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第2章 王弟ロロ&秘書コレット襲来
ロロとコレットの訪問
しおりを挟む「いやぁ、本当急でしたね」
「突然だったからね」
「事前に言ってくだされば準備しましたのに」
あかりの復旧したダイニングルーム。
そこにはラグナル以外の館の住人が集結していた。
そして、館の住人ではない、見慣れない顔も二人いる。
(これが、ご主人様の弟、ロロ様……)
ショコラはお盆を胸に抱いて、二人の客人をまじまじと見つめた。
一人は、以前バス停で出会った女性。
そしてもう一人は──。
「ん? どうしたの?」
「あ、いえ……」
にっこりと微笑む、それはそれは顔立ちの整った男性。
(全然……)
ショコラは思った。
(ぜんっぜんご主人様に似てない!)
そう。
目の前にいるのは、ラグナルの弟、ロロと、その秘書コレットなのだった。
◆
「ぎゃーッ!?!?!?」
ルーチェが泡を吹いて倒れた頃。
館のあかりがちょうど復旧し、玄関先にいた二人を照らし出した。
「夜分遅くに申し訳ございません」
「チャイム押しても出てこないから、寝ちゃったのかと思って」
ぴちょん。
二人がかぶっていたカッパから、水滴が垂れた。
「……へ?」
ショコラは瞬きをして、目の前の二人を見つめた。
扉の前に立っていたのは、普通の魔族二人組だった。
カッパをかぶっていたから、暗闇の中でおかしな形に見えたのだ。
「あれっ?」
カッパのフードを取った一人を見て、ショコラは目を丸くした。
「あなたは、あのときの……」
「コレット、と申します、ショコラ様。先日は名前も名乗らず、失礼いたしました」
「コレット、さん……?」
「ええ。こちらにいらっしゃる王弟ロロ殿下の秘書を務めさせていただいております」
「ろ、ロロ……?」
ショコラはコレットの隣に立っていた背の高い男性を見た。
男性がフードを取ると、輝くような金色の髪が現れる。
その瞳は冴え渡る空のように青く、ショコラは既視感を覚えた。
(あれ……おうてい……? ろろ……?)
優しそうな顔立ちをしているその人は、まさにザ・王子様といった感じの風貌だ。
「こんばんは。君のことは噂に聞いているよ。いつも兄さんが世話になっているね」
「えっと……」
「魔王ラグナルの弟、ロロ。それが俺の名前だよ」
そう言って、にこっと微笑まれる。
「え……」
ショコラは固まった。
おうてい……王弟。
ラグナルの、弟。
「ええーっ!?」
それから悲鳴のような大声を出してしまったのだった。
◆
(だ、だって、想像していたのと全然違う……)
肩にタオルを乗せて、リリィと談笑しているロロを見る。
細かな金色の髪から、ぽたりと滴が落ちる様は、まさに「いい男」という感じだった。
ショコラはあの死んだ目のラグナルを想像してみた。そして目の前にいるロロと見比べてみる。確かに顔立ち自体はよく似ているかもしれない。瞳の色なんかもそっくりだ。
けれどなんだろう……雰囲気がまったく違う気がした。ロロの方がしゃっきりしているし、物語に出てくる王子様のようだった。
「それで? いったいこんな夜更けにどうされたんです?」
リリィが座って、ロロを見る。
コレットもおとなしくお茶を飲んでいた。
「いやねぇ、ちょっとこちらに用事があってね。それにずっと兄さんに会えてなかったから、久しぶりに会いたいなぁって。兄さんは元気?」
「……ええ。元気ですよ、とても」
リリィは訝しげな顔をしてロロを見た。
「ですがロロ殿下、ラグナル様はあなた様に……」
「あー、分かってる分かってる」
リリィの言葉を最後まで聞かず、ロロは手で押しとどめた。
「だからこうやってお忍びで来たんじゃないか」
「……」
「滞在期間もたったの二日だし」
「二日ァ!?」
リリィがぎょっとした声をあげた。
「二日もいらっしゃるんですか!? こちらに!?」
め、メンドクセェ~。
リリィの顔にははっきりとそう書いてあった。
それからなぜかリリィは、ショコラの方をちらちらと見る。
「ちょっと、それならそうと早めに言ってくださいよ」
「ごめんごめん」
にへら、と笑ってロロは謝る。
隣で静かに話しを聞いていたコレットも、お茶を置いて言った。
「ロロ様がこういう行動を取られたのにも、わけがありまして」
「わけ?」
「私見ですが、ショコラさんには、王宮に来ていただいた方がよいのではないかと思ったのです」
「えっ?」
なぜショコラの話がここで出る?
ショコラはきょとんと瞬きをした。
「ショコラ様は唯一、ラグナル様のお子をむぐぅ……」
「うわああああ!? だめだめだめ! ちょっと黙って!」
リリィが慌てて立ち上がり、コレットの唇をふさいだ。
「?」
ショコラは首をかしげる。
(私が何……?)
「何するんですか」
ムッとしたような顔のコレットが、リリィを批判した。
文句を押しとどめて、リリィは作り笑いを浮かべてショコラをみた。
「ショコラさん、もう遅いから寝ましょうか!」
「え? でも話の途中なんじゃ……」
「いいんですいいんです、ここからは大人のお話なので!」
「うん、俺もそう思うよ」
なぜかロロも頷いた。
ショコラにとって、何か都合の悪い話なのだろうか。
(普段はつい忘れちゃうけど、ご主人様は魔王様だし、ここにいる人たちも魔王様に昔から仕えている人たちだし……きっと何か、重要な機密でもあるのかも)
ショコラは一人でそう考えると、納得して頷いた。
「わ、わかりました。それじゃあ失礼します。おやすみなさい」
「はい、お休みなさい」
寝ぼけ眼のミルとメルの手を引いて、ショコラはリビングを出る。
部屋に戻る前、キッチンから出てきたヤマトが、ショコラに聞いた。
「あれ? そういえばあのアホ女はどこいったんだ?」
ショコラは曖昧に笑って、何も言わなかった。
まあその、トイレを限界まで我慢して、あんなドラマとそっくりな展開になってしまったら……。
彼女のプライドのために、ショコラは口をつぐむことにした。
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