【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清

文字の大きさ
120 / 129
第六章 社畜と女子高生と二人の選んだ道

10.社畜と後輩と

しおりを挟む
 まさか焼肉屋で婚姻届を見るとは思わなかった俺は、目が点になった。

 篠田が、俺に振り回されないよう作戦を考えた、というのは一応理解できる。しかしその作戦が婚姻届の提出、結婚とはどういう事なのか。


「提出、するだけか?」

「……宮本さん、婚姻届を提出する意味わかってます?」

「それは……結婚するって事だ。でもお前、俺と結婚するってことは、一緒に住んで、家庭を持つという事だぞ」

「そういう事ですよ。宮本さんは私と社内恋愛で結婚して、会社の人みんな呼んで盛大な結婚式を開いて、私の実家に近い栃木に家を買って、子供をつくって、普通のサラリーマンとして生きるんです。それなら理瀬ちゃんも納得するでしょ?」

「確かに、理瀬を説得するには十分だが……お前、俺と結婚したいの?」

「今更何言わせるんですか。さっき言ったからもう言いませんよ」

「いや……お前は、俺のことをまだ恨んでいると思ってたから」

「恨んでます。まあでも、恨んでいても結婚はできるし、一緒に生活しながらその罪を償ってくれれば、そのうち恨み晴れるかもしれませんし」

「罪を償うってなんだ?」

「私のことを、理瀬ちゃんみたいに優しく扱ってください」


 篠田の言葉には、まだ棘があった。完全に俺を信用してはいないのだろうか。

 しかし、結婚してしまったら、俺だけでなく篠田の人生も縛ることになる。今の篠田が、俺と一生一緒にいることを認めるとは思えなかった。

 

「優しくって、具体的にどういうことだ?」

「もう、そんな恥ずかしいこと聞かないでください。なるべく一緒にいてくれれば、それでいいですよ。ちょっと前の、普通の先輩と後輩みたいな感じで」

「しかし……それでお前を傷つけた罪を償えるとは思えない」

「私に、理瀬ちゃんといる時みたいに優しくはできないってことですか?」

「いや……そういう訳ではないが」

「ああ、いいです。そういう優柔不断なところも知ってますから。私の伝え方が悪かったので、言い直します。宮本さんが理瀬ちゃんを助けるために手段を選ばなくなったように、私も宮本さんを手に入れるためになりふり構わなくなったんです」


 そう言われると、確かに、少し納得できた。

 俺が理瀬に対して動いているのと同じような気持ちで、篠田は俺に対してアピールしている。


「……見事な三角関係だな」

「だーっ! そこは私のことが好きって男らしく言ってください」


 酔っているためか、篠田はいつもより積極的だ。声も大きく、そろそろ周りの視線が気になってきた。


「で、どうするんですか。結婚する以外に、私がこれ以上協力する方法はないですから」

「わかったよ」

「え?」

「お前が望むなら、そうする」

「……え、ほんとに? マジで?」

「本当だ。婚姻届を役所に出すまで一緒に付き合ってやるよ。だが、流石に焼肉屋で婚姻届を書きたくはないな」

「それはそうですね……」


 俺たちは焼肉屋を出た。約束通り俺のおごりだ。もう金額を知りたくもなかったので、さっさとクレジットカードで払ってしまった。

 そのまま俺たちは、近くのラブホテルになだれ込んだ。

 二人ともスイッチが入っていて、シャワーを浴びる前に俺が篠田を押し倒してしまった。

 篠田と体を交えるのは久々だったが、後ろめたさは一切なかった。篠田も全く拒否していなかった。

 俺が理瀬へ夢中になっているから、百パーセント篠田だけを愛しているとは感じてくれないだろう。しかし、先輩と後輩として数年間積み上げてきた信頼は、まだ崩れていなかった。

 体力が尽きるまで抱き合ったあと、二人でシャワーを浴び、裸のままベッドで横になった。


「婚姻届、書くか」

「……まだいいです」

「えっ? それが条件なんだろ」

「……条件とかもういいです。焼肉おごってくれて、その後付き合ってくれただけで十分でした」

「しかし、そうしないと決意を示せないだろう」

「私が幸せだからいいんですよ」


 篠田は俺の胸にもぐり込み、とても幸せそうな顔で寝てしまった。


** *


 翌朝。

 俺は平気だったが、篠田は完全に二日酔いしていて、介抱するところから始まった。

 ふらふらする篠田に水を飲ませ、服を着せる。酔っ払いの介抱は照子と一緒にいたから慣れている。

 帰り際、机の上に残っていた婚姻届を、篠田はゴミ箱に捨ててしまった。


「いいのか?」

「いいです。っていうか、あれ栃木のやつなんでこのへんじゃ使えないです」

「何だよ……やっぱり、ただの脅しだったのか」

「あ、でも結婚はしてもらいますから」

「お、おう」

「嫌ですか? だったら理瀬ちゃんを助ける作戦には協力しませんよ」

「いや、もう決めたことだから。そんな大事なことで嘘はつかない」

「……やっぱり、理瀬ちゃんの事になると目の色変わりますね。でも、もうそれでいいですよ。なんか、慣れてきました」


 どう受け止めればいいかわからなかったが、篠田の機嫌が治ったので、俺はほっとした。

 この日、俺達は駅で別れるまで、手をつないで歩いた。篠田の希望だった。


「この歳になると、手をつないで歩くのって、エッチするより難しい気がします」

「そうか?」

「いつまでもピュアな宮本さんにはわからないんですね」

「俺がピュアだって? どのへんが」

「おじさんなのに女子高生へ何の迷いもなく惚れてしまうところです」

「手、つなぎながらそれ言うか」

「悪いのは宮本さんですよ。じゃ、次に会うまでに婚約指輪買ってくださいね。私、宮本さんの給料だいたい知ってますから、ごまかせませんよ」

「はあ……しばらく絶食するか」

「冗談ですよ。そういう大事なことは二人で決めましょう?」


 改札に入る時、手を離そうとしたら、篠田が嫌がって強く握ってきた。

   理瀬と同じように、これからは篠田を守らなければいけない。そんな思いが、篠田に手を握られてから、どんどん強くなっていった。

   照子とひどい別れ方をしてから、俺はもうあの時みたいに女を愛することはできない、と思っていたが――篠田と一緒にいれば、不思議とそんな気持ちは忘れられた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

学校1のイケメン♀️から逃げ出した先には地獄しかありませんでした

山田空
ライト文芸
ハーレムを目指していた主人公は転校してきたイケメンによってその計画を壊される。 そして、イケメンが実は女の子でありヤンデレであったことを知り逃げる。 逃げた途中でむかし付き合った彼女たちとの過去を思い出していく。 それは忘れたくても忘れられない悲しき記憶 この物語はヒロインと出会いそして別れるを繰り返す出会いと別れの物語だ。 そして、旅の最後に見つける大切で当たり前なものとは

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

【完結】かつて憧れた陰キャ美少女が、陽キャ美少女になって転校してきた。

エース皇命
青春
 高校でボッチ陰キャを極めているカズは、中学の頃、ある陰キャ少女に憧れていた。実は元々陽キャだったカズは、陰キャ少女の清衣(すい)の持つ、独特な雰囲気とボッチを楽しんでいる様子に感銘を受け、高校で陰キャデビューすることを決意したのだった。  そして高校2年の春。ひとりの美少女転校生がやってきた。  最初は雰囲気が違いすぎてわからなかったが、自己紹介でなんとその美少女は清衣であるということに気づく。  陽キャから陰キャになった主人公カズと、陰キャから陽キャになった清衣。  以前とはまったく違うキャラになってしまった2人の間に、どんなラブコメが待っているのだろうか。 ※小説家になろう、カクヨムでも公開しています。 ※表紙にはAI生成画像を使用しています。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...