて、輝きを増します」
リリィがそういうと、手をつながれていたミルとメルが、すごいすごいとはしゃいだ。
「……」
幾千もの輝く花々が開花し、顔を夜空に持ち上げる。風が吹くと花びらは空を舞い、光の軌跡を残してどこまでも遠く飛んでいく。
ショコラは、青い花の光が目に焼き付いて離れなかった。
その様子を見ているうちに、ショコラはなんだかぼうっとしてきた。
けれど、どうしてだろう。
心にラグナルのことが引っかかって、あれだけ見たかったはずの景色も、霞んで見えた。
やっぱり、今すぐ謝ろう。
そして、ラグナルの隣でこの景色を見よう。
そう思って、移動しようと思ったとき。
ひゅう、と胸に冷たい空気が満ちた。
その瞬間、強く肺に痛みが走り、ショコラは激しく咳き込んだ。
胸が痛み、浅くしか呼吸ができなくなる。
みんなの背中と、青いイルミネーションが霞んで見えた。
雪に混じって、白く、淡く、景色が遠くなっていく。
振り返ったラグナルが、目を見開いた。
「ショコラ?」
ショコラの意識は、雪に入り混じるようにして真っ白になった。
手にオレンジ色の淡い明かりを持って、山道を登る列があった。
みんなで、燐光花が見られるというスポットへ行くのだ。
大人も子供も、楽しそうに山道を登っている。
雪の夜の山道を、みんなで歩くということだけで、なんだか今日は特別な夜な感じがした。
「危ないから気をつけてくださいね」
列を監督しているエルフの青年が、すっ転びそうになったショコラを支えて、笑いかけた。ショコラは恥ずかしくなって、こくこくと頷く。
しばらく歩くと、入ったことのない道にみんなが入っていった。
「うわぁ……!」
キンと冷えた空気の中で、そこだけはなぜか、ふんわりとしたあたたかさがあった。
その小さな広場には、薄い青色に輝く光の花が群生していた。多くの花は、まだ蕾だ。花は葉を落とした木々にも絡まるように生えていて、そこの地域一帯が青白い光に包まれているようだった。
空気が澄んでいるからだろう。
よりクリアに、はっきりと光を見ることができる。
風がふくと、輝く花びらが空高く舞っていく。
人々は夢中になって、その景色を眺めていた。
子供たちは楽しげに花の中をかけていく。
「こんなところがあったんですねぇ」
ショコラが感動してその景色を眺めていると、シュロが微笑んで言った。
「ここはね、魔素が他の地域の何倍も濃いのです。だから野生の植物や動物に、魔力がたまりやすい。そうすると植生も変わってくる」
「このお花は、魔力を含んでいるのですか?」
「ええ。葉脈からそれが透けて見えるから、光ってみえるのだそうです」
「へええ」
ルーチェが鼻をならして言った。
「ふんっ。まあ、こんなど田舎に来た甲斐があるってもんだわ」
「る、ルーチェさん……」
「都会の方じゃ、こういう花は咲かないのよ」
そう言って光に照らされるルーチェは、さすがモデルだった。
黙っていれば、非常に美しい。
何か、映画のワンシーンを見ているようだった。
それがふと、こちらを見てガルル、と威嚇する。
「あにみてんのよ!」
「い、いえ……」
映画のワンシーンは一瞬で崩壊したのだった。
ショコラは愛想笑いして、身を引く。
それからラグナルを見れは、彼はぼうっと花を眺めていた。
相変わらず何を考えているのかわからない。
ショコラは先ほどのやりとりから、一度もラグナルと話していない。
なんとなく気まずかった。
早く謝らなければならないのに、どうしてもうまく言葉が出てこない。
ショコラがもやもやした気持ちでラグナルを見ていると、分厚かった雲の隙間から、月が見え始めた。
今夜は見事な満月だ。
「見て!」
誰かの声がした。
すると、雲の切れ間から差し込んだ光を浴びた花は、一斉に、さらに強く輝き始めた。
「すごい……」
ショコラは息をのんだ。
「月の光を浴びた燐光花は、さらに魔力が増えて、輝きを増します」
リリィがそういうと、手をつながれていたミルとメルが、すごいすごいとはしゃいだ。
「……」
幾千もの輝く花々が開花し、顔を夜空に持ち上げる。風が吹くと花びらは空を舞い、光の軌跡を残してどこまでも遠く飛んでいく。
ショコラは、青い花の光が目に焼き付いて離れなかった。
その様子を見ているうちに、ショコラはなんだかぼうっとしてきた。
けれど、どうしてだろう。
心にラグナルのことが引っかかって、あれだけ見たかったはずの景色も、霞んで見えた。
やっぱり、今すぐ謝ろう。
そして、ラグナルの隣でこの景色を見よう。
そう思って、移動しようと思ったとき。
ひゅう、と胸に冷たい空気が満ちた。
その瞬間、強く肺に痛みが走り、ショコラは激しく咳き込んだ。
胸が痛み、浅くしか呼吸ができなくなる。
みんなの背中と、青いイルミネーションが霞んで見えた。
雪に混じって、白く、淡く、景色が遠くなっていく。
振り返ったラグナルが、目を見開いた。
「ショコラ?」
ショコラの意識は、雪に入り混じるようにして真っ白になった。
0
あなたにおすすめの小説
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜
具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」
居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。
幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。
そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。
しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。
そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。
盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。
※表紙はAIです
やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~
小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。
そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。
幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。
そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――?
「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」
鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。
精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。
キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる
藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。
将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。
入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。
セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。
家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。
得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。
聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~
夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力!
絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。
最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り!
追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?
無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いてほしい!!
カントリー
恋愛
懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。
でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。
大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きなぽっちゃりした女子高校生。
今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。
異世界先は獣人の世界ークモード王国。住民の殆どが美男美女で、おデブは都子だけ。
ダーク
「…美味そうだな…」ジュル…
都子「あっ…ありがとうございます!」
(えっ…作った料理の事だよね…)
元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが…
これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。
★いいね・応援いただけると嬉しいです。創作の励みになります。
婚約破棄された没落寸前の公爵令嬢ですが、なぜか隣国の最強皇帝陛下に溺愛されて、辺境領地で幸せなスローライフを始めることになりました
六角
恋愛
公爵令嬢アリアンナは、王立アカデミーの卒業パーティーで、長年の婚約者であった王太子から突然の婚約破棄を突きつけられる。
「アリアンナ! 貴様との婚約は、今この時をもって破棄させてもらう!」
彼の腕には、可憐な男爵令嬢が寄り添っていた。
アリアンナにありもしない罪を着せ、嘲笑う元婚約者と取り巻きたち。
時を同じくして、実家の公爵家にも謀反の嫌疑がかけられ、栄華を誇った家は没落寸前の危機に陥ってしまう。
すべてを失い、絶望の淵に立たされたアリアンナ。
そんな彼女の前に、一人の男が静かに歩み寄る。
その人物は、戦場では『鬼神』、政務では『氷帝』と国内外に恐れられる、隣国の若き最強皇帝――ゼオンハルト・フォン・アドラーだった。
誰もがアリアンナの終わりを確信し、固唾をのんで見守る中、絶対君主であるはずの皇帝が、おもむろに彼女の前に跪いた。
「――ようやくお会いできました、私の愛しい人。どうか、この私と結婚していただけませんか?」
「…………え?」
予想外すぎる言葉に、アリアンナは思考が停止する。
なぜ、落ちぶれた私を?
そもそも、お会いしたこともないはずでは……?
戸惑うアリアンナを意にも介さず、皇帝陛下の猛烈な求愛が始まる。
冷酷非情な仮面の下に隠された素顔は、アリアンナにだけは蜂蜜のように甘く、とろけるような眼差しを向けてくる独占欲の塊だった。
彼から与えられたのは、豊かな自然に囲まれた美しい辺境の領地。
美味しいものを食べ、可愛いもふもふに癒やされ、温かい領民たちと心を通わせる――。
そんな穏やかな日々の中で、アリアンナは凍てついていた心を少しずつ溶かしていく。
しかし、彼がひた隠す〝重大な秘密〟と、時折見せる切なげな表情の理由とは……?
これは、どん底から這い上がる令嬢が、最強皇帝の重すぎるほどの愛に包まれながら、自分だけの居場所を見つけ、幸せなスローライフを築き上げていく、逆転シンデレラストーリー。
【完結】 「運命の番」探し中の狼皇帝がなぜか、男装中の私をそばに置きたがります
廻り
恋愛
羊獣人の伯爵令嬢リーゼル18歳には、双子の兄がいた。
二人が成人を迎えた誕生日の翌日、その兄が突如、行方不明に。
リーゼルはやむを得ず兄のふりをして、皇宮の官吏となる。
叙任式をきっかけに、リーゼルは皇帝陛下の目にとまり、彼の侍従となるが。
皇帝ディートリヒは、リーゼルに対する重大な悩みを抱えているようで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる