【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清

文字の大きさ
77 / 129
第四章 社畜と女子高生と青春ラブコメディ

16.社畜と女子高生と年末の大渋滞

しおりを挟む


 十二月二十八日の、正午すぎ。

 俺は愛車マークXで千葉の家を出て、豊洲で理瀬を拾い、首都高に乗った。

 何度乗っても覚えられない首都高の迷宮を抜け、東名高速へと続く3号渋谷線に合流する頃には大渋滞。年末年始お決まりのパターンだ。

 理瀬が助手席に乗っているので、運転は慎重にしている。タクシー以外の車に乗ったことがないという理瀬は、首都高からの景色を不思議そうに眺めている。ほとんど防音壁だが。


「どうして、わざわざ車で帰るんですか」


 渋滞にハマり、景色が変わらなくなったところで、理瀬が話しかけてきた。


「んー、いろいろ理由はあるけど、主に二つだ。一つは、前に飼っていた三郎太を輸送するため、前々から車で実家に帰ってたから。新幹線には乗せられるが、正直恥ずかしいからな。あともう一つ、俺の実家の徳島県は自動車社会だから、体ひとつで帰っても移動するための足がない」

「昨日調べたんですけど、新幹線と在来線なら半分くらいの時間で行けますよ。飛行機だと二時間くらいです。足ならレンタカーを借りればいいと思います」

「もう慣れたからいいんだよ。あんまり早すぎると、遠くに帰った気がしないからなあ」


 飛行機や新幹線で帰ったこともあったが、あまりの速さに実家がとても近いような錯覚を覚えて、複雑な気持ちになった。

 正月は、苦労して帰省するのが似合っている。いつからかそう思うようになった。

 そんな話をしながら最初の渋滞を抜け、駿河湾沼津サービスエリアで休憩。新東名高速のサービスエリアはどれも新しく、綺麗だ。帰省客を見込んで屋台やキッチンカーが並び、家族連れで賑わっている。


「なんか食うか」

「値段の割に大したことなさそうなので、別にいいですよ」

「お前、今すべてのサービスエリア好きを敵に回したぞ」


 サービスエリア特有の空気は気に入らなかったようだが、展望台から見える駿河湾の景色はとても綺麗で、理瀬も満足していた。

 ひたすら新東名高速を進む。静岡県を一気に抜けて岡崎サービスエリアで再び休憩をとり、新名神高速に入る。

 新名神高速の草津ジャンクション付近は毎年、異常に渋滞している。手前の土山サービスエリアのコンビニで軽く菓子パンをつまんでから、意を決して進入。案の定、休日だけ運転するドライバーにありがちな本線の何もないところでの事故が発生していて、通過するのに二時間かかった。高速道路で事故したやつはしばらく運転禁止にしていいと思う。渋滞による経済的損失は半端ない。そう言ってみたら、理瀬は意外にも素直に賛同してくれた。助手席の彼女も、渋滞にはうんざりなのだ。

 理瀬が足元をもじもじと動かしはじめたので、渋滞の真ん中にある草津サービスエリアで小休憩。トイレに行きたかったのだ。

 女性と一緒にドライブするときは、トイレのタイミングを考えないといけない。照子は「おしっこもれる~!」と騒いでいたが、理瀬はそういうタイプではない。草津サービスエリアに入る時も「私は大丈夫ですよ」と言っていたが、そう長くはもたないし、ちょうどいいタイミングでサービスエリアが現れることはない。俺自身が我慢できないことにして一度サービスエリアに入った。

もう日も暮れていたので、一気に明石海峡大橋を抜け、淡路サービスエリアに入った。

 ここは実家にいた時代も含め、よく立ち寄ったサービスエリアだ。夜に訪れると、明石海峡大橋のライトアップが展望台から見える。あとなぜか最近、小さい観覧車ができた。

 理瀬を展望台まで案内してやると、夜の海に浮かぶ虹色の明石海峡大橋をじっと眺めていた。


「綺麗だろ? あのライトアップ、何パターンもあるんだぞ。連休とかは特別な色になるから、今日みたいに虹色になってる」

「なんか、遠くに来た、って感じがしますよ」


 瀬戸内特有の優しい潮の香を感じると、俺は「ああ、実家に帰ってきたんだな」と感じる。

 理瀬も、東京とは明らかに違う空気を感じて、そう言っているのだろう。それをわかってくれたなら、渋滞を乗り越えてでも理瀬をドライブに付き合わせた意味はある。

 明石海峡大橋を渡ったら、あとは淡路島をひたすら走って徳島県へ。もう渋滞とは無縁で、車はすいすい走る。理瀬は流石に疲れたのか、眠ってしまった。徳島に入ったら、鳴門の大塚製薬の倉庫にあるでかいオロナミンCの絵を見せてやろうと思ったのだが、寝ている理瀬を起こす気にはなれず、俺は一人で車を走らせた。


** *


 徳島市へ入ったころには、もう日付が変わっていた。

 東京と違って、徳島の夜は表通りでも街路灯があまりなく、暗い。俺は慣れているが、理瀬は少し不安そうだった。

 徳島駅前のホテルで理瀬を降ろす。さすがに駅前は明るく、コンビニもある。理瀬とは明日以降、俺が家族と過ごす時間を確認してから、行動することになっている。

 危険な場所ではないとはいえ一人なので、何かあったら俺に連絡するよう伝えている。

 理瀬はまだ眠気が覚めないようで、「ありがとうございました」とさえない声で言い、ホテルに入っていった。

 俺の実家へは、そこから車で十五分程度。狭い市街地の道だが、慣れ親しんだ場所なのでカーナビを全く見ず、最短ルートで直行できる。

 実家では、電気が全くついていなかった。両親は寝ているらしい。俺は物置の軍手の中にある隠し鍵を手に入れ、さっさと家に入った。

 玄関を開けたところで、母親が二階から面倒そうに降りてきた。


「あいかわらずとんでもない時間に帰ってくるなあ」


 車で帰るときはいつもこの時間だったので、母はそれを覚えている。うちの母は俺に似て(?)シャイだから、久々に俺の顔を見ても特に喜んだりしない。わざわざ起きてくることが唯一の気遣い。俺はこれでいいが。


「父さんは?」

「寝とる。明日も仕事やって」

「ふうん。真由は?」

「大晦日まで佐田くんと東京に旅行いっとるわ」

「なんだ、入れ違いか」


 真由とは俺の妹・宮本真由のこと。そして佐田くんとは、妹の彼氏である佐田健のことだ。

 今回わざわざ帰省したのは、この二人が年明けに結婚すると報告されたからだ。正月に両家で顔合わせをして、その後結納やら結婚式に進む。徳島の人は信心深いから、昔からある結婚の儀式はほぼ全部コンプリート。両家顔合わせも、どこかの料亭でやるそうだ。

 もっとも、俺はそこまで緊張していない。俺は佐田健のことをよく知っている。俺が高三の時、同じ高校の一年生として合唱部に入部してきた後輩だからだ。先輩にはとても従順でいい奴だった。「宮本先輩のことを尊敬しています」と言って、俺のあとの部長にもなった。そういう男なので、妹と結婚してくれて全然構わないのだ。

 佐田の両親にも、合唱部の演奏会を見に来てくれたときに話したことがある。そんなわけで、両家顔合わせといっても初対面の人間は誰もいない。気楽なものだ。これが東京には絶対にない、地方社会の狭さである。

 俺は母親と少しだけ話したあと、風呂に入り、冷蔵庫のアイスクリームを取って自分の部屋に向かった。いつも安いアイスだったはずだが、ハーゲンダッ○が入っていた。母親が気を使ったのか、収入が上がって我慢しなくなったのかはわからないが、ありがたくいただいた。

 俺の部屋は、高校を出た時からほとんど変わっていない。上京したときに家具は全部新調してもらったから、ベッドや勉強机も以前のまま。思わずタイムスリップしたような気持ちになるが、そこにいる俺の体は高校時代と比べて全体的にはりがない。この空間で俺だけが古くなってしまっていて、寂しさを覚える。

 久々の実家にそわそわしながら、俺は理瀬にLINEを送った。


『明日、九時に迎えにいく』
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

学校1のイケメン♀️から逃げ出した先には地獄しかありませんでした

山田空
ライト文芸
ハーレムを目指していた主人公は転校してきたイケメンによってその計画を壊される。 そして、イケメンが実は女の子でありヤンデレであったことを知り逃げる。 逃げた途中でむかし付き合った彼女たちとの過去を思い出していく。 それは忘れたくても忘れられない悲しき記憶 この物語はヒロインと出会いそして別れるを繰り返す出会いと別れの物語だ。 そして、旅の最後に見つける大切で当たり前なものとは

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...